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世界の平和を祈った聖者の話
2 間違えないために
しおりを挟む「早く探しに行かなくてもいいのか?」
ガウナーが食事を少しずつ口にしながら言った。
「むやみに探し回ったって見つからないだろ?今、出ていった訳じゃなさそうだ。」
俺の顔を見ながら、マールクは温かい飲み物を飲んだ。俺の食事が進むまで待ってくれるらしい。俺は、ガウナーの戸惑う様子をしり目に、泣きながらでもいいから食べてしまうことにした。
「何を話していたんだ?」
「おれ、が、言ってしまった、から。」
「何を?」
「助けたかった、って。」
「昼間の奴らか。」
「だから、助けられる、ようになるから、待っててって。」
「一人でレベル上げに行ったってこと?」
しゃくりあげながら話す俺に呆れることなく、マールクが付き合ってくれる。頷くと、何でそうなる?、と呟いた。
「一緒にレベル上げしたらいいじゃないか、俺たちはパーティなんだ。」
俺が、そうやって言えたなら。
ユーゴーは納得して、一緒にいてくれただろうか?
「ユーゴーは、セナが助けたかったと言ったらなんて答えた?」
「今は、誰かを助けて守りながら魔物を倒せない、から、できるようになるまで待っててって。」
「まるで、できるようになることが分かっているみたいに言うんだな。」
「分かってて言ってる……。でも、ユーゴーはずっとできないままでいいって言ってたのに、俺が……。」
「確かにユーゴーはあの年齢の割りに強いが、できるようになる、と言い切るのは何でだ?」
「…………。」
ユーゴーは勇者なのだ、などと言えるわけがない。
「……分かった。じゃあ、ユーゴーは最後になんて言っていた?」
口をつぐんだ俺に、マールクは質問を変える。
「またねって。」
「レベル上げたら帰ってくるのか?」
「うん。誕生日の鑑定を王都の教会で受けるから、その近くで待っててって。」
「………………は?」
「だから、待ってなきゃいけない。俺は、王都の近くで。」
「セナ違う、そこじゃない。ユーゴーはまだ、鑑定の儀を受けていないのか?」
「うん。俺より誕生日が遅いから。」
「本当にまだ、子どもじゃないか……。」
マールクが頭を抱えた。
何だろう?
あ、冒険者登録の時に、十五歳と言ってしまったのだったか。
「う、嘘ついてごめんなさい。」
「違う。そこじゃないんだよ、セナ。俺は、子どもに頼って魔物を倒していたのかと情けなくなっただけだから。」
子ども。ユーゴーはまだ、子ども……。俺は、ユーゴーのお兄さんだと言っていたはずなのに。
唇を噛みしめて、決意する。
ユーゴーが、鑑定の儀を受けないですむように、王都の教会で待っておくことにしよう。
今度こそ、間違えない!
ガウナーが食事を少しずつ口にしながら言った。
「むやみに探し回ったって見つからないだろ?今、出ていった訳じゃなさそうだ。」
俺の顔を見ながら、マールクは温かい飲み物を飲んだ。俺の食事が進むまで待ってくれるらしい。俺は、ガウナーの戸惑う様子をしり目に、泣きながらでもいいから食べてしまうことにした。
「何を話していたんだ?」
「おれ、が、言ってしまった、から。」
「何を?」
「助けたかった、って。」
「昼間の奴らか。」
「だから、助けられる、ようになるから、待っててって。」
「一人でレベル上げに行ったってこと?」
しゃくりあげながら話す俺に呆れることなく、マールクが付き合ってくれる。頷くと、何でそうなる?、と呟いた。
「一緒にレベル上げしたらいいじゃないか、俺たちはパーティなんだ。」
俺が、そうやって言えたなら。
ユーゴーは納得して、一緒にいてくれただろうか?
「ユーゴーは、セナが助けたかったと言ったらなんて答えた?」
「今は、誰かを助けて守りながら魔物を倒せない、から、できるようになるまで待っててって。」
「まるで、できるようになることが分かっているみたいに言うんだな。」
「分かってて言ってる……。でも、ユーゴーはずっとできないままでいいって言ってたのに、俺が……。」
「確かにユーゴーはあの年齢の割りに強いが、できるようになる、と言い切るのは何でだ?」
「…………。」
ユーゴーは勇者なのだ、などと言えるわけがない。
「……分かった。じゃあ、ユーゴーは最後になんて言っていた?」
口をつぐんだ俺に、マールクは質問を変える。
「またねって。」
「レベル上げたら帰ってくるのか?」
「うん。誕生日の鑑定を王都の教会で受けるから、その近くで待っててって。」
「………………は?」
「だから、待ってなきゃいけない。俺は、王都の近くで。」
「セナ違う、そこじゃない。ユーゴーはまだ、鑑定の儀を受けていないのか?」
「うん。俺より誕生日が遅いから。」
「本当にまだ、子どもじゃないか……。」
マールクが頭を抱えた。
何だろう?
あ、冒険者登録の時に、十五歳と言ってしまったのだったか。
「う、嘘ついてごめんなさい。」
「違う。そこじゃないんだよ、セナ。俺は、子どもに頼って魔物を倒していたのかと情けなくなっただけだから。」
子ども。ユーゴーはまだ、子ども……。俺は、ユーゴーのお兄さんだと言っていたはずなのに。
唇を噛みしめて、決意する。
ユーゴーが、鑑定の儀を受けないですむように、王都の教会で待っておくことにしよう。
今度こそ、間違えない!
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