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壱ノ刻 ~新月~
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私、神代朔夜の父、神代衛が取材のために蓮石島へと向かった……
「一週間で帰ってくる」と言い残して……
しかし……
一ヵ月経っても帰ってこない……
私の兄、神代零が父を捜しに島へと向かった……
だが……
兄が父を捜しに向かってから二週間経つが2人は帰ってこない……
私は、2人を捜すべく島へと向かった……
◆◆◆
蓮石島は本島から4㎞離れた場所にある小さな島だ。
今から約十年前1991年のある日、忽然と島民が消えた。
それ以来、蓮石島は無人の島となった。
島民が消えた理由は未だに解っていない。
無人の島となった今では、村の家屋がただ寂しく佇んでいる。
その中でも一際大きく不気味佇んでいる屋敷“日浦邸”。
日浦邸は、島の長である日浦武とその家族と使用人が住んでいた屋敷。
当時は手入れをされていて立派だったのだろうが、十年経った今では誰も手入れをしていないため、屋敷の周りは荒れ放題で、様々な雑草が生い茂りまるで髪のように風になびき、壁には蔦や苔がびっしりと張り付き不気味さをより引き立てていた。
私は扉を開けようと手を掛けた時だった。
「入ってはだめ……」
後ろから声がして振り返ると、そこには薄い青色の着物を着た私と同い年ぐらいの少女が立っていた。
無人島のはずなのになぜ人が……
そう考えていると少女は消え入るような声で、
「そこから離れて……」
ギイィィ――……
少女がそう言ったとき、私の身体は複数の見えない手に引っ張られるように屋敷に引きずり込まれた。
◆◆◆
気が付くと私は屋敷の中にいた。
屋敷の中には午後一時だというのに暗く、夏だというのに空気がとても冷たい。
どこまで続くか分からない廊下の先には闇が覆い、時折聞こえる風の音が人の呻き声のように聞こえる。
怖くなり私は屋敷の外に出ようと扉を開けようとした。
しかし、鍵が掛けられていないのに扉は堅く閉じられていて、とても私の力では開きそうになかった。
私は恐怖と絶望でその場にへたり込んでしまう。
その時、後ろからギシ、ギシと床が軋む音が聞こえ、恐る恐る振り返ると、兄がいた。
「兄さん!」
私は思わず叫んだ。
しかし、兄は私の呼び掛けには応えず、屋敷の奥へと向かう。
「待って、兄さん!」
私は立ち上がり、兄の後を追う。
屋敷の中はとても広く、まるで迷路のようだ。
闇に覆われた長い廊下には、かなりの数の扉があり1階だけでもかなりの部屋があるようだ。
私は兄の姿を見失はないように必死に後を追う。
やがて、兄は1つの部屋に入った。
私も兄の後を追って部屋の前に立ち、扉を開けた。
◆◆◆
部屋の中に入ると冷たかった空気がより一層冷たくなった気がした。
「兄さん」
私は暗い部屋に呼び掛けるが、返ってくるのは静寂だけ。
私は持ってきた小型の懐中電灯で室内を照らし、兄の姿を捜すが兄の姿は見当たらない。
室内を見渡すと本などの書物がズラリと本棚に押し込まれていた。
どうやらここは書庫のようだ。
書物は十年もの間、放置されていたため、埃をかぶり文字が霞んでいてとても読めそうにない。
机の上を照らすと、なにかが青く光った。
私はそれに近づき手に取った。
指輪だ。
青いきれいな石がはめ込まれた指輪。
兄が母から譲り受けたものだ。
兄はこれをいつも首から下げて肌身離さず持っていた。
なぜなら、この指輪は母の形見だからだ。
「兄さん! いるのでしょう!」
再び呼び掛けるが、返ってくるのはやはり静寂だけで、私の声は闇に吸い込まれた。
思わず瞳から涙が零れた。
私はそれを拭い、部屋を出ようと扉の前に立つ。
その時だった。
「ねぇ……」
再び後ろから声がして振り返ると、薄い桃色の着物を着た7歳ぐらいの少女が立っていた。
「あそぼぅ……おねぇちゃん……あそぼぅよ……」
少女の声は幼いながらも、とてもこの世のものとは重く感じた。
私は少女から逃げようと、部屋から出ようと扉を引くが、扉は重く堅く閉じられていて、ビクともしない。
ひた……ひた……ひた……
少女の足音が徐々に近づいてくる。
私は扉を開けようとさらに手に力を籠めるが、扉は開かない。
その間にも少女は近づいてくる。
ひた……ひた……
突如足音が途絶える。
私は恐る恐る後ろを振り向く。
すると、少女の姿はなかった。
不安を感じながら周囲を懐中電灯で照らすが、少女はいない。
私は力が抜けて壁に寄りかかり安堵した。
しかし……
不意に左腕に重さを感じて視線を下すと……
少女が私の腕を掴んでいた。
「おねぇちゃん……ひなと……あそぼぅ……」
