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日ノ本未だ一統ならず-北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。-
第632話 『開戦か交渉か』織田と同盟国と北条と(1577/8/16)
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天正六年閏七月二十五日(1577/8/16) 諫早城 <純正>
転生して15年。ようやくなんとか平和になってきたと思ったのに、上杉に北条、そしてまたスペインって。なんでみんな、戦争しに出るかなあ。
攻められないようにするために、国を強くして攻める、というのは理屈として分かる。わからなくも、ない。
俺だって、今もそうだけど、必死だった。
最初は百石か二百石レベルの土豪も土豪、超無名の西の海賊なんだもん。同盟相手の小佐々家はあったけど、必死だったよ。針尾氏を滅ぼし、松浦氏を滅ぼした。
その間に小佐々宗家を継いで沢森姓から小佐々姓に変わっている。
これ、針尾も松浦も、何度も向こうに攻められたからだからね。
誰が血なまぐさい戦争なんてやりたいもんか。
のんびりゆるニートでありたかったんだよ、俺は。でも時代が……って言えばかっこいいかも知らんけど、周りがそうさせてくんなかったんだよ。
最初に書いたけど、やらなきゃやられる、そんなんなんだよ。現代の常識なんて通用しない。
『暴力は止めよう。話せば分かる』
わかんねえじゃねえか!
大村・有馬とは同盟を結びつつも、友好関係を結べる勢力とは積極的に結んだ。波佐見衆しかり、志佐しかり。龍造寺に有馬・大村連合軍が負けてからは、状況が変わった。
敵対関係にあった深堀を攻めて降し、有馬と大村を屠った。あまりにも無理難題を言ってくるもんだから、いい加減に袂を分かったんだ。
その後は龍造寺だった。
大きくなれば間違いなくぶつかると思って、多久の後藤氏の親子げんかを利用して味方に組み入れた。もっと大きな大友氏とは友好関係を保ったままだ。
龍造寺にしても、こっちからは攻めていない。向こうからだ、その後、大友も、島津も、全部あっちからだ。
四国攻めも中国平定も同じ。毛利は同盟関係にあったけど、背信行為が明らかになったから、一戦を交える覚悟で外交によって服属させた。
全部そうなんだよ。自己中な理屈かもしれないけど、脅威を外交によって排除しようとして、できないから戦ってきたんだ。だから今、スペインとの戦争も、本当はやりたくない。
やったら少なからず人が死ぬ。幸いにして葛の峠の戦いで親戚を3人失ってからは、親しい人は死んでいない。これはもう奇跡というか僥倖だ。
でも腐れ縁の勝行は片眼と片腕を失った。
できればやりたくないんだよ。でも、やらないとやられるのは、残念だけど今も15年前も変わらない。変わったのは、やられにくくなった、という事実だけ。
台湾では被害にあったけど、お互いに理解を深めて今は協力関係にある。上杉にしても外交交渉をした。北条は成功したけど、スペインは警告したにもかかわらず攻めてきた。
勝ちはしたけど終戦、というか宣戦布告がないから戦争じゃないのか? まあそんな事はおいといても、停戦もしてない。
言ってみれば戦争状態が続いているようなもん。
すぐにビサヤに攻め入らなかったのは被害が大きかったから。それから島津も含めた国内事情もあったんだ。その後は同盟勢力の拡大と上杉戦。
十分に国力は回復したけど、まだ完全じゃない。
