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第九章 礼儀を知る人知らない人
124 美味しい匂い 成人
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「店主、顔を上げろ。連れが迷惑をかけた。入ってよいのか」
「はい、是非!」
人の数は変わらず多い。その上、店から出てきた着物の人が頭を下げたので、なんだなんだと立ち止まる人が出てきた。常陸丸と力丸が警戒を強めている。お忍びだから、目立っては駄目だね。入っていいって言うなら、入らせてもらおう。
「じいじ。入れたね」
良かった良かった。
店の中で待っていてくれたじいじに言うと、じいじも、わははと笑った。
「良かったのう、成人。そこの者、世話になった。足を止めてすまなんだな」
「あ、いえ。うちらはそんな……」
じいじ達くらいの年齢かな? 横に立っていた人達は、じいじに声をかけられて二人でぺこぺこ頭を下げた。
じいじが怖かった?
あ、大丈夫そうだ。
じいじは、声も体も大きくて強いから、初めて会う人には怖がられることが多い。でも、本当は怖くないから、お話したら怖くないって分かってもらえる。もうお話したから、この二人は、じいじが怖くないって分かっているのかもしれない。
「じい様。お忍びっていうなら、ご自分も名乗ったら駄目ですよ」
力丸が、じいじにこそりと言ったのが聞こえた。
お忍びの時は、じいじも名乗っちゃ駄目だったのか。
「うむ、そうじゃな。面目ない。しかしな、力丸。ここに入るために紹介してもらおうと人に頼むのであれば、偽名というのはその者に失礼であろう? 一応、ここだけの話にするつもりであったのだが」
「声が大きいんですよ、声が」
そうだね。じいじの声は大きい。だから、外まで聞こえちゃったんだなあ。
「ははあ、そうであった。成人にも、度々指摘されておったな」
うん。じいじが近くでしゃべると、びっくりする時あるからね。末良が泣いたこともあるし。
「一見断りの店とは知らずに無理を言った、店主。皆も、騒がせたな。詫びに、今ここに居る者らの会計は俺が持つ」
誰も見えない。見えてないんだけど、今、ざわってしたのが分かった。
店の中は、壱臣のやっていたお店みたいに机や椅子がずらっと幾つか並んでいる形じゃなかった。仕切りがたくさんあって区切られていて、食べている人が俺たちから見えなかった。
でも今、ざわってした。耳を澄ませて聞いていた人達がざわざわって。何かいつもと違う話が聞こえたら、真剣に聞いちゃうのは分かる。皆おんなじだ。
緋色が言ったこと、嬉しいことだったんだよね。
さっき、ぺこぺこと頭を下げていた二人が、びっくりして顔を見合わせた後で、にこにこになったから。
「な、なんと、有難く……」
「店主。今更だが、忍びだ」
「ははっ」
着物の人がしようとした包拳礼を、緋色が止めた。
仕切りの向こうが見えないから、どんな食べ物か分からないんだけれど、いい匂いが漂ってくる。
「ご飯食べる」
「美味しかったですよ。ようけ食べてください」
にこにこの二人が、また頭を下げながら言った。
「ありがと」
「いいええ、お役に立てたんなら光栄なんですけど」
すっごくお役に立ちました!
「はい、是非!」
人の数は変わらず多い。その上、店から出てきた着物の人が頭を下げたので、なんだなんだと立ち止まる人が出てきた。常陸丸と力丸が警戒を強めている。お忍びだから、目立っては駄目だね。入っていいって言うなら、入らせてもらおう。
「じいじ。入れたね」
良かった良かった。
店の中で待っていてくれたじいじに言うと、じいじも、わははと笑った。
「良かったのう、成人。そこの者、世話になった。足を止めてすまなんだな」
「あ、いえ。うちらはそんな……」
じいじ達くらいの年齢かな? 横に立っていた人達は、じいじに声をかけられて二人でぺこぺこ頭を下げた。
じいじが怖かった?
あ、大丈夫そうだ。
じいじは、声も体も大きくて強いから、初めて会う人には怖がられることが多い。でも、本当は怖くないから、お話したら怖くないって分かってもらえる。もうお話したから、この二人は、じいじが怖くないって分かっているのかもしれない。
「じい様。お忍びっていうなら、ご自分も名乗ったら駄目ですよ」
力丸が、じいじにこそりと言ったのが聞こえた。
お忍びの時は、じいじも名乗っちゃ駄目だったのか。
「うむ、そうじゃな。面目ない。しかしな、力丸。ここに入るために紹介してもらおうと人に頼むのであれば、偽名というのはその者に失礼であろう? 一応、ここだけの話にするつもりであったのだが」
「声が大きいんですよ、声が」
そうだね。じいじの声は大きい。だから、外まで聞こえちゃったんだなあ。
「ははあ、そうであった。成人にも、度々指摘されておったな」
うん。じいじが近くでしゃべると、びっくりする時あるからね。末良が泣いたこともあるし。
「一見断りの店とは知らずに無理を言った、店主。皆も、騒がせたな。詫びに、今ここに居る者らの会計は俺が持つ」
誰も見えない。見えてないんだけど、今、ざわってしたのが分かった。
店の中は、壱臣のやっていたお店みたいに机や椅子がずらっと幾つか並んでいる形じゃなかった。仕切りがたくさんあって区切られていて、食べている人が俺たちから見えなかった。
でも今、ざわってした。耳を澄ませて聞いていた人達がざわざわって。何かいつもと違う話が聞こえたら、真剣に聞いちゃうのは分かる。皆おんなじだ。
緋色が言ったこと、嬉しいことだったんだよね。
さっき、ぺこぺこと頭を下げていた二人が、びっくりして顔を見合わせた後で、にこにこになったから。
「な、なんと、有難く……」
「店主。今更だが、忍びだ」
「ははっ」
着物の人がしようとした包拳礼を、緋色が止めた。
仕切りの向こうが見えないから、どんな食べ物か分からないんだけれど、いい匂いが漂ってくる。
「ご飯食べる」
「美味しかったですよ。ようけ食べてください」
にこにこの二人が、また頭を下げながら言った。
「ありがと」
「いいええ、お役に立てたんなら光栄なんですけど」
すっごくお役に立ちました!
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