【完結】何度でもやり直しましょう。愛しい人と共に送れる人生を。

かずえ

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真鶴の章

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 入学式が終わり、教室へ移動する時に騒ぎは起こった。教室へと向かう人の流れと、皇子みこの元へ向かう人の流れができたのだ。
 この子ども達は、皇子みこと同級という僥倖を生かすべく、家の大人達から色々と言い含められて来ているのだろう。
 子どもらしい素直さで、まずは挨拶をせねばと思ったに違いない。
 小さな姫君が、教室へ向かおうとして反対の流れに巻き込まれるのが見えた。押されて、転びそうになる。危ない、と思った時に、その体を受け止める手が見えた。
 快璃かいり皇子みこが受け止めている。ほっと息を吐く。良かった。周りの子より、だいぶ小さいのだ。転んでしまえば、踏まれて大怪我をしたかもしれない。
 そのまま、二人が挨拶を交わすのを見ていた。透子とうこ姫は、何となくみすぼらしいなりであった。髪の毛に艶はなく、髪紐も上手く結べていない。服も、きちんと着付けられていないのだろう。襟の辺りにたるみが見られた。
 私は訝しげに思い、辺りを見回す。彼女の側仕えは、どうしたというのだろう?いつも、きちんと彼女を整え、慈しんでいた小柄な少女はどこだ?
 そこまで考えて、またはたと気付く。それは、悪夢の話か。何故、私は彼女の側仕えを知っているのだろう。今日は、初顔合わせの入学式であるというのに。入学式の後、主たちが教室へ移動してから、各国の側仕えや護衛と顔を合わせて覚えていくのだ。それぞれ、諍いが無いように、仲の良くない国同士の者は特に、しっかり覚えておかなくてはならない。
 更に、余裕がなくて側仕えや護衛を共に来させることができなかった国には、側仕えを斡旋して、学校付きの護衛に特別に見ていてもらうように取り計らわなくてはならない。
 あけの国は、属国の中の、主要三国の一角である。余裕が無いわけはない。必ず、側仕えも護衛も付けている筈だ。姫は、他の者より二歳も小さいのである。どんなにしっかりしていても、自分でできることには限りがあるだろう。
 私は、探す。ぞっと背中を冷たい汗が流れる。
 悪夢の中で、開かれた異界の扉。小さな黒い落とし穴。落ちたのは。
 透子とうこ姫の側仕え、まり。そして、皇子みこと呼ばれた名もなき赤ん坊……。
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