AIが最強すぎて異世界生活が楽勝です。

ジュウ ヤマト

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3章

ホルト村

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「ピピピピ……αCore稼働率70%……正常値まで回復。日中の衝撃後、βCoreが15%で稼働、喪失されていた記憶が8割程急激に回復。記憶に混乱が発生。これより、長期治療プランの再編を開始」

「はっ!」
ベッドから、飛び起きる。
悪い夢でも見ていたかの様に、身体中 汗でグッショリ濡れている。

そして、ついさっき、自分に起きた出来事をゆっくりと思い出してみる…

「そうだ! オレ、事故に合ったんだ!」

慌てて自分の身体を調べる……

「怪我は無い…どう言う事だ?? トラックに跳ねられたのに……夢……だったのか?」
状況が掴めない中、自分の服装に異変を感じる。


「この服……」


綿の様だが、少しゴワゴワする布で作られ、綺麗な染色などされていない服とズボン。

周りを見渡す……

丸太を組み合わせた様な壁、木の扉、窓から見える様相は、今まで自分が住んでいた場所とは思えない様な、お伽話やゲームの中に出てくる村……の様な景色だ。

「ここは? どうなってんだよ? これって夢じゃなかったのか……」

見覚えはあるが、よく分からない。

必死に自分の置かれている状況を整理しようと、頭をフル回転させる。

その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえる。

「ハヤト、起きておるか? ハヤト!」
老人の声だ。


自分の名前を呼ばれている……
だが、ずっとここに篭っている訳にも行かないので、警戒しながらも扉の外の人物に向かって返事をする。


「はい、誰ですか?」
「ワシじゃよ、フォーグじゃ」
「あっ、村長」

「やっぱり夢じゃないのか……」

と考えた瞬間……激しい頭痛に襲われる!

「うっ……うわ~っ! 頭が……頭が……割れる……」

「どうしたんじゃ! ハヤト! ハヤト! 開けるぞ」

「はぁはぁ……」
割れんばかりの頭痛は一瞬でおさまった。

 それと同時に記憶が繋がり、自分がどうして、ここに居るのかゆっくりとだが、理解出来た。

 ここは、ファルハン王国の北西部に位置する、ホルト村。オレ(ハヤト)はここに一人で住む村人と言うことになっている。

「じゃあ、2055年の東京からここへ転生?召喚?転移?マジか……」

 呆然とする中……

「ハヤト! おい! ハヤト! 大丈夫か!」
 我にかえると、目の前に、頭が白髪で真っ白に染まっている、恰幅の良い老人が心配そうにオレを見ている。

「村長……あの、はい……大丈夫です。」
 自分の頭に手をやり、髪の毛をポリポリと描く。

 取り敢えず2055年の事は、後で考えるとして、今はこの状況を終わらせないと。と考えハヤトの記憶を頼りに村長の話しを聞く事にする。

「村長、どうしたんですか? こんなに朝早く」

「何を言っとるんじゃ。今はもう昼前じゃよ、まったく……ところで、昨日 話した町のギルドからの依頼じゃが、受けてくれるのか?」

「町のギルドからの依頼……なんだっけ……」

「ほれ! 最近、ラグラの森から頻繁に出没するモンスターの群れの討伐じゃよ。この村で、あの様な依頼を頼めるのは、お前さんしかいないじゃろ?」
村長は怪訝そうに言う。

「あ~そうだ、思い出した!」

上を向き、そう言ってニコやかに照れ笑いをするハヤトに、さらに村長は不思議そうな顔をする。

「ハヤト……お前さん大丈夫か?」

そう言われて、ハッとする。
昨日まで 、こちらの世界でとして生活してきたが、としての記憶が戻ってきた今、2055年の東京で生き、培ってきた話し方や、仕草が出てしまう。その様子に村長は違和感を感じているようだ。

「急に態度が変わると驚くか……もう少しのままでいよう……」
と、そんな事を考える。

「村長、町からの依頼ですが、まずは話を聞かせてもらいます。とお伝えください」

「おお、そうか!そうじゃな、では早速、町の使者殿に伝えてくる。お前さんも、用意ができたら、村の集会所まで来てくれ」

「わかりました。では、後程」

 村長が去るのを見送って、ハヤトは扉を閉めた。

 そして、の記憶の擦り合わせする事にする。

「まずは、の記憶。
と言っても、西暦2036年生まれのただの大学生だった。アルバイトに行く途中、交通事故に合って……その時の衝撃でこの世界に飛ばされた……転移?おいおい…… 何の冗談だよ……そんな事が本当に起きるのか……けど、今いる場所、状況、どう考えても、西暦2055年の東京じゃ無い。文化レベルもせいぜい中世のヨーロッパレベルだ。このテーブルだって……」

