AIが最強すぎて異世界生活が楽勝です。

ジュウ ヤマト

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21章

ファルハンの戦姫

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 ファルハン王国王都ファーランの謁見の間に、傷だらけの犬の亜人が息を切らせながら跪いている。

 セニア王国の女王フロンは、イグニア帝国との話し合いが決裂し、その際クリアス神聖国に怪しげな様子があったと報告が来たと同時に、ファルハン王国に援軍の親書を送ったのである。

 また、伝令に対しファルハンへ向かう際は、通常クリアス神聖国を通らなければいけないが、今回はクリアス神聖国も信用できない為、伝令である犬の亜人にはクリアス神聖国を通らず、セニア王国の西側にある天空国家バーレティアから、アルデリア山脈を抜けて行くよう命令したのである。

 そして、犬の亜人は女王フロンの命令通り、険しいアルデリア山脈をモンスターの攻撃を受けながらも、辛うじてファルハン王国に辿り着いたのである。


--------


 玉座には国王オールス・ロウ・ファルハンと、その横に王妃アイリーン・ハウ・ファルハン、周りにはファルハン王国の重鎮と警護をする兵士が10人程いる。

「面を上げよ。国が大変な状態でよくぞここまできた。しかも、その傷……宰相から話は聞いた、そなたは安心してわが国で治療を受けよ」

 国王オールスがそう言うと、安心したのか犬の亜人はその場に倒れこんだ。それを見た、宰相デール・カラルドがすぐさま兵士に声を掛ける。

「おい! だれか!この者を救護室に」

「はっ」

 そう言うと、すぐさま傍で待機していた治癒士と、兵士二人が犬の亜人を連れて謁見の間を出ていく。

 国王オールスが皆に伝える。

「近年、イグニア帝国が不穏な動きを見せていたことは分かっていたが、セニアのフロン女王の親書の内容が本当なら、クリアス神聖国の対応にも納得できぬ部分がある。念のため、クリアス神聖国に対し、我が国はイグニア帝国の侵略には断固とした態度を取る事を告げ、セニア王国への援軍の為、クリアス神聖国を通過する旨の親書を送るのだ。そして、セニアへの援軍として2万の軍を編成する。指揮は……」

 オールスが言いかけた時、一人の人物がそっと手を挙げた。

「うん……そなたが行くと申すのか? ファンゼス将軍」

 鍛え上げられた肉体を持つ壮年の男が、手を挙げている。

「陛下、もしよろしければ今回は我が娘を大将としてセニアに送って頂く事は可能でしょうか?」

 騒めく場を制し、オールスがファンゼスに問う。

「セレス嬢を大将として送るのか? 良いのか、ファンゼス?」

「セレスは、今まで私の副官として、モンスター討伐戦と野盗などの殲滅戦、中規模程度の戦争で戦場に行くことはありましたが、今回の様な大規模な戦争は経験がございません。この機会に、万の軍を率いる戦争と言うものを経験させておきたいと思います」

 オールスは髭を摩りながら考える

「だが、いきなり大将と言うのは……些か心配ではあるな」

「はい、ですので我が家臣の一人で、元副官のアイロスを娘に付けたいともいます」

「アイロスか…… 今は次代の若者を育てる教官をしていると聞く…… ならば安心か…… では、任せたぞファンゼス」

「はっ! では、準備がありますので、失礼いたします」

 そう言うと、ファンゼスは謁見の間を足早に出ていく。

「ではデールよ、国に触れを出せ! 『セニア王国の救援のため、我が国から兵を送る。そして出兵に協力した者には白金貨3枚を出す』と、こう言えば傭兵達もある程度集まるだろう」

「はっ! 承知いたしました。陛下」

 そうして、ファルハンの王国中に、このお触れが出たのである。


--------


 ファンゼスは屋敷に帰ると早速娘を呼ぶ。

「セレス! セレスはおるか!」

 二階から黒髪の若い女性が階段を駆け下りて来る。

「お帰りなさいませ、お父様。 どうしたのですか?」

「セレスよ、現在セニア王国とイグニア帝国との間で戦争が始まりそうな事は知っているであろう。今日、陛下の元にセニア王国の女王より親書が届いた……内容は、援軍を求めたいとの事だ。そして、それに対し、陛下は2万の援軍を送ると決定され、私の推薦ではあるが、その軍の大将にお前をご指名されたのだ」

「私が、2万の軍を率いる大将でございますか!…… わかりました! このお役目を立派にこなしてまいります!」

 セレスは、興奮気味に返事をすると、すぐに部屋へ戻ろうとする。

「待ちなさい、ただし副官としてアイロス付ける事が条件だ。しっかりと学んできなさい」

「アイロス殿が付いてきてくれるのであれば心強いです! ありがとうございます! お父様。では、私は準備がありますので、失礼いたします」

 そう言うとセレスは、自分の部屋へそそくさと戻って行った。
 

--------


 その頃、ホルト山脈の調査とゴブリンコロニーの殲滅を行った、ハヤトとマリアはエルマの町のギルドに戻っていた。

 マリアが申し訳なさそうな顔をして、ハヤトに謝罪をしている。

「ハヤト様……申し訳ございません……こんなことになってしまって……」

「大丈夫だから……マリア、もう謝らなくてもいいから」

 ホルト山脈からの帰りに何度も謝るマリアに、ハヤトは何度も同じことを言う。すると。横から少女が言葉をはさむ。

「なぜリリス様が謝るのですか! 悪いのは全てこの男です!」

 少女がハヤトを指差し、睨み付ける。そう、ラミアも着いて来ていたのである。

「ラミア…… 何度も説明しましたが、ハヤト様は何も悪くありませんよ。私が好きでハヤト様に従属しているのです。ですから、ラミアも教会には戻らず自分の故郷に帰りなさい。今のあなたの力なら何処ででも十分やっていけるはずです」

「ですがリリス様……」

 ラミアが沈んだ表情でマリアを見る。

「ラミア、私の名前はリリスではなく、マリアです」

「あっ!…… マリア様…… ですが、私は故郷には帰りたくありません…… どうかお傍において下さい……」

 縋るような目にマリアも何とも言えないような顔をしてハヤトの顔を見る。

「ハヤト様……」

「オレは、マリアが良いなら、この子が着いてくることに反対はしない」

「……わかりました。 ラミア、あなたが付いてくることを許可します。そのかわり、今後一切ハヤト様に対する無礼は許しません。 わかりましたね」

 ラミアは、最初は嬉しそうな顔をし、最後はしぶしぶといった表情になり、承諾した。

「……はい」

「それから、ラミア、あなたは自分の本名を覚えていますか?」

 ラミアは少し考えてから思い出したかのように答える。

「私ですか? 私は……ミア……です……」

「そうですか、ではこれからあなたの事は『ミア』と呼びます。あなたは、私の事を『リリス』、ハヤト様の事は『ハヤト様』と呼ぶようになさい。わかりましたね?」

 マリアがそう言うと、ミアが驚いた表情で、ハヤトを指差す。

「えっ!…… こいつの事を様付で呼ぶのですか!」

 ミアの言葉を聞いた瞬間、ラミアがその美しい容姿に見合わない様な鋭い声でミアに言う。

「ミア……」

 その表情と声を見聞きしたミアが青ざめる。

「ひっ…… も、申し訳ございません…… マリア様……」

「二度はありませんよ……」

「……はい……」

 二人のやり取りを横で見ていたハヤトは、マリアの本気で怒った顔をみて少したじろき、思った。

(美人が怒ったら怖いって言うけど……オレはマリアを怒らせないようにしよう……)

 と、心に誓ったのであった。
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