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2章 恋ってこんなに難しい。
認めたくない気持ちのこと1~レン・アルテント~
しおりを挟む「あ~、遅刻だ~」
と言いつつ、足取りは重く、亀さんペースでクリーク王子の部屋へと向かった。
正直、会いたくない。
俺があの王子のことを好きかもしれないと気付いたからっていうのもあるけど、その気持ちを認めたくないからってのが、一番の理由。あ~、サボりたい。
とか思ってたら、いつの間にか部屋の前に立っていた。もう逃げられないってことか?
「はぁ」
思わず溜息が漏れる。
嫌だなぁー。でも仕事しないとなぁー。
よし!
「失礼します、クリーク王子様」
ウジウジなんて、俺らしくない!と思い、部屋に入った。ぱっとこっちを見るクリーク王子。
ドキッ…
うぅー…自分の部屋戻りたい…。
そんな俺に向かって王子は、
「遅れてきたのに、謝罪もなしか?」
と言ってきた。言葉とは裏腹に、顔はちょー悲しそう。前にエルさんが言っていた。彼は素直になれないと。
多分王子は、俺が遅れてきたから心配して、「どうした?」って聞きたかったんだろうな。それで素直になれずにあんな態度で俺に言ってきたって感じかな?
それにしても、王子っていっつも言葉と表情が合ってないから笑えるんだよなー…って!なんで王子のこと考えてんの!?俺!
「す、すみません。先輩方に御挨拶をしていまして…そしたら、あっという間に時間が過ぎてまして…」
「そんな暇があったら仕事しろ」
あ、あの表情は「そうだったのか。大変だったな」って言いたかったんだろうな。
「心配してくださり、ありがとうございます。」
自分の言った言葉に返される言葉じゃないからか、すんごく驚いた顔をしている。そして、みるみるうちに悲しそうな顔に変わっていった。
「なんで……俺、酷いこと言ったんだぞ?言いたくもないことを言って、人傷つけて…最低だ…」
なるほど、そう思っていたのか。人に感謝をしたくても、その口からは嫌味が出てしまう。労いの言葉を掛けたくても、人をけなしてしまう。この人は、そのことに1人で悩んで、苦しんでいたんだ。
「この口のせいで、みんなが離れていく…使用人も、大臣たちも…城のみんな、俺を避ける……レンも、そうなんだろ…?今は良くても、いつか……いつか、耐えられなく、なるんだろ?」
…なんか、イラッときた。
離れる?俺が?俺がみんなと同じなんじゃないのかって?
「ふざけんな…」
声に出ていた。でも、もう止まらない。
「あんた達が俺らを無理矢理連れてきたんだろ!離れる?出来るわけねーじゃんか!それになぁ、クリーク王子は意外とわかりやすいからな!気付いてないかもだけど、言葉と表情、あってねーんだもん!俺が毎日、どんだけ笑いを堪えてきたか…って、そんなん今はどーでもいい!とにかく!俺は離れねー!『離れてーっ!』って言われても、まとわりついてやる!覚悟しろ!」
…
あれ?これって…プロポーズじゃね?
だって、要約すると、「一生一緒にいます!」って言ってるようなもんだよな?
好きって言ってるようなもんだよな!?
ポカーンとしてた王子の顔は、だんだんと喜びの表情へと変わっていった。そして、言い訳を考えている俺に抱き着いてきた。
「なっ!?ちょ、クリーク王子!?」
「嬉しい……今まで、俺の本当に言いたいこと、分かってくれる人なんて、いなかった、から…」
「エ、エルさんがいるじゃ…」
「エルは、俺が本当はこんなこと、言いたくないんだろうなーって、そこは、分かってくれた。でも、俺の言いたいことまでは、分からなかった…から、レンが…初めて…」
そう言って更に抱きしめる力を強めた。
と、何かに気付いたクリーク王子が、抱きしめるのをやめ、俺を見て聞いてきた。
「さっきの…」
「?」
「さっきのは、俺のこと、その…好き…って…こと?」
「!!いや、その、確かに嫌いではないですけど…ってか、嫌いなんてないですけど…むしろ、好きに近いと言うか、言わないというか…」
俺の曖昧な返答に、王子は不安そうな顔をした。
「はっきり、してほしい」
うっ…
俺、そういう切ない表情に弱いんだよなぁ。
もう、言うしかないか。
「好き、ですよ…王子のこと…」
恥ずかしさから声が小さくなったけど、聞こえたらしい。言い終わった途端、また抱きしめられた。
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