部屋の真ん中に置いてある、木で出来た簡素なテーブルの椅子に座り、更に思案する。

「やっぱりあの事故に合って、オレは死んだ……いや違うか、時空を超えてこの世界に転移しのか……」

 そう言って、自分の胸のちょうど心臓の位置する場所にある、三角の小さなステンレス製プレートに目をやる。

 この一辺が2cm程度の正三角形のプレートには覚えがある、だがその記憶があるのは、の方だ。
  
 おそらく、こちらの人間には全く理解出来ないだろう。

 このプレートはAI搭載型医療用ナノマシンで一般的に認知されている情報として、人間の発する微弱電流をエネルギーにし、稼働する。そして、体内に侵入したウィルス駆除や、怪我の治癒を早め、リハビリを必要としない運動能力向上などを行う事ができる、まさに日本の最新AIテクノロジーだ。

 次に、こちらの世界のの情報を整理すると、職業には付いていないが、ギルドに所属している事、ある程度の魔法?らしき物を使える事くらいだ。
魔法らしき物が使えると言っても、特に驚かないのは、やはりの感覚なのだろう。使い方も考えるまでもなく覚えている。だが、新鮮と思える感情もあり、複雑だ。それ以外では村の人達と上手くやっている。

「この世界に来た理由は解らないけど、そこは今考えても仕方がないか……」

 そう納得して、村長と別れてから結構時間が経過している事に気づき、少し急いで家を出ると村の中央にある集会所へ向かう。


 集会所に着くと、古い木製扉をノックして、声を掛ける。

「ハヤトです」

 返事を待たずに扉を開けて中に入り、軽く頭を下げて言う。

「お待たせしました」

 村の集会所には、村長と町から来たギルドの関係者と思しき人物が少し大き目のテーブルに対面に座っている。

「やっと来たか、待ちわびたぞ……」

 村長が、呆れ顔で言う。

「すいません」

「こちらの方がエルマの町のギルドから来られた調査員ランジ殿じゃ」

 そう言って紹介されたのは、緑色の服に茶色のマントを纏った、如何にも組織の人間って感じの、薄い茶色の髪の毛を7:3に分けた中年の男性だ。

「あなたが、ハヤトさんですね。早速ですが、今回の依頼内容の確認を致しますがよろしいでしょうか?」

 ランジは自分の持って来た鞄から二枚の羊皮紙を取り出す。

「お願いします」

「では」

 そして、その内の一枚目を読み上げる。

「依頼の詳細になりますが、エルマの町の北東にあるラグラの森に、最近ゴブリンやコボルドと言った低級のモンスターが、群れを形成し頻繁に旅人や商人を襲撃しています。
当ギルドも、最初は町の冒険者に依頼し対策を講じたのですが、如何せんモンスター達の数が多く、エルマのような中規模の町の冒険者だけでは手に負えないので、王都も含め冒険者を募集した次第です」

 村長が髭のない顎を右手で摩り口を開く。

「なるほど……一体どれ程の数がいるのですか?」

「今現在 当ギルドで確認できている数は、ゴブリンが約70匹、コボルドが、約50匹程です……」

「!! ゴブリンとコボルドが100匹以上ですか! それを町の冒険者だけで対処とは……」

 村長が、驚いてテーブルから立ち上がる。

 だが、ギルドの調査員ランジは落ち着いた様子で話しを続ける。

「そうです。ですが、当初ギルドで調査した時はゴブリン、コボルドを合わせても、20匹程度でした。それが、ここ一週間ほどで5倍以上に膨れ上がったのです。そして、ある事実を突き止めました」

そして、ランジが出されていた水を口にし、話を続ける。

「イーブス教が関係している可能性があります……」

「なんと! あの邪神を信仰するイ―ブス教ですか?」

 村長が大きく目を見開いて驚き、聞き返す。

「目的は……?」

「正直、解りかねます。旅人や商人の所持している金銭なのか、物資なのか、それとも被害者自体なのか……そもそも襲撃が行われた場所に痕跡はほとんど無く、被害者を含め荷車や馬車は全て持ち去られていますので……」

