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第十章 されど幸せな日々
107 遊びの思い出 朱実
子ども達の遊びが、興に乗ってきたようだ。話し声が大きくなり、私の座る席まで声が届き始めた。子らは、末席の近くで遊び始めた為、はっきりと何を話しているのかまでは聞こえてこない。だが、話が聞こえている辺りの者たちがくすくす笑っている様子から、大層楽しんでいるらしい事は読み取れた。
かるたをしている事は伝わっている。読み手の九条利胤の声が大きいからだ。だがその声も、少し聞こえてはすぐに止まっていた。灯可辺りが、あっという間に札を取ってしまっているのだろうと推測された。身に覚えがある。かるたというのは、札の配置を記憶してしまった後は、読み札はひと文字目を聞けばそれでよい。全ての文言を聞くまでもなく、勝負はつくのだ。……私とかるたで遊ぶのはつまらない、と文句を言ったのは赤虎だった。
昔、とても昔の思い出だ。赤虎は、一枚も札を取れずに癇癪を起こして、毎回、もうやらない、と宣言していた。私たちより年長の朱可さんが、まあまあ、となだめて、福笑いやすごろくといった運に頼る遊びを提案して、また皆で新しい遊びが始まっていくのだ。
そんな時もあった。ここにいる、若い当主たちと共に遊んだ時間。緋色や赤璃、緋椀たちとは歳が離れているからか、あまり思い出す何かは無い。遊んだ、というと、何故か、癇癪を起こす赤虎がはっきりと思い出された。あの、一人で全て取る勢いだったかるたも、私なりに楽しんでいたということなのだろう。少し年長の朱可さんなどもいるのだから流石に全てを取ることはできず、悔しい思いをしたものだが。
そうであれば、あれは見可辺りが癇癪を? と様子を伺うが、見可は癇癪を起こすどころかやる気に満ち溢れているようだった。
それぞれが話をしているのが見える。子らの中に入ってなんの違和感もない成人が、本日も真面目な顔で、ふんふんと話を聞いていた。
かるた遊びとは、そんなに話すことがあっただろうか、と首を傾げる。読まれた札を取るだけの、単純な遊びだと認識していたのだが。読み手が読み上げる声をよく聞いて、はい、と返事をして札を取るだけの遊びのはず。
やがて話がついたのか、利胤が再び札を読み始めた。
「らいねんのことをいうとおにが」
「はいっ」
幼い声が元気に響いて、わっと拍手が沸き起こる。
「とれた! とれました! くらまのらがとれた!」
「すごい、蔵磨くん」
「おめでとう」
「やったな、蔵磨!」
遠慮もない大騒ぎ。子ども達だけでなく大人も拍手をして、本日初参加の八条蔵磨を褒め倒している。
利胤が読んだ文字数が今までに比べて多かったから、さては灯可が手心を加えたのだろう。先の話し合いはそれか?
そんな遊び方で楽しいのか? との答えは、嬉しそうな蔵磨の様子が答えだ。
灯可を見れば、成人と顔を見合わせて笑っている。成人の手元に、何枚もの札。ああ、そうか。灯可には、敵わない年長の相手が。
そこで、ふと思い出して振り返った。
私たちが大きな声を上げて遊ばなくなったのは、何時からだったか。緋色たちとの思い出が薄いのは何故か。
母は、箸も持たずにただ、大騒ぎの子らを見ていた。
かるたをしている事は伝わっている。読み手の九条利胤の声が大きいからだ。だがその声も、少し聞こえてはすぐに止まっていた。灯可辺りが、あっという間に札を取ってしまっているのだろうと推測された。身に覚えがある。かるたというのは、札の配置を記憶してしまった後は、読み札はひと文字目を聞けばそれでよい。全ての文言を聞くまでもなく、勝負はつくのだ。……私とかるたで遊ぶのはつまらない、と文句を言ったのは赤虎だった。
昔、とても昔の思い出だ。赤虎は、一枚も札を取れずに癇癪を起こして、毎回、もうやらない、と宣言していた。私たちより年長の朱可さんが、まあまあ、となだめて、福笑いやすごろくといった運に頼る遊びを提案して、また皆で新しい遊びが始まっていくのだ。
そんな時もあった。ここにいる、若い当主たちと共に遊んだ時間。緋色や赤璃、緋椀たちとは歳が離れているからか、あまり思い出す何かは無い。遊んだ、というと、何故か、癇癪を起こす赤虎がはっきりと思い出された。あの、一人で全て取る勢いだったかるたも、私なりに楽しんでいたということなのだろう。少し年長の朱可さんなどもいるのだから流石に全てを取ることはできず、悔しい思いをしたものだが。
そうであれば、あれは見可辺りが癇癪を? と様子を伺うが、見可は癇癪を起こすどころかやる気に満ち溢れているようだった。
それぞれが話をしているのが見える。子らの中に入ってなんの違和感もない成人が、本日も真面目な顔で、ふんふんと話を聞いていた。
かるた遊びとは、そんなに話すことがあっただろうか、と首を傾げる。読まれた札を取るだけの、単純な遊びだと認識していたのだが。読み手が読み上げる声をよく聞いて、はい、と返事をして札を取るだけの遊びのはず。
やがて話がついたのか、利胤が再び札を読み始めた。
「らいねんのことをいうとおにが」
「はいっ」
幼い声が元気に響いて、わっと拍手が沸き起こる。
「とれた! とれました! くらまのらがとれた!」
「すごい、蔵磨くん」
「おめでとう」
「やったな、蔵磨!」
遠慮もない大騒ぎ。子ども達だけでなく大人も拍手をして、本日初参加の八条蔵磨を褒め倒している。
利胤が読んだ文字数が今までに比べて多かったから、さては灯可が手心を加えたのだろう。先の話し合いはそれか?
そんな遊び方で楽しいのか? との答えは、嬉しそうな蔵磨の様子が答えだ。
灯可を見れば、成人と顔を見合わせて笑っている。成人の手元に、何枚もの札。ああ、そうか。灯可には、敵わない年長の相手が。
そこで、ふと思い出して振り返った。
私たちが大きな声を上げて遊ばなくなったのは、何時からだったか。緋色たちとの思い出が薄いのは何故か。
母は、箸も持たずにただ、大騒ぎの子らを見ていた。
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