私は驚き少女の手を振り解こうとするが、少女とは思えない力で掴まれていて左腕が痛んだ。
それでも私は必死で振り解こうとするが、少女は放してはくれない。
それどかろか、より一層少女の手は腕を掴む力を強くする。
私は腕の痛みに耐えながらも必死にもがく。
そんな時だった。
私の左手からカッと青白い光が零れた。
すると、少女は悲鳴を上げて私の左腕を離す。
左手を見ると指輪がぽうっと淡く光っていた。
私は何が起きたのかわからず当惑した。
しかし、直ぐに少女の悲痛な呻き声で我に返る。
私は慌てて扉に駆け寄り、力一杯扉を引く。
すると、不思議なことに扉がガタッという音を立てて僅かに開く。
だが……
「おねぇちゃん……なんで……ひなと……あそんでくれないの……」
後ろから弱々しいが不吉を孕んだ声が近づいてくる。
私は振り向かず僅かに開いた隙間に手を差し込み扉を引くと、扉がガタッ、ガタッという音を立てて開く。
私は勢いよく部屋の外へと飛び出す。
そして、振り返り急いで扉を閉じる。
すると、中からドン、ドンと激しく扉を叩く音と共に少女の啜り泣く声が響く。
「おねぇちゃん……あけてよぉ……くらいよぉ……おねぇちゃん……」
私は扉が開かないように押さえる。
それでも、扉を叩く音と少女の泣き声は止まない。
「……さい……なさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
まるで呪詛のように呟かれる”ごめんなさい”という少女の言葉。
私は耳を塞ぐのを我慢し、目を閉じて扉を押さえる。
すると、突如として扉を叩く音と少女の鳴き声が止む。
私は不思議に思いながらも安堵した。
しかし、そんな一時も一瞬で終わる。
長い廊下の先から足音が1つ。
ギシ……ギシ……ギシ……ギシ……
それが徐々に近く大きくなる。
足音が近づくにつれて、心臓が早く脈打ち、全身が凍りつくのを感じた。
早くここから離れなければ……
そう思いながらも私の身体は動かない。
まるで金縛りにあったかのように……
ギシ……ギシ……ギシ……ギシ……
足音が近くで止まる。
私の視線は自然と足音が止まった方に向く。
そこにいたのは、巫女装束を纏った髪の長い私と同い年ぐらいの少女だった。
少女はくぐもった声で呟く。
「……あなたも……一緒に……」
「……逝きましょう……」
その言葉を聞いて、私は走った。
前のめりになりながら全速力で振り向かずに走った。
あの少女から逃げなければならないと感じて。
しかし、そんな私の抵抗もむなしく少女に腕を掴まれ引っ張られる。
そして、私の意識は闇に落ちた。
「一週間で帰ってくる」と言い残して……
しかし……
一ヵ月経っても帰ってこない……
私の兄、神代零が父を捜しに島へと向かった……
だが……
兄が父を捜しに向かってから二週間経つが2人は帰ってこない……
私は、2人を捜すべく島へと向かった……
◆◆◆
蓮石島は本島から4㎞離れた場所にある小さな島だ。
今から約十年前1991年のある日、忽然と島民が消えた。
それ以来、蓮石島は無人の島となった。
島民が消えた理由は未だに解っていない。
無人の島となった今では、村の家屋がただ寂しく佇んでいる。
その中でも一際大きく不気味佇んでいる屋敷“日浦邸”。
日浦邸は、島の長である日浦武とその家族と使用人が住んでいた屋敷。
当時は手入れをされていて立派だったのだろうが、十年経った今では誰も手入れをしていないため、屋敷の周りは荒れ放題で、様々な雑草が生い茂りまるで髪のように風になびき、壁には蔦や苔がびっしりと張り付き不気味さをより引き立てていた。
私は扉を開けようと手を掛けた時だった。
「入ってはだめ……」
後ろから声がして振り返ると、そこには薄い青色の着物を着た私と同い年ぐらいの少女が立っていた。
無人島のはずなのになぜ人が……
そう考えていると少女は消え入るような声で、
「そこから離れて……」
ギイィィ――……
少女がそう言ったとき、私の身体は複数の見えない手に引っ張られるように屋敷に引きずり込まれた。
◆◆◆
気が付くと私は屋敷の中にいた。
屋敷の中には午後一時だというのに暗く、夏だというのに空気がとても冷たい。
どこまで続くか分からない廊下の先には闇が覆い、時折聞こえる風の音が人の呻き声のように聞こえる。
怖くなり私は屋敷の外に出ようと扉を開けようとした。
しかし、鍵が掛けられていないのに扉は堅く閉じられていて、とても私の力では開きそうになかった。
私は恐怖と絶望でその場にへたり込んでしまう。
その時、後ろからギシ、ギシと床が軋む音が聞こえ、恐る恐る振り返ると、兄がいた。
「兄さん!」
私は思わず叫んだ。
しかし、兄は私の呼び掛けには応えず、屋敷の奥へと向かう。
「待って、兄さん!」
私は立ち上がり、兄の後を追う。
