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第四章 西からの迷い人
97 宴の始まり 緋色
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ずらりとご馳走の並んだ座卓を横目に下座に足を運ぶ。大広間との境の襖を荘重が開けると、そう広くない控えの間に良い匂いが漂っていた。
「わあ。すき焼き!」
城に着いてからまた少し寝た成人が、腕の中で可愛い声を上げる。すき焼きは成人の好物の一つだ。この短時間で人数分作り上げた壱臣は流石だな。
大広間の準備をしていた使用人たちが、開け放った襖の向こうから漂う匂いに顔を見合わせている。声を出すような不作法をしないのは、それなりに躾けられている証だった。
部屋の中に、城の前や中で捕らえた身分の高そうな一団が案内されてきた。控えの間で、それらを見渡しやすそうな席に着いて、胡座の上に成人を座らせる。荘重が隣に座椅子を置いた。そちらに移すのは食べるときでいいだろう。
この城の重鎮たちを部屋へ案内しているのは、この城の使用人の着物を着た一ノ瀬だ。本来、俺や俺の家臣のために作られた席へどんどん座らせていく。紋付き袴の一団は、びくびくと怯えながら席についた。当主用の席の隣の席へ、綾女が勝ち気な表情のまま座る。当主の席へ立派な座椅子が置かれ、撃たれた足の手当てのすんだ八朔与市が、ぐったりとしたまま運ばれて座らされた。
「お、お父様……?」
「何の茶番やろか、壱鷹殿。」
低い声を絞り出した八朔与市。
「なに、あなたの長年の望みを叶えて差し上げたまで。当主の席におつきになりたかったのやろ?」
ぐわっと顔に朱を上らせた細身の老人。怪我の手当てをしたばかりで、かなり消耗しているだろうに、長年この領地の覇権を握ろうと暗躍してきた男は、気力を振り絞っている。その意気や、よし。面白いことになりそうだ。
「緋色殿下、入り口から煩うてすみません。ようおいでくださった。」
酒ではなく、冷たい麦茶が配られていく。利胤が、がっかりとしているのが見えた。きっと上等な酒が準備されているから、楽しみに待ってろ。くくっと笑ってしまうと、成人が機嫌良く振り返った。その額に口づけを一つ。
「問題ない。」
俺が言うと、壱鷹が配られた麦茶を掲げる。
「乾杯。」
楽しい宴の始まりだ。
「わあ。すき焼き!」
城に着いてからまた少し寝た成人が、腕の中で可愛い声を上げる。すき焼きは成人の好物の一つだ。この短時間で人数分作り上げた壱臣は流石だな。
大広間の準備をしていた使用人たちが、開け放った襖の向こうから漂う匂いに顔を見合わせている。声を出すような不作法をしないのは、それなりに躾けられている証だった。
部屋の中に、城の前や中で捕らえた身分の高そうな一団が案内されてきた。控えの間で、それらを見渡しやすそうな席に着いて、胡座の上に成人を座らせる。荘重が隣に座椅子を置いた。そちらに移すのは食べるときでいいだろう。
この城の重鎮たちを部屋へ案内しているのは、この城の使用人の着物を着た一ノ瀬だ。本来、俺や俺の家臣のために作られた席へどんどん座らせていく。紋付き袴の一団は、びくびくと怯えながら席についた。当主用の席の隣の席へ、綾女が勝ち気な表情のまま座る。当主の席へ立派な座椅子が置かれ、撃たれた足の手当てのすんだ八朔与市が、ぐったりとしたまま運ばれて座らされた。
「お、お父様……?」
「何の茶番やろか、壱鷹殿。」
低い声を絞り出した八朔与市。
「なに、あなたの長年の望みを叶えて差し上げたまで。当主の席におつきになりたかったのやろ?」
ぐわっと顔に朱を上らせた細身の老人。怪我の手当てをしたばかりで、かなり消耗しているだろうに、長年この領地の覇権を握ろうと暗躍してきた男は、気力を振り絞っている。その意気や、よし。面白いことになりそうだ。
「緋色殿下、入り口から煩うてすみません。ようおいでくださった。」
酒ではなく、冷たい麦茶が配られていく。利胤が、がっかりとしているのが見えた。きっと上等な酒が準備されているから、楽しみに待ってろ。くくっと笑ってしまうと、成人が機嫌良く振り返った。その額に口づけを一つ。
「問題ない。」
俺が言うと、壱鷹が配られた麦茶を掲げる。
「乾杯。」
楽しい宴の始まりだ。
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