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第九章 礼儀を知る人知らない人
159 俺にも分かる 成人
鶴丸は抱っこしていた亀吉を降ろすと、ぽんぽんと頭を撫でていつもの顔に戻った。俺が全部は持てなかった書類を、よいしょと抱え直して、俺の手からも書類を受け取って、ありがとうございますって少しだけ笑った。
「もうええわ?」
「ふふ。はい。もうええです。色々、分かったんで」
「ふーん?」
ここの人は、お仕事の役に立たないってことかな? 残念だ。
工事の順番の決め方が、元真中と鶴丸で違ったってことだよね?
「お金稼げる人の所からやってるってこと?」
それなら、合ってるんじゃない? お店でも何でも、お金が稼げないと駄目だ。お金が無いと何にもできないって事を、俺はもう知っている。仕事をしてお金を稼いで、そのお金で、服や食べ物や住む場所を買って生きていくのが人だから。
壱臣の店は、稼げなくて駄目になった。俺は、壱臣の作るご飯美味しかったけど、皇国では壱臣のご飯を美味しいって思う人や食べたいって思う人が少なかったから、お店を維持できなくて潰れてしまった。
それを考えると、お金が入ってくる所からやるのは合っているような?
「いえ。こういうんは、お金を稼ぐ目的でやるものやないんです。皆が困っとることを解決しようと、皆でお金を出し合うものですから。一番困っとるとこからやらなあかん。そやのに、このお人は、うちのを先にやってください、言うて袖の下を渡してきた人のとこから先にやっとるんです」
「んん?」
そでのした?
「賄賂言います」
「わいろ」
「順番を決める人の利益になるようにお金を渡したり、なんや欲しがっとる物品を渡したりして、うちの方の工事を先にやってくださいってお願いすることです。こっそり着物の袖の下に入れたりする事から、その渡す物品のことを袖の下言います。ほんで、順番を決める人がそれを受け取って、よし分かった言うて、その人のとこからやるんです。そういうんが賄賂です」
「んん?」
工事するためのお金を出してもらったり、人を出してもらったりする為に、順番を決める人にお金とかを渡す? そんな事で順番を決めていたら、お金を渡せない人の順番はいつまで経っても回ってこないじゃないか。
工事しないと困ったことが起こるんだよね? だから、直してって言ってるんだから。でもお金が渡せないから直してもらえなくて、困ったことが起こってしまう。その困ったことの処理にお金がかかったら、工事して欲しいですってお願いするお金がまた出せなくなる。工事してもらった方の人は、処理のお金がいらないからまたお金が出せて、また工事してもらえる?
「その順番の決め方は駄目。賄賂、駄目」
「はい。西賀国では、金品を渡した人も受け取った人も罪になります。こっそり渡しとる時点で、あかんて分かっとるってことですよね」
「うん」
俺はまだ、鶴丸たちの書類の処理とかを手伝えるような勉強はしていないけれど、その順番の決め方が駄目なのは分かった。勉強してる人は、分かって当たり前。
そんな決め方をしていた元真中に、鶴丸たちの手伝いなんてできない。させられない。
「陳情見て、資料をしっかり調べて、予算と照らし合わせて順番を割り振りしてくれとった者たちがおる。あんたらの無茶振りをどうにか修正しつつ、少しずつでも、地方の工事を進められるように考えてくれとった者たちがおる。その者らのお陰で、この国は潰れずにもってたんや。偶然、たまたま、天候に大きな乱れがなかったさかい、酷いことになっとらんかったんや。ほんまに、運が良かっただけやで。反省しぃや」
鶴丸はそう言って、書類を持ったままだった那月と部屋を出ていった。二人とも、俺に、深く頭を下げるのを忘れなかった。
「あ……」
鶴丸は、口を開きかけた正一郎の方をちらりと見たけれど、足は止めなかった。
「もうええわ?」
「ふふ。はい。もうええです。色々、分かったんで」
「ふーん?」
ここの人は、お仕事の役に立たないってことかな? 残念だ。
工事の順番の決め方が、元真中と鶴丸で違ったってことだよね?
「お金稼げる人の所からやってるってこと?」
それなら、合ってるんじゃない? お店でも何でも、お金が稼げないと駄目だ。お金が無いと何にもできないって事を、俺はもう知っている。仕事をしてお金を稼いで、そのお金で、服や食べ物や住む場所を買って生きていくのが人だから。
壱臣の店は、稼げなくて駄目になった。俺は、壱臣の作るご飯美味しかったけど、皇国では壱臣のご飯を美味しいって思う人や食べたいって思う人が少なかったから、お店を維持できなくて潰れてしまった。
それを考えると、お金が入ってくる所からやるのは合っているような?
「いえ。こういうんは、お金を稼ぐ目的でやるものやないんです。皆が困っとることを解決しようと、皆でお金を出し合うものですから。一番困っとるとこからやらなあかん。そやのに、このお人は、うちのを先にやってください、言うて袖の下を渡してきた人のとこから先にやっとるんです」
「んん?」
そでのした?
「賄賂言います」
「わいろ」
「順番を決める人の利益になるようにお金を渡したり、なんや欲しがっとる物品を渡したりして、うちの方の工事を先にやってくださいってお願いすることです。こっそり着物の袖の下に入れたりする事から、その渡す物品のことを袖の下言います。ほんで、順番を決める人がそれを受け取って、よし分かった言うて、その人のとこからやるんです。そういうんが賄賂です」
「んん?」
工事するためのお金を出してもらったり、人を出してもらったりする為に、順番を決める人にお金とかを渡す? そんな事で順番を決めていたら、お金を渡せない人の順番はいつまで経っても回ってこないじゃないか。
工事しないと困ったことが起こるんだよね? だから、直してって言ってるんだから。でもお金が渡せないから直してもらえなくて、困ったことが起こってしまう。その困ったことの処理にお金がかかったら、工事して欲しいですってお願いするお金がまた出せなくなる。工事してもらった方の人は、処理のお金がいらないからまたお金が出せて、また工事してもらえる?
「その順番の決め方は駄目。賄賂、駄目」
「はい。西賀国では、金品を渡した人も受け取った人も罪になります。こっそり渡しとる時点で、あかんて分かっとるってことですよね」
「うん」
俺はまだ、鶴丸たちの書類の処理とかを手伝えるような勉強はしていないけれど、その順番の決め方が駄目なのは分かった。勉強してる人は、分かって当たり前。
そんな決め方をしていた元真中に、鶴丸たちの手伝いなんてできない。させられない。
「陳情見て、資料をしっかり調べて、予算と照らし合わせて順番を割り振りしてくれとった者たちがおる。あんたらの無茶振りをどうにか修正しつつ、少しずつでも、地方の工事を進められるように考えてくれとった者たちがおる。その者らのお陰で、この国は潰れずにもってたんや。偶然、たまたま、天候に大きな乱れがなかったさかい、酷いことになっとらんかったんや。ほんまに、運が良かっただけやで。反省しぃや」
鶴丸はそう言って、書類を持ったままだった那月と部屋を出ていった。二人とも、俺に、深く頭を下げるのを忘れなかった。
「あ……」
鶴丸は、口を開きかけた正一郎の方をちらりと見たけれど、足は止めなかった。
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