勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環

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第二部(アレク編)

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 シュナイプ伯爵夫人の授業を受ける3日間が過ぎ、今日はついに料理を教えてもらう初日。
 私の世話をしてくれるメイドから、エプロンを着けてもらい、厨房へ向かう。さて、どんな料理を教えてもらえるのかしら。

「今週は、ハンバーグを練習しましょう」

 そう言ってネイサンが取り出したのはお肉の塊と、タマネギ。

「まずはこれらを小さく刻みます」

「それを、小さく……」

「あ、もちろんお嬢様お一人では大変ですので、私も一緒にやります。私が切る様子をしっかりと見て、真似してみてください。危ないようでしたら注意をしたり、お嬢様のお手に触れるようなこともあるかと思いますが、お許しいただけますか?」

「えぇ、教えてもらうのですもの。当然だわ。気にしないでちょうだい」

「ありがとうございます」

「こちらこそ、教えてもらえて嬉しいわ。よろしくお願いね」

 というわけで早速、タマネギの皮を剥く作業から開始する。
 手で出来る作業なので、まだ問題はない。少し雑談をする余裕もある。

「今日は練習で、明後日お作りになられる分を夕食にお出しするということでしたよね? 週に二度も同じメニューを召し上がっていただくわけには参りませんので、練習でお作りになられた分は使用人の賄いで頂いてもよろしいでしょうか?」

「そうね、気遣いありがとう。みんなにも美味しく食べてもらえるように頑張るわね」

 タマネギを私が1つ剥いている間に、横で5つも剥いていたネイサン。たくさん使うのねと思っていたけれど、使用人達の賄いにするのであれば、たくさん必要よね。
 次に、タマネギをみじん切りにする工程に入る。私の手に馴染むように作られた小さい包丁を持つ。緊張する。

 まずはネイサンがみじん切りの仕方を見せてくれる。説明をしながらゆっくりと作業してくれたおかげで理屈は分かった。
 とにかく挑戦あるのみだ。

 タマネギの頭と根を切り落とす。たったそれだけなのに、ネイサンがアワアワしている。危なっかしいのだろう。

「先に言っておくわよ。もし料理中に私が私のせいで何らかの怪我をしても、ネイサンの責任ではないとすでにお父様には言ってあるから安心して」

「あ、ありがとうございます」

「あと何か私がおかしな動きをしたら遠慮せずに言ってちょうだい。私は真剣に料理を学びたいと思っているの」

「分かりました!」

 それからはとても積極的に教えてくれるようになったネイサン。背後から私の手に添えるように包丁を持ち、力を入れる方向を分かりやすく教えてくれる。
 長い時間がかかったが、ようやく一個分のみじん切りを終えた。ボウルの中に入っている私がみじん切りしたタマネギを見て、なんだか愛おしくなる。
 そして私がタマネギを見つめている間に、ネイサンが残りのタマネギをすばやくみじん切りにしてしまう。

 次はタマネギを炒める作業。
 私が1つ分のタマネギを炒める横で、ネイサンが5つ分のタマネギを炒めている。
 その後の工程も常に横で同時にやって見せてくれるので、とても分かりやすかった。

 そうして出来上がったハンバーグを二人で少しだけつまみ食いする。
 今まで食べたハンバーグの中で一番美味しい気がした。


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