【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

11 信頼できる人の見分け方  成人

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「じゃあね、力丸りきまる。気をつけてね」
「あああ。帰りたくない。帰りたくなーいー。いーやーだー」
「俺たちも、また帰るから」
「すぐ帰ってこいよ? 絶対だぞ。約束だからな。すぐだぞ、すぐ」

 ばちん、と車の運転席に座っている力丸りきまるのおでこが緋色ひいろに弾かれた。

「痛いいぃ。辛いいぃ」
「いいから、早く出ろ。後がつかえてる」

 そうそう。俺たちも、この後すぐに出るからね。力丸りきまるの見送りしたら、すぐ。
 今、じいじが、元真中たちを連れにいっていて、常陸丸ひたちまるは車を取りに行っている。人手が足りないから、この四人で西賀さいか国まで元真中たちを運んでくるんだ。本当にうちの者を付けんでもええんですか? って竹光たけみつには散々言われたけど、数少ない竹光たけみつの本当に信頼できる人を、今、一人でも竹光たけみつたちの側から減らしたくないからね。大丈夫。じいじと常陸丸ひたちまるがいて何かあるのなら、それはもう、誰がいてもどうしようも無いことだ。
 やっと納得した竹光たけみつは、ぽい、と置いて帰って来てくださって構いません、って言った。後は、梅光うめみつに任せといたら大丈夫です、だって。いいね、それ。後は任せといたら大丈夫って、いい。
 俺たちもさ。力丸りきまるに任せて大丈夫って思ってる。朱実あけみ殿下に渡すお手紙、よろしく。もしかしたら、朱実あけみ殿下のお返事を持って、またこっちに来られるかもしれない。朱実あけみ殿下は、お手紙を書くのが早いからさ。きっとすぐだよ、すぐ。

「ではいってきます、殿下、成人なるひと
「おう」
「いってらっしゃい?」

 どちらかというと家へ帰るんだと思うんだけど、挨拶は、いってきます、いってらっしゃい、でいいのかな? ま、いっか。家族が出かけるのを見送るんだから、いってらっしゃいだな。
 やっと出発した力丸りきまるに手を振っていたら、大きな乗り物が入ってきた。すごい。人がいっぱい乗れるやつ。乗り合いバスだ。走ってるのは見た事ある。乗るのは初めて。

「トラックじゃなかった」

 西賀さいか国で捕らえた罪人を運んだ時の印象が強くて、てっきり、各務かがみ印のトラックで運ぶのかと思っていた。元真中たち、今は罪人だからさ。

「トラックは、座席が二つしかないからな」
「そっか」

 俺は荷台でも構わないけどね。荷台で運ばれるのは慣れている。まあ、人になってからは経験無いんだけどさ。
 でも、二人しか座席に座れないなら、運転する常陸丸ひたちまるの他に一人だけ。じいじか緋色ひいろを荷台で運ぶことになる。それは良くない。なるほど。乗り合いバスなら、皆座席に座れるからばっちりだ。
 元真中たち、ちゃんと運んでもらえて良かったな。
 あの時、トラックで運ばれた罪人たちは、今は城の中の、竹光たけみつたちに近い場所や、重要な場所の警備を任せている軍人になっている。罰で髪の毛を切られているから、軍の中や城で嫌な目に合っている事もあるみたいだ。でも、皆けろりとしている。心からお仕えできるあるじに出会えたこと、感謝しかありません、と真剣な顔で何度もお礼を言われた。髪の毛は、あるじが伸ばせと仰られるなら伸ばします、別によいと仰られるならこのままにします、だって。慣れてしまうと、短い方が楽らしい。そうだよね。軍人は鍛錬でも汗をよくかくだろうし、その度に長い髪の毛を洗って乾かすのは大変そう。長いと、今朝の常陸丸ひたちまる力丸りきまるみたいに、手拭いでごしごし拭いて放っといたら乾いた、って訳にはいかないだろう。竹光たけみつは、好きにしたらええ、って言っているから、きっと短いままなんだろうな。
 文官さんも、何人か髪の毛を切っている。手入れできず、絡まって解けない髪の毛を切ったらすっきりしたらしい。楽でええです、って言っていた。
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