【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

145 美味しいご飯と上等な布団  成人

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 夜はお城で、村次むらつぐが作ったご飯を食べた。亀吉かめきちは、一口食べてはおいしいって言って、にこにこだった。ちゃんと座って、上手にたくさん食べた。松吉まつきちが、亀吉かめきち用のご飯を見て、こりゃええわって何回も言った。
 
「野菜の煮物はうちらのより小さく切って柔らかく煮てあるし、魚の骨は取ってある。その上、魚の上にあんがかかっとって、つるんと食べやすい。ちょびっとずつ盛ってあるから、全部食べた言うて大満足やん? このご飯出す店屋があったら、子ども連れで大繁盛やで。うちも通うわ。自分でちゃんとご飯食べてくれるから、うちもゆっくりご飯食べれて嬉しい」

 亀吉かめきち用のご飯が、亀吉かめきちによく合ったみたいだ。良かった。子ども連れ用のご飯屋さん、いいかも。
 末良すえよしは、ご飯食べるのが大好きだから、ちゃんと座ってもりもり食べるけど、見可みかは小さい頃、じっと座ってるのが苦手で、早く遊びたくて、ちっともちゃんと食べなかったって灯可とうかに聞いた。末良すえよしは賢いなって、灯可とうかが言っていた。見可みかみたいな子も、こんなご飯なら自分でちゃんと食べるかもしれない。
 広末ひろすえは、食べる人が美味しいって感じるご飯を作るのが得意。誰が食べるのか考えて作るのが大事っていつも言っている。広末ひろすえに習った村次むらつぐも、きっとおんなじ。亀吉かめきちのことを考えて亀吉かめきち用のご飯を特別に作ったから、亀吉かめきちは喜んだんだろうなあ。
 魚にあんをかけてあるのは、本当に食べやすくて俺も好き。乙羽おとわも好きだって言ってた。俺たち、好きな食べ物が似てるね。
 亀吉かめきちは、離宮うちに遊びに来た時もたくさん食べていたから、離宮うちの味付けが好きってこともあるかもしれない。柔らかくて優しい味のご飯だ。俺も、いつも食べている味付けのご飯が出てきたのが嬉しくて、いっぱい食べた。
 今日は、昼にもしゃぶしゃぶをたくさん食べたし、昼寝もしたし、大きくなったかもしれない。寝る子は育つって言葉があって、たくさん寝る子どもは大きく育つらしい。もちろん、たくさん食べる子どもも。まあ、俺は子どもじゃないんだけど。
 そういえば、力丸りきまるの姿が見当たらない。村次むらつぐと、しゃぶしゃぶの店に出かけたのかな。村次むらつぐもしゃぶしゃぶ、食べれてるといいな。力丸りきまるが、ちゃんとしゃぶしゃぶしてるかも不安だ。また今度、俺も一緒に行こう。正しいしゃぶしゃぶの食べ方を、村次に教えてあげなくちゃいけない。
 ご飯を食べたら、お風呂もお城で入って、お城で寝た。
 一つしか出入り口のない奥の場所は、とても静かでよく眠れた。お風呂もお布団も上等だったし、すごく良かった。出て行った人はほとんど帰って来なかったから、寝る場所はたくさんあった。
 他に行く場所がない、と出ていかなかった使用人たちが、俺たちのお風呂の世話や布団の準備をしてくれてすごく助かった。
 その人たちは、玉鶴たまつる松吉まつきちとよく話をして、そのままお城の使用人として働くことになったみたいだ。お給料や休みの話もしたら、ありがとうございます、と涙を浮かべて平伏していたから、しっかりお仕事をしてくれそうな気がする。
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