スペインは欧州戦線で全戦力をアジアに向けられないとしても、国内に十分な兵力を残した上で、万全の状態でフィリピンのスペイン勢力と当たりたいと考えていた。
俺の基本姿勢は専守防衛じゃなくて先守防衛。しかもスペインには戦う意思がない事を告げて、攻めてくるなら戦うと警告もした。その上で攻めてきたんだ。
もう先守の段階は終わった。
そして、5~7年後のつもりが早くなっただけだ。
■対スペイン会議
「織田、にござるか?」
義久の質問に宗麟が質問で応えた。
「さよう。こたびの戦は外へ向けての戦にござる。わが小佐々家中が盟主となっておる大同盟において、合議が要るのはご存じでしょう。日ノ本での戦ではないゆえ、是非は問われなかった。なれど同盟の大名の助力を仰ぐかどうか、という事にござる」
義久は純正と宗麟、両方を見ながら言う。
「要らぬのではありませぬか」
小佐々の中にあって、一つの国とも言える大国の国主、毛利輝元である。スペインとの戦争になり、国内が混乱してくれば、真っ先に独立を画策するかもしれないほどの国力である。
その大きさから、直茂などは未だに毛利転封減封論者であった。
「御屋形様がお話しの通り、陸海軍を主にして攻める戦にござろう? ここで日ノ本の外、いわば内輪の戦に織田家の勢をかり出すなど、体裁が悪うござらぬか?」
ううむ……確かにそうだ、といわんばかりのざわつきが起こる。長宗我部元親が発言する。
「いやいや、それこそ良いのではありませぬか? 織田は我が軍に倣って、水軍の備えを強めておると聞き及んでおります。旧式となっても大砲を備えた船にござれば、露払いほどには使えましょう」
宮内少輔どの、と輝元が制するも、なおも元親は続けた。
「露払いとは失礼いたしました。されど参戦して軍功あれば、さきの商いでしたかな、諍いが起こっていると聞きおよびましたが、五年ほど猶予を与えてもよろしいかと存じます」
「ふむ」
「されば織田方も、無碍に断る事もないでしょう。織田にも小佐々にも、利のある話かと存じます。もしくは北条の海からの備えに織田水軍を用いるのもよいかと存じます」
「それは難しかろう。織田水軍では北条水軍と五分の戦いはできぬ」
純正は元親に答えた。正確な情報はまだだが、北条の海軍が北方艦隊の報告の通り10隻で、砲門数も同じものが10隻なら、織田水軍に勝ち目はない。
「ただ、宮内少輔の言う事ももっともである。織田との軋轢は、できればないに越したことはない。外務省は参戦を要請することを前提に条件をつめよ」
「はは」
次回 第633話 『開戦か交渉か』主戦論と非戦論
転生して15年。ようやくなんとか平和になってきたと思ったのに、上杉に北条、そしてまたスペインって。なんでみんな、戦争しに出るかなあ。
攻められないようにするために、国を強くして攻める、というのは理屈として分かる。わからなくも、ない。
俺だって、今もそうだけど、必死だった。
最初は百石か二百石レベルの土豪も土豪、超無名の西の海賊なんだもん。同盟相手の小佐々家はあったけど、必死だったよ。針尾氏を滅ぼし、松浦氏を滅ぼした。
その間に小佐々宗家を継いで沢森姓から小佐々姓に変わっている。
これ、針尾も松浦も、何度も向こうに攻められたからだからね。
誰が血なまぐさい戦争なんてやりたいもんか。
のんびりゆるニートでありたかったんだよ、俺は。でも時代が……って言えばかっこいいかも知らんけど、周りがそうさせてくんなかったんだよ。
最初に書いたけど、やらなきゃやられる、そんなんなんだよ。現代の常識なんて通用しない。
『暴力は止めよう。話せば分かる』
わかんねえじゃねえか!
