22 / 96
快璃の章
8
しおりを挟む
そして、拍子抜けするほど何もなく二年が過ぎた。最終学年である。前世をあっさりと越えたことに驚き、透子と婚約できていないことは、残念に思う。俺達が仲の良いことは、何となく察している者も多かったが。
「快璃皇子と透子は婚約してしまったら、どうかしら?」
華子は、唐突に言った。
そういえば、前世でも彼女が提案してくれたのだったな、と思い出す。とても有り難く嬉しい提案なのだが、今回は問題があった。
「俺は是非そうしたいと思っている。」
とりあえず、正直な気持ちを伝える。聞いていた透子が真っ赤になった。まだ、はっきり言葉にしていなかったかもしれない。
「透子、大好きだよ。」
そう言いながら、緑の髪紐をほどき差し出した。躊躇わずに受け取る透子に驚いていると、自分の赤い髪紐をほどいて差し出してくる。長い黒髪がふわりと背中に散った。
「私も、快璃皇子をお慕いしております。」
何となく気付いていても、言葉にしてもらうとこんなにも嬉しいものなのか。
俺は感激して透子を抱きしめた。すっぽりと腕の中に入り込む小ささも愛しい。そのまま存分に堪能する。
「はい。では、そこまで。」
ぱんぱんと手を叩く音と冷静な声が、俺達を引き離した。もたれかかっていた透子が、我に返ったように少し離れる。
「あ、姉上。申し訳ございません。」
「まあ、確認は大切なことですから。これからは、なるべく人目の無いところでお願いします。」
華子は俺に向かって言った。
ふむ。人目が無ければいいんだな!思わず頬が緩む。
「やはり、人目が無くてもまだ早いかも……。」
「自重する。」
「それで、すぐに婚約できない訳は?」
さすがは華子。俺の言葉の裏に気付いてくれていたか。
「玻璃だ。入学式のすぐ後に、透子と婚約したいと父に申し出た。」
「……我が家は、学校以外で都へ来ることはありません。何故……。」
「本人は一目惚れだと言う。だが、帝は属国の者と婚姻できない決まりがあり、却下された。ならば、我が国の高位貴族の養女にしろと言い出した。または、俺が帝位を継げと。」
「そこまで……?」
「ああ。父はすべて却下した。透子は、俺と仲が良いことも知っていらっしゃる。」
「婚約を申し出ると、後出しになってしまいますか?」
「父は、玻璃に諦めさせるために喜んで婚約させてくれるかもしれないが、俺の身が危ないな。」
「快璃皇子と透子は婚約してしまったら、どうかしら?」
華子は、唐突に言った。
そういえば、前世でも彼女が提案してくれたのだったな、と思い出す。とても有り難く嬉しい提案なのだが、今回は問題があった。
「俺は是非そうしたいと思っている。」
とりあえず、正直な気持ちを伝える。聞いていた透子が真っ赤になった。まだ、はっきり言葉にしていなかったかもしれない。
「透子、大好きだよ。」
そう言いながら、緑の髪紐をほどき差し出した。躊躇わずに受け取る透子に驚いていると、自分の赤い髪紐をほどいて差し出してくる。長い黒髪がふわりと背中に散った。
「私も、快璃皇子をお慕いしております。」
何となく気付いていても、言葉にしてもらうとこんなにも嬉しいものなのか。
俺は感激して透子を抱きしめた。すっぽりと腕の中に入り込む小ささも愛しい。そのまま存分に堪能する。
「はい。では、そこまで。」
ぱんぱんと手を叩く音と冷静な声が、俺達を引き離した。もたれかかっていた透子が、我に返ったように少し離れる。
「あ、姉上。申し訳ございません。」
「まあ、確認は大切なことですから。これからは、なるべく人目の無いところでお願いします。」
華子は俺に向かって言った。
ふむ。人目が無ければいいんだな!思わず頬が緩む。
「やはり、人目が無くてもまだ早いかも……。」
「自重する。」
「それで、すぐに婚約できない訳は?」
さすがは華子。俺の言葉の裏に気付いてくれていたか。
「玻璃だ。入学式のすぐ後に、透子と婚約したいと父に申し出た。」
「……我が家は、学校以外で都へ来ることはありません。何故……。」
「本人は一目惚れだと言う。だが、帝は属国の者と婚姻できない決まりがあり、却下された。ならば、我が国の高位貴族の養女にしろと言い出した。または、俺が帝位を継げと。」
「そこまで……?」
「ああ。父はすべて却下した。透子は、俺と仲が良いことも知っていらっしゃる。」
「婚約を申し出ると、後出しになってしまいますか?」
「父は、玻璃に諦めさせるために喜んで婚約させてくれるかもしれないが、俺の身が危ないな。」
70
あなたにおすすめの小説
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました
六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。
「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。
アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。
時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。
すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。
そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。
その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。
誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。
「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」
「…………え?」
予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。
なぜ、落ちぶれた私を?
そもそも、お会いしたこともないはずでは……?
戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。
冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。
彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。
美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。
そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。
しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……?
これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる