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6 騎士と手紙
しおりを挟む朝起きると、ライちゃんはいなくなっていた。俺はしっかりベッドに寝かされていて、昨日のことを思い出して悔しい気持ちになる。
あんな醜態をライちゃんに見せてしまったのは久しぶりだ。
恥ずかしさよりも、心配をかけてしまったことが悲しい。
本当に、しっかりしないとな……
ライちゃんは、緊急時以外は来客用の部屋で寝る。
自室にあるソファを見ると、毛布が畳んで置いてあった。
今日はその"緊急時"だったのだ。
俺が魘されないか、心配してくれて俺の部屋に泊まってくれたのだろう。
寝つきは浅い方なのに、俺が目覚めないくらいの静かさでそっと出て行ったのだと思うと、また胸が痛くなる。
週末の2日が休みなのは俺だけで、ライちゃんは殆ど毎日騎士団に顔を出している。
副隊長になってから、更に忙しそうだ。忙しい上に夜は俺の子守りか、と考えてしまい溜息をついた。
ふと横のサイドテーブルを見ると、置き手紙があるのを見つけた。
『今夜話したい。怖い話じゃないからお姫様は安心して城で待っててくれ』
相変わらず大きくて強そうな見た目と似合わない、繊細で流れるような字だ。
俺が不安にならないように面白く書いてくれた文面だとは分かっているが、それでもやっぱりあの主人公に似ているじゃないか。
朝起きた時から心臓がずっと締め付けられているような気分だったが、ゆっくりと緩んでいくのを感じる。
気障なことを気障と思わせずに言えてしまうライちゃんは、あの小説の騎士よりもっと上手だ。
1階に降りてシンクの方を見ると、レイちゃんの分の食器が綺麗に片付けてあった。夜中にレイちゃんが洗っておいてくれたのだろう。
ポトフは美味しかったかな、後で2階に行って聞いてみよう。久しぶりに、息ができなくなった事も話してみようかな。
引きこもってはいるレイちゃんだが、こうやって洗い物を済ませておいてくれたり、週末以外はご飯はいらないと言うので、俺が知らない間にちゃんと生活しているみたいだ。
何だかあまり干渉してほしく無さそうなので、何かある時以外はそっとしている。
あんなにずっと一緒にいたのに、どうして俺には会いたくないのかな。
そう言えば夜中にお皿を片付けた時、ライちゃんと話したかもしれない。
俺のこと、聞いただろうか。
でも、昨日のような胸のざわつきは無い。
俺には、レイちゃんは何があっても俺を嫌わないという確信があるからだ。
ピロン
『すみ、元気ー?休みのところ悪いんだけど、すごい発見したかも。すみの意見が欲しいんだけど、明日空いてる?』
朝ごはんを食べ終わったところで連絡が入る。相手は唯一の友達である碧だ。
俺は小さい頃から友達がなかなかできなくて、学生時代はいつもレイちゃんかライちゃんと一緒にいた。あまり交友関係を築いてこなかったせいで、今もどうやって他人と深い関係になればいいのかわからない。
大人になってライちゃんと離れた場所で生活するようになった頃から知り合いは増えたものの、学生の頃の癖が抜けずあまり踏み込みすぎない距離感を保ってしまう。
碧はおなじ研究所の研究職員で、上っ面の返事しかしない俺に根気強く毎日話しかけてくれた。
"ねー!菫と碧ってどっちも色の名前だよねぇ?"
"カラーコンビとして研究所、盛り上げてこー!"
"うわ、すみすみ天才。何でこんな早く解析できるの?"
彼は、今まで周りには居なかった種類の人間だった。軽い口調で、でも不躾な事は言わなくて、実はしっかりと相手が許せる一線を見極めて話しているのを感じる。
自分にはないものを持つ碧を尊敬し始めてから、一気に距離が縮まった。
友達って尊敬するところから始めるのかもな、と気付いた瞬間だった。
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