9 / 61
あの時の美少年は今
なんだか懐かしい夢を見た。遠い昔の朧げな記憶を手繰り寄せて引っ張って、霧を振り払う。それで漸くちゃんと思い出せた、そんな夢。
意識が浮上して瞼が薄く開く。
「雷、目が覚めたか。急に倒れるから驚いた。気分はどうだ?」
心配そうな顔をした皇会長が視界に入る。思い出した。僕キャパオーバーで倒れたんだ。
心配かけてごめんなさい。
そう謝ろうと思い口を開いたけど、出てきた言葉は謝罪じゃなかった。
「また、会えた…やく、そく……守ってくれたんだ。良かったぁ………」
皇会長が一瞬目を見開いて、それからあの時と同じ満面の笑みで笑ってくれた。
「あぁ、大事な約束だからな。守ったよ。俺も守りたいって思ったからな。雷の笑顔を」
今までで一番嬉しくて、僕も笑顔で応えた。
皇会長の指が頬を優しく拭う。
いつの間にか涙が流れていたみたいだ。
「これからは俺に雷の笑顔を守らせてくれ。………いいか?」
強い意志を感じる瞳で、真剣な表情をして僕に許しを請う。そこには親衛隊から守るだけじゃないものをなんとなく感じた。
無理やり押し通してもいいのに、ちゃんと聞いてくれる皇会長はやっぱり優しい。
「うん!僕を守ってください、皇会長」
こんな素敵な人に守って貰えるなんて、どんな幸運だろうか。申し訳ないなんて気持ちはどこかに吹き飛んで、この人に守られたいって浅ましくも思う。
____僕だけの特権だったらいいのにな
そんな気持ちが芽生えてちょっと胸がモヤモヤする。原因は分からないけど、僕って欲張りだったんだなぁ。そんな風に思っていると、
「ちょっと二人の世界に入らないでくれる!?僕たちもいるよ!ここに!雷くん目が覚めて良かった~。
ってそんなことよりも!………君達、一体どういう関係なの?全部吐くまで問い詰めるよ。僕に隠し事は許さないからねっ!」
笑顔から一転。天使のような美少年が黒いものを携えて目が笑ってない笑顔になった。
「私も気になりますね。会長の笑顔を初めて見ました」
「人様の恋愛なんぞ興味ねぇが、俺も聞きたい」
眼鏡の彼とムキムキの彼も頷いて同意した。
「あのぉ…私も聞きたいです」
小さな声がムキムキの彼の後ろから聞こえたと思ったら目を前髪で覆った細い身体をした人がスッと出て来た。
まだいたのっ!?
と一瞬思ったが、思えば生徒会は5人だったなと一人勝手に納得する。
平凡な僕の目の前に生徒会役員が全員揃ってる。なんてことっ!
平凡で平和だった日々が、ガラガラと崩れる音が聞こえる。不穏な音とは反対に、恋の予感とこれからの日常に胸は期待に膨らんでいた。
あなたにおすすめの小説
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
毒を孕んだ身代わりオメガ〜復讐の代償は皇帝の寵愛だった〜
ひなた翠
BL
「兄様の代わりに愛されるのなら、それでいい」
最愛の妻セレンを亡くし、再び暴君へと変貌した皇帝ヴァレン。その荒んだ心を鎮めるため、家臣団が下した残酷な決断――それは、亡き妻と生き写しの弟・リアンを「身代わり」として差し出すことだった。
生まれつき弱視なオメガのリアンは、幼い頃から密かにヴァレンに恋心を抱いていた。兄の香水を纏い、兄の振る舞いを装い、冷徹な皇帝の褥へと向かうリアン。正体が露見すれば死。嘘を重ねるたびに心は千切れるが、その激しい抱擁に、リアンは歪んだ悦びを見出していく。
だが、夜明けとともにヴァレンが放ったのは、氷のように冷たい一言だった。
「お前……誰だ」
身代わりから始まる、狂おしくも切ない執着愛の幕が上がる。
愛を感じないのに絶対に別れたくないイケメン俳優VS釣り合わないので絶対に別れたい平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
平凡顔・ヒモ・家事能力無しの黒は、恋人であるイケメン俳優の九条迅と別れたがっている。それは周りから釣り合ってないと言われたり、お前の事を愛してない人間なんて止めておけと忠告されたからだ。だが何度黒が別れようとしても、迅は首を縦に振らない。
迅の弟である疾風は、兄は黒の事を特別扱いしてると言うが――。黒は果たして迅と別れることが出来るのか!?
蒼い月の番
雪兎
BL
Ωであることを隠して生きる大学生・橘透。
ある日、同じゼミの代表であるα・鷹宮蓮に体調の異変を見抜かれてしまう。
本能が引き寄せ合う“番候補”の関係。
けれど透は、運命に縛られる人生を選びたくなかった。
「番になる前に、恋人から始めたい」
支配ではなく、選び合う未来を目指す二人の、やさしいオメガバースBL。
αとβじゃ番えない
庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。
愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。