90 / 103
第三部(貴族学校入学編)
24
しおりを挟む
※sideユウカ
ブラウン男爵令息を探して、食堂で昼食をとっているところに話しかけてパートナーを組みましょうと言ったのだが、断られてしまった。
「申し訳ないけど、もう他の令嬢と組むことにしたんだ」
「でも最初は私を望んでくれていたんだし、その人には悪いけれど断ってくれたら……」
「いや、そういう不誠実なことはしたくないから」
は? 私がまだ返事してないのに他の女とパートナー組むことは不誠実なじゃないわけ?
私がイラッとした顔をするとブラウン男爵令息は『そういうことだから』と言ってそそくさとどこかへ行ってしまった。
でもジェイデンの言う通り、みんな焦ってパートナーを組み始める頃なんだと思い直し、ブラウン男爵令息のことは忘れて他の人も探すことにした。
少し見渡しただけで、私をパートナーにと誘ってきた人が何人か食堂にいることが分かった。何とかなりそうだと少しホッとする。
「あの、」
「あ、ユウカ嬢、パートナーのことだったら僕ももう決まったから……」
「えっ、そんな」
「じゃあ!」
今度は逃げるように去って行ってしまった。そのあとも一人声を掛けたけれど、素気無く避けられてしまった。
「どういうこと……」
そう口から気持ちが漏れ出た途端に閃いた。これはきっとアドリアーナの仕業だ。私が誰ともパートナーを組めないように嫌がらせをしているんだ。
なーんだ、全然悪役っぽいことしてくれないと思ったら、こんな陰険なやり口で仕掛けてきたのね。そうじゃなきゃこの私にパートナーができないわけないもの。
そうと分かればもうパートナーを探すのなんてやめるわ。パートナーがいない場合はどうするのか先生に聞いて、あとはゲーム通りドレスを貸してもらわなきゃ。ヒロインらしいスミレ色のドレスをね。
「パートナーが決まっていなくても大丈夫です。一年生のダンスパーティーは謂わばデビュタントの予行演習ですから。当日にパートナーがいない生徒達で組んで入場してもらいます。ただ、一年後にはちゃんとパートナーを見つけられる程度には関係を作っておきましょうね。まぁデビュタントの際は今回のように一年生だけで組むのではなく、貴族であればどの男性でも構いませんから大丈夫だと思いますが」
「はい、分かりました。あとダンスパーティーで着られるようなドレスも持ってなくて」
「学校の貸し出し品がありますよ。今日の放課後に見に行きますか? 貸し出しは先約順なので早めに……と言ってももう遅めなのですが」
「そうなんですね。じゃあ今日の放課後にお願いします」
先生から向けられる同情的な視線にむかついた。私だってアドリアーナの妨害が無ければパートナーを組めないなんてことなかったはずだし。大体、こうやってイジメられるからヒロインは攻略対象から大切に思われるんだから。これでいいのよ。これがヒロインとしての正解なの。
そして放課後。先生に声を掛けて、ドレスが保管されている部屋に連れて行ってもらった。パッと見ても私が持っている中で一番上等なドレスより質が良いものだと分かる。学校の貸し出しするドレスでこれって……どんだけうちは貧乏なのよ。
「綺麗でしょう。今年度から全て新しいドレスに入れ替わっているんですよ。あなたのサイズに合うものは……この辺りかしら」
今年度から新品になったなんて、やっぱり私がヒロインだからよね。私が学校のドレスをレンタルすることはゲーム通りの行動だもん。私のための新品のドレスなんだわ。
「……え? これで全部ですか?」
「えぇ、そうよ?」
「私に似合うドレスが無いわ……」
初めてセレストと踊ったスチルのドレスが無い。私の瞳と同じスミレ色の綺麗なドレス。あれじゃないとゲーム通りにならないのに。
「そんなことありませんよ。あなたには……ほら、これなんてどうかしら? とても華やかで綺麗ですよ?」
「綺麗は綺麗ですけど、私らしくないというか」
「そう言わずに。あなたなら何を着ても似合うわ」
「それは……そうだけど……」
結局、先生に勧められたドレスを借りることになった。当日またここへ来れば、その日は特別にメイクまでしてくれるらしい。私のように侍女もいないしドレスも無い生徒のための制度だそうだ。ヒロインがこういう役どころだから仕方ないけれど、正直言って恥ずかしい。この私がこんな思いをするなんて……6歳から我慢して、ようやくゲームがスタートしたのに、全然楽しくない。
ダンスパーティーではアドリアーナにギャフンと言わせられるよね。そのあとセレストと踊って、それからは楽しくなるわ。もう少しだけ我慢すればいい。もう少しだけ。
ブラウン男爵令息を探して、食堂で昼食をとっているところに話しかけてパートナーを組みましょうと言ったのだが、断られてしまった。
「申し訳ないけど、もう他の令嬢と組むことにしたんだ」
「でも最初は私を望んでくれていたんだし、その人には悪いけれど断ってくれたら……」
「いや、そういう不誠実なことはしたくないから」
は? 私がまだ返事してないのに他の女とパートナー組むことは不誠実なじゃないわけ?
