【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

79 崩し文字を読める人  成人

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「なんでお仕事のお部屋にいるのー?」

 ご飯の後で三郎さぶろうを探していると、緋色ひいろがいつもお仕事をしている部屋で何か読んでいた。電気もつけてないから、少し暗い。

「あ、あ、すみません。勝手に入って……」

 三郎さぶろうは、すごく慌てて立ち上がる。机の上の紙や本がばさばさと落ちた。
 え?入るのはいいんじゃない?だって、三郎さぶろうのお仕事の部屋でもあるんだし。

「忙しい?」
「いいえ。あの、特にすることも無くて。仕事の助けになる本を読んでおこうかと思て」

 落ちた紙を一緒に拾いながら聞いてみる。うん、忙しくない。

「お願いあるから一緒に来てー」

 お品書きを広末ひろすえの休憩のお部屋に置いてきたから、そちらへ移動した。

三郎さぶろう、休みの時に呼び出して悪いな」
「いえ。何の予定もありませんので」
「そういや、力丸りきまるさまと村次むらつぐと一緒じゃ無かったのか?」
「あ、いえ、えーと、誘ってはもろたんですけど……」

 二人の休みが揃ったから、何か評判の店屋に食べに行くって言ってたな。暇なら一緒に行ったら良かったのに。

「今度、一緒に行こ?」
「あ、でも、私なんておったらお邪魔でしょうし……」
「なんで?」
「あの、だって、折角お友達同士で出掛けるのに」

 んん?俺は首を傾げる。

三郎さぶろうもお友達同士じゃないの?」

 俺、またよく分かってないのかなあ。友達じゃなかった?

三郎さぶろうが行きたくないなら断ったらいいと思うが、誘ってる時点であの二人もなる坊も、邪魔とかそんなことは思っていないぞ」

 広末ひろすえが、俺と三郎さぶろうを順番に見ながらそうやって言ってくれたから、俺はうんうんと頷いた。

「友達じゃなかった?」
「あ……」

 ふるふると頭を横に振る三郎さぶろうの顔色は悪い。表情があんまり変わらないから、分かりにくいんだよね。

「友達?」
「あの、成人なるひとさまが良ければ……」

 んー?俺は友達と思ってるから、後は三郎さぶろうが友達と思ってくれるかどうかだよね?
 ま、いいや。

「友達にお願いしてもいい?」
 
 お品書きを見せながら言うと、はい、と頷いてくれたから、やっぱり友達でいいよね。

「これ、読める?」
「ああ、はい」
「おお、流石。こんなのよく読めるなあ」
 
 広末ひろすえが喜んで紙とペンを渡した。

「俺たち読めなくてよ。ここに、読める字で書いてくれ」
「あ、はい」

 すぐに、さらさらと書き始めた手元を覗き込んで喜んでいると、ふ、と三郎さぶろうが顔を上げた。

「あの。殿下や常陸丸ひたちまるさまも読めるのに、何で私に?」

 え?あ、そうなの?
 え?読めるの?

「そ、そうか……。そうだよな。なんでか、気付いてなかった」
乙羽おとわさまも、たぶん読めるかと。三人で高等学校までずっと同じだと仰ってましたから」

 仲良しだなあ。

「三人で?常陸丸ひたちまるさまも?」

 広末ひろすえが驚いている。

「え、ええ。常陸丸ひたちまるさまは殿下の仕事の補佐をしてらっしゃいますんで……」

 三郎さぶろう、知らなかったっけ?

常陸丸ひたちまる、護衛だよ」
「あ、そうですよね。あれ?」

 あれ?
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