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第四章 西からの迷い人
129 大切な商店街 緋色
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「悪いが、準備する予定の店舗は新しくできたデパートの中ではない。」
俺の言葉にも、店主は笑顔を崩さない。
「殿下の後ろ楯付きでの皇都進出です。何も心配しとりません。」
「正直に言うと、商店街はデパートに客を取られて客足が減ってきている状態だ。」
「成る程……。デパートというのは確か、集合の商店でしたね。」
「ああ。俺もまだ見に行っていないんだが、常陸丸、どうだった?」
「あれは、便利です。商店街を上等にしたようなもんですが、まあ明るくて、品物が見やすい。その上、車で行ったら天気が悪くても夜でも関係なく買い物ができるから流行るでしょうなあ。」
「と、いうことだ。」
ふーむ、と店主が黙考している。出された茶を飲んで待った。旨い。
デパートに高級品を卸す方が、皇都進出の手段として良いのかもしれないが、俺としては商店街が潰れると困る。
あそこは、成人の楽しい楽しい遊び場なのだから。
「どちらかというと、庶民向けの品から店頭に並べる形でしょうか?」
「ん?あ、ああ。」
商店街を張り切って案内してくれる成人を思い浮かべて楽しい気分になっていると、店主の声がして我に返った。
「今、土産に持って帰る高級品は、これからも売れると思う。たぶん、皇太子妃は気に入る。そうすれば、あいつの真似をしたい貴族の令嬢や夫人連中が飛びつくだろう。店頭に並べる品と、奥で見せてもらいながら買える特別な品、と分ければ、ますます有り難がるんじゃないか?皇都でも、この売り方でいい。」
店主が、真剣な顔で頷く。
「殿下は、商売の才がおありになる。私は素晴らしい御方と知り合うことができました。今日はなんとええ日や。」
「デパートの方が、上等な品が売れると分かっていて、商店街と言ってるんだぞ。いいのか?」
「いえ、実はデパートには、声をかけられた他の美容液の店が出しておるんです。けど、皇都の方々は髪の手入れをする習慣がないから、これは何やという説明からはじめて、やり方まで説明せんなんのやと。そやから一人一人の相手に時間がかかる、とぼやいておりました。しかもその店は、高級品ばかりを取り扱う、割りと香りもきつめの店でしてな。説明しても、少し匂いが気になります、と言われて売れんのや、ともう撤退を考えとるという話でした。誰か後にデパートに行かんか、と商会の集まりで言うてはって。皇都の様子が分からんから二の足を踏んどったんです。うちは、香りの弱い物も得意としとりますから、行くならうちかと思うとったとこです。商店街の店を一号店として、デパートに空きが出たら二号店も開きましょ。忙しなりそうや!」
話しながら考えをまとめていったらしい。こちらも、良い店に巡り会えたようだな。
俺は、成人のために商店街を盛り上げてやってくれたら、それでいい。
俺の言葉にも、店主は笑顔を崩さない。
「殿下の後ろ楯付きでの皇都進出です。何も心配しとりません。」
「正直に言うと、商店街はデパートに客を取られて客足が減ってきている状態だ。」
「成る程……。デパートというのは確か、集合の商店でしたね。」
「ああ。俺もまだ見に行っていないんだが、常陸丸、どうだった?」
「あれは、便利です。商店街を上等にしたようなもんですが、まあ明るくて、品物が見やすい。その上、車で行ったら天気が悪くても夜でも関係なく買い物ができるから流行るでしょうなあ。」
「と、いうことだ。」
ふーむ、と店主が黙考している。出された茶を飲んで待った。旨い。
デパートに高級品を卸す方が、皇都進出の手段として良いのかもしれないが、俺としては商店街が潰れると困る。
あそこは、成人の楽しい楽しい遊び場なのだから。
「どちらかというと、庶民向けの品から店頭に並べる形でしょうか?」
「ん?あ、ああ。」
商店街を張り切って案内してくれる成人を思い浮かべて楽しい気分になっていると、店主の声がして我に返った。
「今、土産に持って帰る高級品は、これからも売れると思う。たぶん、皇太子妃は気に入る。そうすれば、あいつの真似をしたい貴族の令嬢や夫人連中が飛びつくだろう。店頭に並べる品と、奥で見せてもらいながら買える特別な品、と分ければ、ますます有り難がるんじゃないか?皇都でも、この売り方でいい。」
店主が、真剣な顔で頷く。
「殿下は、商売の才がおありになる。私は素晴らしい御方と知り合うことができました。今日はなんとええ日や。」
「デパートの方が、上等な品が売れると分かっていて、商店街と言ってるんだぞ。いいのか?」
「いえ、実はデパートには、声をかけられた他の美容液の店が出しておるんです。けど、皇都の方々は髪の手入れをする習慣がないから、これは何やという説明からはじめて、やり方まで説明せんなんのやと。そやから一人一人の相手に時間がかかる、とぼやいておりました。しかもその店は、高級品ばかりを取り扱う、割りと香りもきつめの店でしてな。説明しても、少し匂いが気になります、と言われて売れんのや、ともう撤退を考えとるという話でした。誰か後にデパートに行かんか、と商会の集まりで言うてはって。皇都の様子が分からんから二の足を踏んどったんです。うちは、香りの弱い物も得意としとりますから、行くならうちかと思うとったとこです。商店街の店を一号店として、デパートに空きが出たら二号店も開きましょ。忙しなりそうや!」
話しながら考えをまとめていったらしい。こちらも、良い店に巡り会えたようだな。
俺は、成人のために商店街を盛り上げてやってくれたら、それでいい。
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