勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環

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第二部(アレク編)

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 ※sideオーキッド

「アレキサンダーとモンティアナ嬢はよく話すような仲なのかな?」

「よく話す……というほどでは。アレキサンダー卿がお越しになった日には夕食をご一緒するので、皆で話す際に私も参加するというくらいでしょうか」

「夕食!?」

 また驚いてアレキサンダーの方を振り返ってしまう。

「妹君のご厚意で、訓練後に夕食をいただいております」

「アレキサンダー卿のために妹が毎週手料理を作っているので皆楽しみにしているのです」

「私のため!?」

「えっ、違うのですか?」

「アドリアーナ嬢が料理を好んでしておられるのかと」

「ですが、アレキサンダー卿がいらっしゃる日のために練習をして、当日振る舞ってくれているので、アレキサンダー卿のためだと思いますよ?」

「私の、ため……」

 感じ入っているアレキサンダーはとりあえず放っておいて、どうやらアレキサンダーとモンティアナ嬢がそういう仲に発展しそうにないことが分かってホッとする。

「妹のアドリアーナ嬢? は、どういう子なのか聞いてもいい?」

「はい。アドリアーナは、私と弟とは少し年が離れていて6歳なのですが、とても利発で、とても楽しい子です」

「6歳というとセレストと同じか」

「そうですね、第三王子殿下とは同級生になるかと」

「ということは、アレキサンダーの弟とも同い年ということになるね」

「はい」

「あっ、そうなのですね。面白い偶然ですね」

 弟妹が全員同い年というのは、そんなに不思議な偶然でもない。王妃の妊娠が公になると臣下達の夫人の妊娠が増えるのはよくあることだ。
 それを『面白い偶然ですね』と裏のなさそうな笑顔で言ってしまうところも、抜けていて好ましい。

「オーキッド、そろそろいいか」

「はい」

 アズール兄さんとフォーサイス公爵令嬢の方の話が終わったらしい。もっと長く話せばいいのに。どうせ、フォーサイス公爵令嬢と婚約するのだろうし。
 ちょうど良い年頃の令嬢の中に、公爵令嬢は一人しかいない。あとは侯爵令嬢が三人と、残りは伯爵家。
 後ろ盾になってもらうことを考えれば、フォーサイス公爵令嬢、もしくは宰相の実孫であるスタングロム侯爵令嬢の二択と考えていただろう。しかし、スタングロム侯爵家は侯爵夫人を領地に追いやり、宰相からどう思われているのかはっきりしないし、当の本人はただ一人、青色を身に着けていないこともあって選択肢から外した。

「モンティアナ嬢、それではまた」

「あ、あの第二王子殿下。あの……」

「ん?」

「えっと……」

 何か言いにくそうにしているけれど、どうしても言わなくては、というような必死さも感じる。モンティアナ嬢の顔に耳を近付けて小さい声でも聞こえるように、さらに手を耳に添える。

「何かな?」

「あの、私……殿下を、お慕いしております。それだけ、お伝えしておきたくて……」

 真っ赤な顔をして、蚊の鳴くような声でそう言うモンティアナ嬢に、心が撃ち抜かれたような思いがした。

「ありがとう」

 震える手を取って、その甲に唇を近付ける。真っ赤な顔がさらに耳まで赤くなって、まるで果実のようだと思った。
 こんなにも可愛らしい人が自分を想ってくれているなんて。理想を体現したようなモンティアナ嬢に、夢中になる予感しかしない。

「オーキッド」

「今行きます」

 感触を確かめるように、モンティアナ嬢の手を一度ぎゅっと握ってから離した。再び『ではまた』と声を掛けて背を向ける。
 次に会う時は、婚約を結んで婚約者として会いに行こう。その日がとても楽しみだ。



 ということがあって、満を辞しての侯爵家訪問の日。日程調整を行ない、いざ出発と馬車に乗り込もうとして、騎乗するアレキサンダーの姿を見つけた。

「アドリアーナ嬢目当てかな?」

「なっ……!?」

「やっぱりそうか。なるほどそれで」

 アズール兄さんの専属騎士になるのを渋っている理由はアドリアーナ嬢だったか。
 次期騎士団長であるアレキサンダーが、王太子となるであろうアズール兄さんの騎士にならない理由が、私にあるのではと面倒な勘繰りをされて鬱陶しいと思っていたものだが。
 兄さんの専属騎士になってしまえば、オスカー殿の訓練に毎週通うというのは難しくなるから、か。というか、オスカー殿の訓練自体、アドリアーナ嬢目当てで引き受けていたりして?

「アレキサンダー、邸内での護衛にも来るといい。アドリアーナ嬢に会えるかは分からないけどね」

「……はっ!」

 さっさとくっついて、さっさと兄さんの騎士になってくれ。私も許されるなら今すぐにでも王位継承権を放棄して臣籍降下したいものだ。

 モンティアナ嬢にとって、私の隣が最高の環境になるようにしなければ。
 そう考えると、生きているのが楽しいと初めて感じた。
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