 ランジは困った表情で依頼書を眺め、村長も、腕組みをして下を向き何やら考え込んでいる。

「現時点の報告では、一月で12件の強奪事件が報告されていますが、イーブス教が関与していると思われる事件は7件です。あくまで、可能性ですが……」

 そう言うと、ランジは、ハヤトと村長に見えるように、2枚目の羊皮紙を机の上に広げる。

「ハヤトさん、現在あなたのギルドランクはブロンズです。今回の依頼は、ランクがブロンズ以上の方への物です。今まで話した依頼内容をご理解し、受けて頂けるのであればこちらの羊皮紙にサインをお願いします」

 そこに書かれているのは当然、成功報酬だ。そして、もう一つ赤い文字で、こう記されている。
「ギルド委員会審議対象依頼」通称『赤依頼』これは、ギルドや国からの依頼で、特に重要な依頼や危険な依頼・急を要する依頼にのみ記され、下位・中位ランクの冒険者には討伐実績の如何によっては追加報酬が約束される。

ハヤトが羊皮紙の記載内容を確認し、サインしている間に村長が、ランジに質問する。

「ハヤトはブロンズランクの冒険者との事ですが、ギルドではどの程度の能力が有ると認められているのですか」

 その質問に対してランジが説明をする。

「ギルドランクとは、今までにこなした依頼内容からギルド委員会が、冒険者を評価した結果で、フレアライトランクを筆頭に7ランクで区別され、フレアライト級を最上位のランク1(first)オリハルコン級をランク2(second)ミスリル級をランク3(third)ど呼称し、ゴールドランク以下はそのまま数字呼び又は、貴金属名称で呼称します。ハヤトさんはブロンズランクで、通常ブロンズランクの冒険者では、ギルド評価で普通のゴブリンなら5匹程度を容易に倒せる位の力があると評価しています」

 村長は感心したように、ハヤトを眺めている。

「ただ、冒険者は通常、複数人でパーティーを組んでいるものです。ですので、ゴブリン5匹程度ならブロンズランクのパーティーで容易に倒せると言うことです。
ですが、ハヤトさんはパーティーを組んでいません。それでも現時点ブロンズランクの冒険者と言うのは、やはりそれなりの実力があると言うことです。そして、その事は最近までギルドの方でも把握していませんでしたが、受付嬢からパーティーを組まずにブロンズランクの依頼をこなすハヤトと言う冒険者がいると聞いて、早速ハヤトさんの事を調査した結果、今回の依頼に是非参加して頂きたいと思いお願いに参った次第です」

 とランジは横目にハヤト覗き見て話しを続ける。

「そして次に、追加報酬とは、主に新たな武器や防具、アイテムといった物で受け取る事も可能となる報酬枠です。上位ランク以上の冒険者には、金銭のみの報酬となります。なぜそうなっているのかと言えば、当然上位ランク以上の冒険者の場合、皆それ相応の武具やアイテムを所持しているため、それ以上の物をギルド側が用意出来ない事が、最大の要因です」

 ハヤトは、話しが終わった事を察し、確認とサインをした羊皮紙をランジに渡す。

 ランジはサインの確認をし、羊皮紙と依頼書を丸めて、持ってきた鞄に大事そうに仕舞う。

「はい、結構です。では、ハヤトさん支度ができ次第  町へ向かいますので、村の入り口のまで来て下さい。私は先に行って待っていますので」

「分かりました」

 話しは終わり、ハヤトは自分の家に向かう。

 支度を整えるため、タンスの引き出しを開けて自分が普段から着ている服に着替える。

「ふ~……しかしまいった、本当にファンタジーな内容だったなぁ……」

 そう言って、身体のコリをほぐすように伸びと欠伸すると、入り口扉の横に無造作に置いてある、軽装の鎧を蹴り上げ、手際良く装着する。

「記憶が戻ると、この鎧を着るのも新鮮に感じるなぁ」

 そうんな事を思いながら、家を出てランジが待っているであろう、村の入り口へ向かう。

「お待たせしました」

「いえ、では早速参りましょう」

 そう言うと、ランジは馬車に乗り込みハヤトにも、乗るように促した。
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