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第九章 礼儀を知る人知らない人
131 いいなべ料理 成人
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「お昼ご飯のしゃぶしゃぶ、美味しかった」
「へえ」
「お鍋の中に最初何もなくて、でも、後からいっぱい野菜を入れて、お肉と魚をしゃぶしゃぶってするからしゃぶしゃぶって言うんだって」
「ん。そうか」
村次は、たい焼きをかじりながら話を聞いてくれた。真ん中の次はしっぽ、しっぽの次は頭って順にかじっていた。じいじは真ん中の次に頭だったから、また少し違う……。たい焼きはどこから食べたら一番美味しいのか調べるには、何回も食べなくちゃならないな。次は俺も、真ん中からかじってみよう。あ、でも、あんこがすごく熱いんだった。やっぱり俺はしっぽからだな。
「今、適当に返事しただろ、村次。そうかって、今の成人の説明で何が分かったんだよ」
「しゃぶしゃぶって名前の鍋を食った話なんだろ?」
「え? 正解。ちぇっ。分からんって言ったら俺が説明しようと思ったのにさー」
「まあ、しゃぶしゃぶするってのがよく分かんないけどな」
「わはは。そうだろそうだろ。任せろ、あのな」
「しゃぶしゃぶするって言うのは」
「あ、待て、成人。説明は俺に任せろって」
うるさいよ、力丸。ちゃんとしゃぶしゃぶしてない人に、しゃぶしゃぶの説明は任せられない。
俺は、早口で続きを言う。
「こう、お鍋にお肉を入れて、お魚も入れて、こう、ゆらゆらって汁の中で揺らして、丁度いい所で汁から出して、たれを付けて食べる」
「へええ。丁度いい所で。なるほど」
俺が右手に箸を持っているふりをして、ゆらゆらと揺らすと村次にはもう分かったみたいだ。
「肉とか、ずっと煮てると硬くなるもんな。へええ。魚も? 魚って刺身みたいな? 刺身で食べられる魚なら、自分の好きな硬さで引き上げて食べられるよな? え? 待って。絶対美味しいじゃん。え? 天才か?」
うんうん。それだ。天才だ。天才の食べ物。
「余分な脂も落ちるから、成人や乙羽さまにも食べやすいな。へええ。いいな、それ……。汁って、その、鍋の中の出汁か? 出汁は、味付いてんのか? あ、いや、たれ付けるんだっけ? じゃ、あれか。壱臣さんの得意な、出汁の味がしっかりしてて、調味料は少しだけみたいな、そういう」
「そうそう」
あれ? 村次がぶつぶつ言ってることに返事してたら、もうしゃぶしゃぶ鍋ができそうになってない?
「たれって? 決まってるのか?」
「んーん。俺、甘いのが好き。皆は茶色いの食べてた」
「へえ。たれは好みで?」
「俺は甘いのと茶色いのを混ぜて、すごい旨いたれを作り出したから」
力丸が胸を張った。
そうだ、あれ。力丸が作った、二つのたれを混ぜたたれ、実はすごく美味しかったんだよね。俺もあれ、好きだった。甘くてちょっと酸っぱいのが美味しかった。
「ぷはっ。そんな事していいの?」
「おう」
「うん」
だって、野菜やお肉や魚の煮え具合も好きにしていい鍋なんだから。
「それは、いいなべ料理だなあ」
でしょ?
「へえ」
「お鍋の中に最初何もなくて、でも、後からいっぱい野菜を入れて、お肉と魚をしゃぶしゃぶってするからしゃぶしゃぶって言うんだって」
「ん。そうか」
村次は、たい焼きをかじりながら話を聞いてくれた。真ん中の次はしっぽ、しっぽの次は頭って順にかじっていた。じいじは真ん中の次に頭だったから、また少し違う……。たい焼きはどこから食べたら一番美味しいのか調べるには、何回も食べなくちゃならないな。次は俺も、真ん中からかじってみよう。あ、でも、あんこがすごく熱いんだった。やっぱり俺はしっぽからだな。
「今、適当に返事しただろ、村次。そうかって、今の成人の説明で何が分かったんだよ」
「しゃぶしゃぶって名前の鍋を食った話なんだろ?」
「え? 正解。ちぇっ。分からんって言ったら俺が説明しようと思ったのにさー」
「まあ、しゃぶしゃぶするってのがよく分かんないけどな」
「わはは。そうだろそうだろ。任せろ、あのな」
「しゃぶしゃぶするって言うのは」
「あ、待て、成人。説明は俺に任せろって」
うるさいよ、力丸。ちゃんとしゃぶしゃぶしてない人に、しゃぶしゃぶの説明は任せられない。
俺は、早口で続きを言う。
「こう、お鍋にお肉を入れて、お魚も入れて、こう、ゆらゆらって汁の中で揺らして、丁度いい所で汁から出して、たれを付けて食べる」
「へええ。丁度いい所で。なるほど」
俺が右手に箸を持っているふりをして、ゆらゆらと揺らすと村次にはもう分かったみたいだ。
「肉とか、ずっと煮てると硬くなるもんな。へええ。魚も? 魚って刺身みたいな? 刺身で食べられる魚なら、自分の好きな硬さで引き上げて食べられるよな? え? 待って。絶対美味しいじゃん。え? 天才か?」
うんうん。それだ。天才だ。天才の食べ物。
「余分な脂も落ちるから、成人や乙羽さまにも食べやすいな。へええ。いいな、それ……。汁って、その、鍋の中の出汁か? 出汁は、味付いてんのか? あ、いや、たれ付けるんだっけ? じゃ、あれか。壱臣さんの得意な、出汁の味がしっかりしてて、調味料は少しだけみたいな、そういう」
「そうそう」
あれ? 村次がぶつぶつ言ってることに返事してたら、もうしゃぶしゃぶ鍋ができそうになってない?
「たれって? 決まってるのか?」
「んーん。俺、甘いのが好き。皆は茶色いの食べてた」
「へえ。たれは好みで?」
「俺は甘いのと茶色いのを混ぜて、すごい旨いたれを作り出したから」
力丸が胸を張った。
そうだ、あれ。力丸が作った、二つのたれを混ぜたたれ、実はすごく美味しかったんだよね。俺もあれ、好きだった。甘くてちょっと酸っぱいのが美味しかった。
「ぷはっ。そんな事していいの?」
「おう」
「うん」
だって、野菜やお肉や魚の煮え具合も好きにしていい鍋なんだから。
「それは、いいなべ料理だなあ」
でしょ?
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