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1章 なんだかんだで城へ

お仕事覚えましょう。~ラン・アルテント~

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「ん...」

 あぁ、朝か。てか、ここ何処?
 …あ、そっか。僕達、お城にいるんだっけ。

「起きろー朝だぞー」

 とりあえず2人起こしとくか。

「んー!はぁ、よく寝たぁー!」

「ふぁ~、もう朝ぁ?」

「今日からお城でのお仕事始まるんだから。寝坊なんて出来ないだろ?」

「そうだな」

「うん」

「よし!支度するか!」

 ということで、僕達は支度を始めた。まず、顔を洗う。ちなみに、この部屋、メッチャ広い。僕達の家の半分くらいある。お風呂も洗面もトイレもキッチンも、全部部屋に備え付けられている。スゴい。
 顔を洗ったら、髪を結う。レンがロンの髪を、僕がロンの髪を結う。結い終わったら、ロンに結ってもらう。その間に、レンに朝食の準備をしてもらう。
 レンが朝食の準備をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。僕はまだロンに髪を結ってもらっていた。

「レン、出れる?」

「大丈夫だよ。結い終わったら、火見てて」

と言って、ドアに向かっていった。
 ロンに髪を結ってもらい、「ありがと」と言って、火を見に行く。ベーコンが焼かれていた。

「ロン、冷蔵庫の中、何入ってるか見てくれる?」

「いいよー。えっとねー、色々入ってる!野菜、肉、魚、調味料...必要なものは全部揃ってるって感じ!」

 凄いな、城って…
 とか考えてたら、レンが戻ってきた。エルさんもいる。何故?

「エルさん、おはようございます。」

「おはよう。みんな早いね。あれ?朝食作ってたの?」

「?はい」

「朝食のお誘いに来たんだけど...要らなかったかな?」

 え、朝食って自分達で作らないんだ...。生活の違いか...

「なんかすみません...」

「いや、自分で作ってる人もいるからね。別に謝らなくても良いんだよ」

 ええ人や、エルさん。
 あ、そうだ。

「エルさんも一緒に食べませんか?」

「え、いいの?」

『はい!』

「じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 という訳で、一緒に朝食食べました。


 「えー、それでは、これから仕事を覚えてもらいます。なるべく早く覚えてね」

 いよいよ来た!初仕事!

『はい!』

「よし、いい返事だ。まず、君たちがする仕事について、軽く説明しとくね。君たちがするのは、王子様方の身の回りのこと全般です。」


   ……


「あの、聞き間違えましたかね...?今、王子様方の身の回りのこと全般って聞こえたんですけど…」

「前にやってた人はどうなるんです?」

「新人にそれは...流石に大仕事過ぎないですかねぇー?」

「聞き間違えてないよ?これは、王子様方からの御提案だから。今までは私がやってたけど、君たちの方が適任でしょ?」

『適任じゃないです!』

「まぁ、もう変更とか出来ないんだけど...あと、王子様方から、それぞれ誰に付いてほしいとかの要望があったから伝えとくね。イレーク王子にはラン、クラーク王子にはレン、タナーク王子にはロン。変更は受け付けないそうです。」

「はぁ...」

「そうですか...」

「頑張りますー...」

 もう、何も言いませんよ。

「早速、ランから仕事を覚えてもらおうと思う。」

「あ、はい!」

「レンとロンには、ここの廊下の掃除をお願いします。道具はそこにあるからね」

『分かりました』

「じゃあラン、行こうか」

「はい、頑張ります!」


 あぁー…、来てしまった…イレーク王子の部屋の前。
   コンコン

「失礼します、イレーク王子様」

 あ!エルさんもう入ってる!

「し、失礼します!」

 いかんいかん、遅れるわけには...

「あ、ラン!エルも、おはよう!」

 う、イケメンの爽やかな笑顔は、ある意味太陽よりも眩しい...!

「おはようございます」

「お、おはようございます!」

 やられる...イケメンオーラにやられる...

「ラン、部屋に入る時は、これから1人になると思うから、『失礼します』じゃなくて、『失礼します、イレーク王子様』って言うんだよ」

「あ、そっか!すみません!」

「いいよ、今日は私もいたし。次から気をつけてね」

「はい!」


 それから、色んなことを教えてもらった。ベッドシーツの変え方、ベッドの整え方、紅茶の入れ方、などなど...覚えることは沢山だけど、それだけやり甲斐もあった。


「…これで全部かな?それじゃ、戻ろうか」

「はい!ありがとうございました!」

 勢いよく頭を下げた。エルさんには、感謝しかない。

「それでは、失礼します、イレーク王子様」

「失礼します、イレーク王子様」

「さっき言ったこと、ちゃんと出来てる。偉い偉い」

 頭ポンポンされた。嬉しいな。

「なぁ、エル」

 と、エルさんに声をかけたのは、何故か不機嫌そうなイレーク王子だった。

「はい、何でしょう?」

「ランを置いていくことは出来ないのか?」

 え?僕?

「申し訳ありませんが、ランにはこれから、廊下の掃除を兄弟と交代でしてもらわなくてはなりません」

「そうか...無理を言って悪かった。」

 寂しそうにこうべを垂れる王子を見て、何かを言わなくてはいけない気がした。

「あ、あの!」

 ひゃあ!2人が同時に見てきた!
 でも、ここで引いちゃいけない。

「イレーク王子様、また、お誘いして頂けませんか?その時は、一緒にお話しましょう」

 すると、王子の顔がどんどん明るくなり、最後には笑顔になって、

「あぁ!その時は頼む!」

 と、元気に言ってくれた。
 良かったー、もう寂しそうな顔じゃないや。

「さぁ、そろそろ御暇しましょうか」

 ハッ!そうだった!これからレンとロンも仕事を覚えないといけないんだった!

「失礼します!イレーク王子様」

「あぁ、また」

 その時のイレーク王子の笑顔にドキッとしたのは、内緒だ。
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