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小さな幸せを願った勇者の話
94 理解できない思い
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ガウナーも、それだ、というようにセナの言葉に目を輝かせている。
俺は、首を傾げる訳にもいかずに二人を交互に、まじまじと見つめた。
「無理だな。」
マールクが答える。
「まず、あそこまでどうやって行くつもりだ?」
「馬車、で……。」
「王都との連絡馬車は無い。俺たちも馬車は持っていない。」
「借りる、とか……。」
「その金は?」
「さっきの稼ぎで……。」
「この稼ぎで、四人分のここの支払いをして、今日の宿を取り、更に今夜の飯と明日の朝食も賄う。明日の依頼を上手く取れるか分からないから、上手く取れなかったら更に明日の暮らしの費用がそこから出る。馬車を借りるような余裕は無い。」
「…………。」
黙り込んでうつ向いたセナ。ガウナーが横から口を挟む。
「俺の持ってきた金を使えばどうだ?」
「それを使ってまで助けに行って、それでどうなるというんだ?もう、全員やられているかもしれない。お礼をもらえるとは思えない。俺たちも行き来の間に襲われるかもしれない。」
「だが……。」
「ガウナー、あれをそんなに気に病むなら、お前は騎士に戻った方がいい。俺が裏切ったことにして王都へ戻り、聖者さまを逃がしてすみません、と謝れば、罰は受けるが騎士に戻れる。」
ぐ、と唇を噛みしめたガウナーも、うつ向いて押し黙った。
俺はずっと、何の話をしているのか分からず、ぽかんとしている。
「ユーゴー?」
マールクが俺の様子に気付いたらしい。苦笑しながら説明を始めた。
「こちらへ来る途中に、襲われていた馬車があったろ?あの馬車を助けなかったことが、二人は心残りらしい。」
ああ、あれ!
やっと分かって、すっきりした気分で頷いた。
「今から行っても無駄足だと思う。」
「ユーゴー。でも……。」
もう通りすぎてからだいぶ時間が経っている。今、昼食を摂ってから馬車を手配して行ったって助けられる訳がない、と理路整然と述べると、セナは涙を目に浮かべながら口を開いた。
「……今回は、もう時間も無いし仕方ないけど、次にあんなことがあったら、助けたい。」
俺はマールクと顔を見合わせる。目線を交わして頷きあった。
「基本は無理だ。」
マールクがきっぱりと言ってくれるので、俺も続く。
「護衛の任務なら、護衛対象の指示に従い、護衛対象の保護に全力を尽くす。それが、金をもらっている以上、当然のことだと思う。討伐依頼の途中で魔物に襲われている人がいたら、その時の状況で考える。絶対に助けると約束はできない。」
「なんで、ユーゴー!」
「俺たちは、依頼の金で暮らす冒険者だからだ。自分達の生活のために、魔物を狩り、魔物から依頼者を守っているからだ。無償で人を守って、魔物を倒して、暮らしていけやしない。」
「それでも、助けたい…….。」
涙を堪えて呟くセナ。
セナが悲しい気持ちなのは嫌だが、どうしても助けたい、という気持ちはやっぱり理解できず、俺は首を傾げるばかりだった。
俺は、首を傾げる訳にもいかずに二人を交互に、まじまじと見つめた。
「無理だな。」
マールクが答える。
「まず、あそこまでどうやって行くつもりだ?」
「馬車、で……。」
「王都との連絡馬車は無い。俺たちも馬車は持っていない。」
「借りる、とか……。」
「その金は?」
「さっきの稼ぎで……。」
「この稼ぎで、四人分のここの支払いをして、今日の宿を取り、更に今夜の飯と明日の朝食も賄う。明日の依頼を上手く取れるか分からないから、上手く取れなかったら更に明日の暮らしの費用がそこから出る。馬車を借りるような余裕は無い。」
「…………。」
黙り込んでうつ向いたセナ。ガウナーが横から口を挟む。
「俺の持ってきた金を使えばどうだ?」
「それを使ってまで助けに行って、それでどうなるというんだ?もう、全員やられているかもしれない。お礼をもらえるとは思えない。俺たちも行き来の間に襲われるかもしれない。」
「だが……。」
「ガウナー、あれをそんなに気に病むなら、お前は騎士に戻った方がいい。俺が裏切ったことにして王都へ戻り、聖者さまを逃がしてすみません、と謝れば、罰は受けるが騎士に戻れる。」
ぐ、と唇を噛みしめたガウナーも、うつ向いて押し黙った。
俺はずっと、何の話をしているのか分からず、ぽかんとしている。
「ユーゴー?」
マールクが俺の様子に気付いたらしい。苦笑しながら説明を始めた。
「こちらへ来る途中に、襲われていた馬車があったろ?あの馬車を助けなかったことが、二人は心残りらしい。」
ああ、あれ!
やっと分かって、すっきりした気分で頷いた。
「今から行っても無駄足だと思う。」
「ユーゴー。でも……。」
もう通りすぎてからだいぶ時間が経っている。今、昼食を摂ってから馬車を手配して行ったって助けられる訳がない、と理路整然と述べると、セナは涙を目に浮かべながら口を開いた。
「……今回は、もう時間も無いし仕方ないけど、次にあんなことがあったら、助けたい。」
俺はマールクと顔を見合わせる。目線を交わして頷きあった。
「基本は無理だ。」
マールクがきっぱりと言ってくれるので、俺も続く。
「護衛の任務なら、護衛対象の指示に従い、護衛対象の保護に全力を尽くす。それが、金をもらっている以上、当然のことだと思う。討伐依頼の途中で魔物に襲われている人がいたら、その時の状況で考える。絶対に助けると約束はできない。」
「なんで、ユーゴー!」
「俺たちは、依頼の金で暮らす冒険者だからだ。自分達の生活のために、魔物を狩り、魔物から依頼者を守っているからだ。無償で人を守って、魔物を倒して、暮らしていけやしない。」
「それでも、助けたい…….。」
涙を堪えて呟くセナ。
セナが悲しい気持ちなのは嫌だが、どうしても助けたい、という気持ちはやっぱり理解できず、俺は首を傾げるばかりだった。
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