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場所なんて関係ない
しおりを挟む「ほう、それで俺とは結婚できないと思った……という事か」
そう言った皇会長の表情は、ちょうど太陽の光が当たってよく見えない。
目の前にはスーパーの看板が見える。店内の中に入ってまで話さないだろうから、この話はここで終わる。
人通りもチラホラと見えて来たし、人の目も気になってきた。
それにさっきから、皇会長のかっこよさに見惚れて、周りの目が僕たちに集まっている。
僕が泣いてしまったせいで止めた足を動かしながら、皇会長に根掘り葉掘り言わされた。
『結婚できない』と言った僕の発言から、何を不安がっているのかまで。
結局のところ、僕はベータで自分に自信がないだけ。
それで皇会長にまで迷惑をかけてしまった。
しょんぼりと肩を落とす僕の左手に、何かが嵌め込まれた感覚がした。
目を映すと、そこには薬指に嵌め込まれた指輪がある。シルバーのシンプルな指輪だ。
きらりと光るそれを見て、僕は度肝を抜いた。
「え、ど、え、なっ、なんで、」
ぱくぱくと口を開くも、言葉が上手く出てこない。
「雷と俺は結婚する。これはそれの婚約指輪だ。本当は綺麗な夕焼けでも見ながらプロポーズするつもりだったんだが、確実な証があれば雷も安心するだろう?」
「けっ、結婚できる、の」
「出来るさ。絶対に。子供の頃に会った時から雷と生涯を共にすると決めていたんだからな」
状況に頭が追いつかない。
真っ白になった頭が意味を理解するまでぽっかりと口を開けたまま、僕は立ち止まっていた。
シルバーの指輪が嵌められた手を皇会長が持ち上げる。その動作は非常にゆっくりで、道の真ん中でひざまづいた皇会長がぼうっと突っ立ったままの僕を見上げた。
王子様のようなその姿に、僕の目は皇会長に釘付けになった。そして、
「俺は雷を番にする。番届も、婚姻届も一緒に出そう。そして名実共に、夫夫になろう。雷の不安は全部俺が取り払ってやる。泣いたら何度でも拭って、止まるまで抱き締める。雷を寂しくさせたりしないと誓おう。俺には雷だけでいい。雷がいいんだ。お前の考える他の誰かなんて、俺はいらない」
真剣に見つめる皇会長からプロポーズされた。
開いた口が塞がらない。驚いて開いた目にじわりとまた涙が溜まってしまった。
僕は何回泣けば済むのだろう。でもこれは、嬉し涙だ。
それは王子様というよりも、皇会長の中では既に決定事項でそれを告げる王様の方が近かったけど。
でも、言い切ってくれたことが、何よりも嬉しかった。水の底に閉じこもっていた僕を引っ張り上げて連れ出してくれた皇会長が、頼もしくて、力強くて。
その言葉に押されて、ゆらゆら揺れる水面に久しぶりに顔を出した気がした。息が軽い。上手く吸えなかった酸素が、肺いっぱいに澄み渡っていく。
気がつけば僕の口角は上がり、広げられた腕の中に、自らの意思で飛び込んでいた。
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光も拓にも…幸せになってと願います(ToT)
ミラクル起きなると良いなぁ
雷くんなんだか上手く丸め込まれてません?笑
そんなところが可愛くて仕方がないんでしょうけど