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第九章 礼儀を知る人知らない人
112 お仕事の後には 成人
ま、いいや。
「緋色、デート! 俺もデートする」
「おう、するか」
やったあ。デート行く。
「成人殿下。デートはお仕事が済んでから、ですよ」
「うん」
早くお仕事終わろう。デートだ。俺も玉鶴もデートするんだ。鶴丸と松吉もするかな? 亀吉も一緒だけど、亀吉が一緒にいてもデートって言うのかな?
言うかもな。俺たちのデートにも、いつも護衛がついてるけど、デートはデートだもんな。弐角と橙々もデートできるね。楽しみ。
よし、お仕事しよう。早くしよう。
今のお仕事は何だったっけ? お城の探検して、中を調べる事。このお城はもう、竹光たち家族の持ち物になったから、真中だった人の家族には出ていって貰わないといけない。竹光たちはここには住まないって言っていたけれど、だからって真中だった人の家族が住んでいては困る。家族じゃない人が自分のおうちにいたら、ずっと緊張して疲れちゃう。
つまり、このきらきらの着物の人に早く出ていってもらわないといけないって事だ。
「さて、気は済んだか、女?」
玉鶴が、低い声で言った。
きらきらの着物の人を女って呼ぶのは、さっき名前を聞いて返事をしなかったからだな。この人は、名前が分からない。真中だった人の家族もやめるって言ってる。だから、呼び方がそれしかないんだ。
「金は払えん。ただし、あんたの為に仕立てた着物、装飾品、それらは持ち出せる分だけあげるさかい、それを持って、どこへなりとお行き」
「な、な……な、にを」
女は何か言いかけていたけれど、玉鶴はもう、そちらに目を向けることはなかった。
今気付いたけど、この人、不敬じゃない? 俺にも玉鶴にも礼をとっていない。勝手に立ち上がっていた。ま、もういいんだけどさ。玉鶴が、何か決定事項を言ったから、女はそれに従わないといけない。座ってたらできないから、立っているそのまま動いてくれたらいい。不敬とか今更だ。
玉鶴は、ずっと座ったままのほかの人たちの方を向いた時には、いつもの表情と声に戻っていた。
「身を寄せる先はあるか? 」
泣いていた子どもは、いつの間にか泣き止んでいる。そうだよね、大丈夫。抱き寄せる手があれば、子どもってのは泣き止むものだ。俺はもう知っている。好きだよって気持ちがあれば、抱き上げられない俺の片手でぎゅってしただけでも、末良は泣き止んでくれるんだから。灯可も、泣いてないけど元気がない時、俺がぎゅってしたら元気になる。少し大きい子も、小さい子も皆おんなじ。抱き寄せる手があるなら、大丈夫。
俺も、泣いたりしないけど、子どもでもないけど、抱っこしてもらうとほっとする気持ちはとてもよく分かる。自分の全部を預けられる相手がいるって幸せ。
座ってる人は、何人もの人がいたから、返事は色々だった。
「身を寄せる先はありません。こちらで雇って頂きたく」
そう言って頭を下げる人と、
「帰れるんですか。本当に? ああ、良かった……」
そう言って泣き出す人がいた。
急に立ち上がったり、勝手に喋ったりする人はいなかった。
一人だけ立ち上がっていた女は、玉鶴の護衛が近付いて耳もとで何か言うと、慌てて走って部屋から出て行った。何だろ? ま、いっか。玉鶴の護衛が追いかけていったから、任せておこう。
…………。
何を言ったのかだけ、後で聞いてみようかな。
「緋色、デート! 俺もデートする」
「おう、するか」
やったあ。デート行く。
「成人殿下。デートはお仕事が済んでから、ですよ」
「うん」
早くお仕事終わろう。デートだ。俺も玉鶴もデートするんだ。鶴丸と松吉もするかな? 亀吉も一緒だけど、亀吉が一緒にいてもデートって言うのかな?
言うかもな。俺たちのデートにも、いつも護衛がついてるけど、デートはデートだもんな。弐角と橙々もデートできるね。楽しみ。
よし、お仕事しよう。早くしよう。
今のお仕事は何だったっけ? お城の探検して、中を調べる事。このお城はもう、竹光たち家族の持ち物になったから、真中だった人の家族には出ていって貰わないといけない。竹光たちはここには住まないって言っていたけれど、だからって真中だった人の家族が住んでいては困る。家族じゃない人が自分のおうちにいたら、ずっと緊張して疲れちゃう。
つまり、このきらきらの着物の人に早く出ていってもらわないといけないって事だ。
「さて、気は済んだか、女?」
玉鶴が、低い声で言った。
きらきらの着物の人を女って呼ぶのは、さっき名前を聞いて返事をしなかったからだな。この人は、名前が分からない。真中だった人の家族もやめるって言ってる。だから、呼び方がそれしかないんだ。
「金は払えん。ただし、あんたの為に仕立てた着物、装飾品、それらは持ち出せる分だけあげるさかい、それを持って、どこへなりとお行き」
「な、な……な、にを」
女は何か言いかけていたけれど、玉鶴はもう、そちらに目を向けることはなかった。
今気付いたけど、この人、不敬じゃない? 俺にも玉鶴にも礼をとっていない。勝手に立ち上がっていた。ま、もういいんだけどさ。玉鶴が、何か決定事項を言ったから、女はそれに従わないといけない。座ってたらできないから、立っているそのまま動いてくれたらいい。不敬とか今更だ。
玉鶴は、ずっと座ったままのほかの人たちの方を向いた時には、いつもの表情と声に戻っていた。
「身を寄せる先はあるか? 」
泣いていた子どもは、いつの間にか泣き止んでいる。そうだよね、大丈夫。抱き寄せる手があれば、子どもってのは泣き止むものだ。俺はもう知っている。好きだよって気持ちがあれば、抱き上げられない俺の片手でぎゅってしただけでも、末良は泣き止んでくれるんだから。灯可も、泣いてないけど元気がない時、俺がぎゅってしたら元気になる。少し大きい子も、小さい子も皆おんなじ。抱き寄せる手があるなら、大丈夫。
俺も、泣いたりしないけど、子どもでもないけど、抱っこしてもらうとほっとする気持ちはとてもよく分かる。自分の全部を預けられる相手がいるって幸せ。
座ってる人は、何人もの人がいたから、返事は色々だった。
「身を寄せる先はありません。こちらで雇って頂きたく」
そう言って頭を下げる人と、
「帰れるんですか。本当に? ああ、良かった……」
そう言って泣き出す人がいた。
急に立ち上がったり、勝手に喋ったりする人はいなかった。
一人だけ立ち上がっていた女は、玉鶴の護衛が近付いて耳もとで何か言うと、慌てて走って部屋から出て行った。何だろ? ま、いっか。玉鶴の護衛が追いかけていったから、任せておこう。
…………。
何を言ったのかだけ、後で聞いてみようかな。
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