大村・有馬とは同盟を結びつつも、友好関係を結べる勢力とは積極的に結んだ。波佐見衆しかり、志佐しかり。龍造寺に有馬・大村連合軍が負けてからは、状況が変わった。
敵対関係にあった深堀を攻めて降し、有馬と大村を屠った。あまりにも無理難題を言ってくるもんだから、いい加減に袂を分かったんだ。
その後は龍造寺だった。
大きくなれば間違いなくぶつかると思って、多久の後藤氏の親子げんかを利用して味方に組み入れた。もっと大きな大友氏とは友好関係を保ったままだ。
龍造寺にしても、こっちからは攻めていない。向こうからだ、その後、大友も、島津も、全部あっちからだ。
四国攻めも中国平定も同じ。毛利は同盟関係にあったけど、背信行為が明らかになったから、一戦を交える覚悟で外交によって服属させた。
全部そうなんだよ。自己中な理屈かもしれないけど、脅威を外交によって排除しようとして、できないから戦ってきたんだ。だから今、スペインとの戦争も、本当はやりたくない。
やったら少なからず人が死ぬ。幸いにして葛の峠の戦いで親戚を3人失ってからは、親しい人は死んでいない。これはもう奇跡というか僥倖だ。
でも腐れ縁の勝行は片眼と片腕を失った。
できればやりたくないんだよ。でも、やらないとやられるのは、残念だけど今も15年前も変わらない。変わったのは、やられにくくなった、という事実だけ。
台湾では被害にあったけど、お互いに理解を深めて今は協力関係にある。上杉にしても外交交渉をした。北条は成功したけど、スペインは警告したにもかかわらず攻めてきた。
勝ちはしたけど終戦、というか宣戦布告がないから戦争じゃないのか? まあそんな事はおいといても、停戦もしてない。
言ってみれば戦争状態が続いているようなもん。
すぐにビサヤに攻め入らなかったのは被害が大きかったから。それから島津も含めた国内事情もあったんだ。その後は同盟勢力の拡大と上杉戦。
十分に国力は回復したけど、まだ完全じゃない。
スペインは欧州戦線で全戦力をアジアに向けられないとしても、国内に十分な兵力を残した上で、万全の状態でフィリピンのスペイン勢力と当たりたいと考えていた。
俺の基本姿勢は専守防衛じゃなくて先守防衛。しかもスペインには戦う意思がない事を告げて、攻めてくるなら戦うと警告もした。その上で攻めてきたんだ。
もう先守の段階は終わった。
そして、5~7年後のつもりが早くなっただけだ。
■対スペイン会議
「織田、にござるか?」
義久の質問に宗麟が質問で応えた。
「さよう。こたびの戦は外へ向けての戦にござる。わが小佐々家中が盟主となっておる大同盟において、合議が要るのはご存じでしょう。日ノ本での戦ではないゆえ、是非は問われなかった。なれど同盟の大名の助力を仰ぐかどうか、という事にござる」
義久は純正と宗麟、両方を見ながら言う。
「要らぬのではありませぬか」
小佐々の中にあって、一つの国とも言える大国の国主、毛利輝元である。スペインとの戦争になり、国内が混乱してくれば、真っ先に独立を画策するかもしれないほどの国力である。
その大きさから、直茂などは未だに毛利転封減封論者であった。
「御屋形様がお話しの通り、陸海軍を主にして攻める戦にござろう? ここで日ノ本の外、いわば内輪の戦に織田家の勢をかり出すなど、体裁が悪うござらぬか?」
ううむ……確かにそうだ、といわんばかりのざわつきが起こる。長宗我部元親が発言する。
「いやいや、それこそ良いのではありませぬか? 織田は我が軍に倣って、水軍の備えを強めておると聞き及んでおります。旧式となっても大砲を備えた船にござれば、露払いほどには使えましょう」
宮内少輔どの、と輝元が制するも、なおも元親は続けた。
「露払いとは失礼いたしました。されど参戦して軍功あれば、さきの商いでしたかな、諍いが起こっていると聞きおよびましたが、五年ほど猶予を与えてもよろしいかと存じます」
「ふむ」
「されば織田方も、無碍に断る事もないでしょう。織田にも小佐々にも、利のある話かと存じます。もしくは北条の海からの備えに織田水軍を用いるのもよいかと存じます」
「それは難しかろう。織田水軍では北条水軍と五分の戦いはできぬ」
純正は元親に答えた。正確な情報はまだだが、北条の海軍が北方艦隊の報告の通り10隻で、砲門数も同じものが10隻なら、織田水軍に勝ち目はない。
「ただ、宮内少輔の言う事ももっともである。織田との軋轢は、できればないに越したことはない。外務省は参戦を要請することを前提に条件をつめよ」
「はは」
次回 第633話 『開戦か交渉か』主戦論と非戦論
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