平凡な三つ子は平凡に暮らす...はずだった

月兎

文字の大きさ
43 / 75
3章 騒動

救世主登場

しおりを挟む
 レインは、ドアの向こうの人物を見るなり目を見開いた。

「あ、あなたが…何故、ここに…?」

 レインがなかなか戻ってこないことに痺れを切らした大臣の1人が、声を荒げた。

「おいっ!早く戻ってこい!」

 大臣の声にハッと我に返ったレインは、訪ねてきた人物達を部屋に招き入れた。

「レイン!何勝手なことして………っ!」

 その人物達の姿を見た途端、大臣たちは口を開けたまま固まった。
 そして、震える声でその人物達の名を口にする。

「こ、国王様!?王子様方まで……!」

「なぜ、ここに………?今日は、外交のはずでは………」

 大臣の質問に、国王であるエリオリック・エルオリントが、緩い口調で答えた。

「いやーね、言い争う声が廊下まで聞こえていたからね。ほら、ここって防音じゃないでしょ?声を荒らげることもないし。そんなところから大声が聞こえてきたら、気になっちゃうよねー。それで、みんなで覗いてみたってわけだよ。それで………」

 一度言葉を切ると、エリオリックは目をすっと細め、声を固くして言った。

「君たちは、いったい何を話していたのかね?」

 その声には圧があり、逆らうことを許さないとでも言うような雰囲気を帯びていた。
 エリオリックはさらに言葉を続けた。

「大体は把握しているけれど……もう一度、君たちの口から聞きたいと思うのだよ。ねぇ、大臣殿?」

 国王と王子達に睨まれた大臣たちは、身体を震わせた。
 しばらくすると、大臣の1人が、いきなり笑いだした。
 そして、吹っ切れたかのように早口に話し始めた。

「やっていたことですか?そりゃあもちろん、過去と同じことですよ。レインとその子供をこき使って、奴隷にするんです!自分の都合のいい時に発情させて、また働かせる…我ながらいい案だと思うんですがねぇ!国王様!」

 大臣の言葉に、王子達は顔を顰め、レイン、ラン、レン、ロンの4人は身体を震わせた。
 それにもかまわず、大臣はさらに続けた。

「我々を罰するおつもりですか?しかし!我々がそれを言った証拠がない!罰しようとしても証拠不十分!我々は罰せられることがない!残念でしたねぇ?国王様。我々は自由で………」

「それは、どうでしょうか?」

 大臣の言葉を遮ったのは、ルオネットだった。
 彼は後ろを振り返ると、「リン、あれを出してくれ」と言った。
 リンはその言葉の意味を素早く察し、服のポケットに入れていたあるものをルオネットに手渡した。
 ルオネットはそれを持ってエリオリックの前まで行き、差し出した。

 エリオリックが受け取ったそれは、録音機だった。
 エリオリックは驚いてルオネットに聞いた。

「ルオネット……これ、いつから……?」

「最初からです。なんとなく、我々のことを嗅ぎつけて来るのではと思っていましたから。娘なら怪しまれないかと思い、ポケットに入れてもらっておりました。上手く撮れていれば、裁判の時の良い証拠となるでしょう。盗聴してしまった無礼、どうかお許し下さい」

 エリオリックは頭を下げるルオネットに、慌てて首を振った。

「いやいや!大いに助かった!ありがとう、ルオネット。元々この者達は裁きたいと思っていたのだ。相談も多くてね。しかし、コソコソとやるものだから、証拠が集まらなくて……でも、これで多くの者の恐怖が取り除かれるかもしれない。本当に、ありがとう」

 そう言って感謝を述べるエリオリックに迫る影が二つ。
 大臣たちの影だった。
 恐らく、盗聴器を奪おうとしたのだろう。
 突然のことに、ルオネットは反応しきれなかった。
 しかし、既に動く者がいた。

 彼の息子達だった。

 3人は素早く回り込み、相手の足を払って転ばせると、ランとレンが大臣たちをそれぞれ押さえ込み、ロンが部屋にあったロープで、大臣たちの腕をきつく縛った。

 こうして、一連の騒動は幕を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...