チートスキル『学習(ラーニング)』で異世界最強 ~Malice・Awaking~

さぼてん

文字の大きさ
2 / 46

01 私はマリス

しおりを挟む
さて、異世界転生したのはいいけれど――これから、どうしようか?
俺はとりあえず、ポケットの中を探る。響きはよく感じないが、やっぱり世の中、金だ。
金がなければ話にならない。
けれど……

「マジかぁ……」

その望みは、あっけなく砕かれた。出てくるのは適当に突っ込んだレシートや、自転車の鍵……今となっては意味もないガラクタと、後はあの時もらったスマートフォン。
けど……なぜか起動しない。まさか、充電切れ?
俺は頭を抱えつつ、とぼとぼ歩きだす。早速、野宿コースかよ、と――

「全く、神の使いってのもケチだなぁ、最低限の金位用意してくれたって……」

愚痴をブツブツとこぼしながら、街を散策し始める。
道行く人が不思議そうに見つめる中、俺はただ一人、先行きを案じていた――そんな時だった。

「ん?」
近くで、何やら騒ぐ声が聞こえたのだ。どうやら、正面の広場かららしい。見ると、既に人だかりができていた。
気になった俺はそこへと近づき、人の間からそれを見た。

「動くなぁ!動けばコイツの命はないぞ!」
ナイフを光らせ、叫ぶ男。そのもう片方の腕は、美麗な装飾が施された服装の少女の首に回されている。
男と俺との間には、黒服の男が一人――見た感じ、あの子の使用人か何かだろうか?
彼は額から汗を流し、ジッとナイフの男を見据えている。

「お嬢様を離せ……!」
「なら、その中の物を渡せ!」
「ぐ……」
「ダメですセバス、それを渡してはなりません!」
「ですが……」

どうやら、一刻を争う事態らしいことが呑み込めた。けど、俺にどうにかできる問題ではなさそうだ――けど、見捨てたくはない。
いったい、どうすれば?
あれこれ悩んでいた、その時だった。

「おい、そこのガキにケースを渡してこっちへ寄越せ……この娘と交換してやる」
「え……俺?」

二人の男と、周囲の野次馬の視線が、一気に俺へと集まったのは。
あまりに突拍子もない出来事に、困惑する俺。

「関係のないものを巻き込めるわけがないだろう!」
「なら、お嬢様の命は無いぜ?」
「うぅ……」
その返答に、男は再びナイフを少女の喉元へとあてがう。
恐怖に目をつぶるその姿に、俺の足が――勝手に動いた。

「俺……行きます」
「しかし……」
俺は黒服の人の前へと出て、そう言った。
「こんなこと、見捨てておけないでしょう?さ、早く」
「……すまない」
男は目を固く閉じながら、歯を食いしばって俺にケースを手渡す。
その手からは、震えと緊張が伝わった。連動して、俺の心臓の鼓動も高鳴った。
もしかしたら、また死ぬのかもしれない――と。
けれど、あの娘が助かるのなら……それも悪くない。
俺は唾を飲み、歩を進めた。

「よしよし……それでいい。それで……」
俺が近づくと、男は徐々に少女の拘束を緩めてゆき、同時にナイフを下へと下げ始める。

「きゃあっ」
そして俺が正面に立った瞬間、少女を突き飛ばすように解放した。
そして空いた手にケースを握ると、言った。

「フフ、ご苦労……」
その時だった。

『敵意を感知しました、後方へ退避してください』
俺の頭の中に、機械的な女性の声がしたのは――俺はその言葉に従い、跳ねるように後ずさる。
すると――

「チッ、惜しい」
ナイフを突き出す構えを取った男の姿が、そこにはあった。
咄嗟に躱せていなければ、あのまま刺されていたところだった――汗が俺の額をつたう。

『危ないところでしたね』
(君は、一体?)
再び、俺の頭の中で声がした。戸惑いつつも、返してみる。
『私は人工知能、『マリス』と申します。貴方を助けることが、私の役目です……マスター』
人工知能?いったいどこに、そんなものが……?
ふと、俺は思い出す。『神の使い』の言葉を――

《困ったことがあれば、そのスマートフォンを頼るといい》

「そういう事か……」
ポケットから取り出したスマートフォンを見て、呟く俺。
その画面には、いつの間にやら明かりが灯っていた。

『マスター、右方向、攻撃が来ます』
「!」

再び響いた言葉に、俺は身をかがめる。上を向くと、そこにはナイフを右から左へ振り切った男の姿。

『次撃、左斜め上方向です』
『右方向、正面、右斜め上……』
言葉に従い、俺は次々に襲い来る凶刃を躱し続ける。
次第に男が息を切らし、攻撃の手が止まった。

(すげぇ……すげぇよマリス!)
『まだです、男から高熱源反応をキャッチしました』
興奮を隠しきれずにいる俺を、マリスが諫める。見ると――男の右手のひらは真っ赤な光に染まっていた。

「だったら、燃え尽きろぉ!」
男の叫びと同時に、野次馬が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
彼らには、これから何が起こるのかが分かったらしい。

『来ます、しゃがんでください』
「うぉ!」

俺が身をかがめた次の瞬間、空気が熱せられるのを感じた。まさか――魔法!?

「ちぃ、ちょこまかと……!」
苦々し気に吐き捨てる男。その手は再び、光に包まれつつある。

(マリス、どうすればいい!?)
『《学習ラーニング》モードを起動してください』
(ラーニング?どうやって)
『《ヘイ、マリス》、と言ってください』

なんだか訳がわからないが、今は藁にも縋る気持ちだ。一か八か、やるしかない!

「ヘイ、マリス!ラーニングモード起動!」
『かしこまりました。ラーニングを開始します』

「何をしようとしてるが知らねぇが!」

瞬間、男が再び魔法を放った!迫りくる火球に、俺は――

『私をあの火球へかざしてください』
「うおぉぉぉ!」

スマートフォンの画面をかざした!すると――

「マジかよ……」
何と、液晶から放たれた光が火球を包み込み、0と1のデータ粒子にして吸収しているではないか。
そして光が収まると、マリスの声がした。

『ラーニング完了……スキル、《火球ファイアーボール》を取得』
取得って、まさか――

『マスター、スキルの発動を』
「……わかった!ヘイ、マリス!《火球》を発動!」
『かしこまりました。《火球》を発動します』

すると、今度は俺の左手が熱と光を帯び始めた。あの男と同じ現象だ。
俺は手をかざし、勢い任せにそれを放った。
そして、男が再び打ち出していた火球とぶつかり合い――爆発を起こした!

「ぐぅ、ううっ……」
その衝撃に、男がたまらず投げ出される。ケースが手から離れ、地面を滑ってゆく。
男は必死にそれへと手を伸ばす。が――

「ち、畜生……う!」

「そこまでだ」
突如として聞こえた声に、言葉を詰まらせる。
煙が晴れ、そこに姿を現したのは――

「《レイヴンズ》だ。大人しく投降しろ」
カラスを模したエンブレムが施された、特殊部隊のジャケットのような服装に身を包んだ若い男だった。
自身に突き付けられた銃口に打つ手を無くし、ただただ唸るナイフの男。
後からやってきた仲間らしき別の人物が男を捉え、連れてゆく。
そして彼はそれを見届け、言った――

「お前もだ」
「へ?」

こうして俺もまた腕を引かれ、強引に何処かへと連れられてゆく。
果たして、俺の異世界生活はどうなるのだろうか――?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

処理中です...