私がイラッとした顔をするとブラウン男爵令息は『そういうことだから』と言ってそそくさとどこかへ行ってしまった。
でもジェイデンの言う通り、みんな焦ってパートナーを組み始める頃なんだと思い直し、ブラウン男爵令息のことは忘れて他の人も探すことにした。
少し見渡しただけで、私をパートナーにと誘ってきた人が何人か食堂にいることが分かった。何とかなりそうだと少しホッとする。
「あの、」
「あ、ユウカ嬢、パートナーのことだったら僕ももう決まったから……」
「えっ、そんな」
「じゃあ!」
今度は逃げるように去って行ってしまった。そのあとも一人声を掛けたけれど、素気無く避けられてしまった。
「どういうこと……」
そう口から気持ちが漏れ出た途端に閃いた。これはきっとアドリアーナの仕業だ。私が誰ともパートナーを組めないように嫌がらせをしているんだ。
なーんだ、全然悪役っぽいことしてくれないと思ったら、こんな陰険なやり口で仕掛けてきたのね。そうじゃなきゃこの私にパートナーができないわけないもの。
そうと分かればもうパートナーを探すのなんてやめるわ。パートナーがいない場合はどうするのか先生に聞いて、あとはゲーム通りドレスを貸してもらわなきゃ。ヒロインらしいスミレ色のドレスをね。
「パートナーが決まっていなくても大丈夫です。一年生のダンスパーティーは謂わばデビュタントの予行演習ですから。当日にパートナーがいない生徒達で組んで入場してもらいます。ただ、一年後にはちゃんとパートナーを見つけられる程度には関係を作っておきましょうね。まぁデビュタントの際は今回のように一年生だけで組むのではなく、貴族であればどの男性でも構いませんから大丈夫だと思いますが」
「はい、分かりました。あとダンスパーティーで着られるようなドレスも持ってなくて」
「学校の貸し出し品がありますよ。今日の放課後に見に行きますか? 貸し出しは先約順なので早めに……と言ってももう遅めなのですが」
「そうなんですね。じゃあ今日の放課後にお願いします」
先生から向けられる同情的な視線にむかついた。私だってアドリアーナの妨害が無ければパートナーを組めないなんてことなかったはずだし。大体、こうやってイジメられるからヒロインは攻略対象から大切に思われるんだから。これでいいのよ。これがヒロインとしての正解なの。
そして放課後。先生に声を掛けて、ドレスが保管されている部屋に連れて行ってもらった。パッと見ても私が持っている中で一番上等なドレスより質が良いものだと分かる。学校の貸し出しするドレスでこれって……どんだけうちは貧乏なのよ。
「綺麗でしょう。今年度から全て新しいドレスに入れ替わっているんですよ。あなたのサイズに合うものは……この辺りかしら」
今年度から新品になったなんて、やっぱり私がヒロインだからよね。私が学校のドレスをレンタルすることはゲーム通りの行動だもん。私のための新品のドレスなんだわ。
「……え? これで全部ですか?」
「えぇ、そうよ?」
「私に似合うドレスが無いわ……」
初めてセレストと踊ったスチルのドレスが無い。私の瞳と同じスミレ色の綺麗なドレス。あれじゃないとゲーム通りにならないのに。
「そんなことありませんよ。あなたには……ほら、これなんてどうかしら? とても華やかで綺麗ですよ?」
「綺麗は綺麗ですけど、私らしくないというか」
「そう言わずに。あなたなら何を着ても似合うわ」
「それは……そうだけど……」
結局、先生に勧められたドレスを借りることになった。当日またここへ来れば、その日は特別にメイクまでしてくれるらしい。私のように侍女もいないしドレスも無い生徒のための制度だそうだ。ヒロインがこういう役どころだから仕方ないけれど、正直言って恥ずかしい。この私がこんな思いをするなんて……6歳から我慢して、ようやくゲームがスタートしたのに、全然楽しくない。
ダンスパーティーではアドリアーナにギャフンと言わせられるよね。そのあとセレストと踊って、それからは楽しくなるわ。もう少しだけ我慢すればいい。もう少しだけ。
625
あなたにおすすめの小説
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
八年間の恋を捨てて結婚します
abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。
無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。
そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。
彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。
八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。
なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。
正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。
「今度はそうやって気を引くつもりか!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる