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2章 恋ってこんなに難しい。

★三男の発情期2~タナーク・エリオント~

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 好きな人が泣いてる時、どういった行動をするのが正解なんだろう?分からなくて、でも、ほっとけなくて…
 僕はロンを引き寄せて、頭を撫でた。
 幼い頃、僕が泣いていた時に、母がしてくれたこと。多分、間違ってないと思うけど…

「え…!?タナーク、王子…!?」

 驚いた声を上げるロンを無視して、頭を撫で続ける。

「ちょ、王子…やめ、て…」

「やだ」

「やめて……もう…そんな、優し、く…され、たら…」

「我慢しなくていい」

「でも…っ!」

「いいから。思いっきり泣いた方が、すっきりするから」

「もう…もう……っ!」

 ついに耐えられなくなったのか、ロンが静かに泣き始めた。俺は頭を撫で続けた。






「お恥ずかしい、ところを…お見せ、しま、した…」

 ロンはそう言って頬を赤らめた。

「別にいい」

 そう言って頬に口付けをした。

「なっ…!」

 ロンは慌てて頬に手を当てた。そして頬を膨らませて、仕返しと言わんばかりに僕の頬に口付けた。
 嬉しいけどなぁ…

「どうせなら、口がよかったかな」

「うぇっ!口…!?」

「そう、口。唇にキスしてくれたら僕、嬉しいんだけどなぁー」

 ロンの顔がみるみる赤くなっていく。

「なに、言って…!」

「前は僕からだったから、次はロンからして欲しいなーって」

「今、のは…仕返し、であって…」

「僕には御褒美でしかないよ?」

「なっ…!」

「ほらほら、はーやーくー」

 僕はロンに顔を近づけて、目を瞑った。
 ロンはため息をついて、僕の唇にそっと自分の唇を重ねた。

「ほら……しま、したよ…」

 えぇー…

「僕の求めてるのとちがーう」

「ちゃんと…唇に…」

「僕こんなぬるいキスなんてしてませーん」

「なっ…!」

 ぷるぷると肩を震わせるロンの頬に手を添える。
 ロンの身体がビクッとはねる。
 さらに頬をそっと撫でると、唇を噛み、快楽に必死に耐えている。

「唇噛んじゃだーめ」

 僕はロンの頬を撫でていた手を唇まで持っていき、人差し指でちょんと触れる。と、噛んでいた唇が元に戻る。

「ちょ…タナーク、王子…!」

「なに?気持ちいいの?」

 恥ずかしそうに頷くロンを愛しく思いながらも、僕は究極の選択を提示する。

「ねぇ、このままほっぺた撫でられていっちゃうのと、僕にキスして、その先もして、一緒に気持ちよくなっていっちゃうのと、どっちがいい?」

「そん、なの…どっちも…」

「どっちも嫌?別にその答えでもいいけど…その場合、ほっぺた撫で続けることになるからね?当然、僕とも何もしない。君が気持ちよくなって終わり。それも踏まえてもう一度聞く。どっちがいい?」

 ロンは今日一番の真っ赤な顔を見せ、そして観念したようにがっくりと項垂れ、意を決したように「目、閉じて…」と僕に要求した。僕が目を閉じると、唇にそっと触れるロンの唇。僕が少し口を開けると、おそるおそるといった感じで、僕の口の中にロンの舌が入ってきた。
 入ってもどうしたらいいのか分からないようで、動きが停止した。

 しょうがない。この様子じゃ、初めてなんだろうな。まぁ、それだけでも嬉しい。
 僕は舌と上唇の間の少しの隙間から、ロンの口に舌を滑らせた。

「ふぁ…っ!へ…!?はっ、はぁっ…」

 驚きつつも抵抗しないのは、気持ちいいからだろう。僕は容赦なく口内を舐めまわす。

「ふぁ…はっ、あっ……んぁ…」

 唇の隙間から漏れる甘い吐息と声が、僕を発情させる。
 顔を離すと、とろんとした目で見つめられた。

「そんな顔、他の男の前でしちゃ、だめだからね」

 僕の忠告が分かっていないようで、首を傾げられた。
 でもそれより…

「ロン…僕、もう限界なんだけど…もっと、ロンに触れたい。ねぇ、いい?」

 僕が問うと、ロンは恥ずかしそうに顔を下に伏せ、こくんと頷いた。
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