屋敷の中はとても広く、まるで迷路のようだ。
闇に覆われた長い廊下には、かなりの数の扉があり1階だけでもかなりの部屋があるようだ。
私は兄の姿を見失はないように必死に後を追う。
やがて、兄は1つの部屋に入った。
私も兄の後を追って部屋の前に立ち、扉を開けた。
◆◆◆
部屋の中に入ると冷たかった空気がより一層冷たくなった気がした。
「兄さん」
私は暗い部屋に呼び掛けるが、返ってくるのは静寂だけ。
私は持ってきた小型の懐中電灯で室内を照らし、兄の姿を捜すが兄の姿は見当たらない。
室内を見渡すと本などの書物がズラリと本棚に押し込まれていた。
どうやらここは書庫のようだ。
書物は十年もの間、放置されていたため、埃をかぶり文字が霞んでいてとても読めそうにない。
机の上を照らすと、なにかが青く光った。
私はそれに近づき手に取った。
指輪だ。
青いきれいな石がはめ込まれた指輪。
兄が母から譲り受けたものだ。
兄はこれをいつも首から下げて肌身離さず持っていた。
なぜなら、この指輪は母の形見だからだ。
「兄さん! いるのでしょう!」
再び呼び掛けるが、返ってくるのはやはり静寂だけで、私の声は闇に吸い込まれた。
思わず瞳から涙が零れた。
私はそれを拭い、部屋を出ようと扉の前に立つ。
その時だった。
「ねぇ……」
再び後ろから声がして振り返ると、薄い桃色の着物を着た7歳ぐらいの少女が立っていた。
「あそぼぅ……おねぇちゃん……あそぼぅよ……」
少女の声は幼いながらも、とてもこの世のものとは重く感じた。
私は少女から逃げようと、部屋から出ようと扉を引くが、扉は重く堅く閉じられていて、ビクともしない。
ひた……ひた……ひた……
少女の足音が徐々に近づいてくる。
私は扉を開けようとさらに手に力を籠めるが、扉は開かない。
その間にも少女は近づいてくる。
ひた……ひた……
突如足音が途絶える。
私は恐る恐る後ろを振り向く。
すると、少女の姿はなかった。
不安を感じながら周囲を懐中電灯で照らすが、少女はいない。
私は力が抜けて壁に寄りかかり安堵した。
しかし……
不意に左腕に重さを感じて視線を下すと……
少女が私の腕を掴んでいた。
「おねぇちゃん……ひなと……あそぼぅ……」
私は驚き少女の手を振り解こうとするが、少女とは思えない力で掴まれていて左腕が痛んだ。
それでも私は必死で振り解こうとするが、少女は放してはくれない。
それどかろか、より一層少女の手は腕を掴む力を強くする。
私は腕の痛みに耐えながらも必死にもがく。
そんな時だった。
私の左手からカッと青白い光が零れた。
すると、少女は悲鳴を上げて私の左腕を離す。
左手を見ると指輪がぽうっと淡く光っていた。
私は何が起きたのかわからず当惑した。
しかし、直ぐに少女の悲痛な呻き声で我に返る。
私は慌てて扉に駆け寄り、力一杯扉を引く。
すると、不思議なことに扉がガタッという音を立てて僅かに開く。
だが……
「おねぇちゃん……なんで……ひなと……あそんでくれないの……」
後ろから弱々しいが不吉を孕んだ声が近づいてくる。
私は振り向かず僅かに開いた隙間に手を差し込み扉を引くと、扉がガタッ、ガタッという音を立てて開く。
私は勢いよく部屋の外へと飛び出す。
そして、振り返り急いで扉を閉じる。
すると、中からドン、ドンと激しく扉を叩く音と共に少女の啜り泣く声が響く。
「おねぇちゃん……あけてよぉ……くらいよぉ……おねぇちゃん……」
私は扉が開かないように押さえる。
それでも、扉を叩く音と少女の泣き声は止まない。
「……さい……なさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
まるで呪詛のように呟かれる”ごめんなさい”という少女の言葉。
私は耳を塞ぐのを我慢し、目を閉じて扉を押さえる。
すると、突如として扉を叩く音と少女の鳴き声が止む。
私は不思議に思いながらも安堵した。
しかし、そんな一時も一瞬で終わる。
長い廊下の先から足音が1つ。
ギシ……ギシ……ギシ……ギシ……
それが徐々に近く大きくなる。
足音が近づくにつれて、心臓が早く脈打ち、全身が凍りつくのを感じた。
早くここから離れなければ……
そう思いながらも私の身体は動かない。
まるで金縛りにあったかのように……
ギシ……ギシ……ギシ……ギシ……
足音が近くで止まる。
私の視線は自然と足音が止まった方に向く。
そこにいたのは、巫女装束を纏った髪の長い私と同い年ぐらいの少女だった。
少女はくぐもった声で呟く。
「……あなたも……一緒に……」
「……逝きましょう……」
その言葉を聞いて、私は走った。
前のめりになりながら全速力で振り向かずに走った。
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