ゼロキルゼロデス〜あなたの力では人を殺せません〜

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第一章

難去って

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「いてっ」
「海斗さん、じっとしていてください」
腕に包帯を巻かれている海斗が、情けない声を出した。イアが嫌がる子供をあやすように、海斗をなだめた。
しぶしぶ海斗はその痛みを受け入れる。
「海斗ー、ご飯持ってきたよ」
扉を開け、ミルディアが部屋の中へ入ってきた。片手の上にうまくバランスをとりながら料理の乗ったトレイを持っている。
ミルディアの声がする方に、背中を向けたまま海斗が返事をした。
「イアちゃん、海斗は大丈夫?」
ベッド横の棚の上にトレイを置きながら、ミルディアがイアに話しかけた。イアはそれに答えるために、振り返った。
「はい。怪我はひどいですが、重苦な問題はありません」
微笑みながらイアがそう答えた。が、そのイアの顔を見た瞬間、ミルディアが驚いて慌て始めた。無理もない、先ほどまであれほど泣いていたのだから、目が晴れている上に少し声も低くなっている。
泣いた後のイアの顔を見て、ミルディアが海斗を睨みつける。悪いことはしてないぞと、海斗は首を横に振った。
「海斗、イアちゃん泣かせたでしょ?イアちゃん、海斗が何かしてきたなら言ってね」
「違う!いや、まぁ違わないけど、別に悪いことしたわけじゃ...」
誤解を解こうと、海斗が必死に弁解しようとした。慌てる海斗を見て、ミルディアの表情にだんだんと疑いの念が籠もっていく。
「ミルディアさん、私は大丈夫ですよ。海斗さんに酷いことはされていません」
苦笑いしながら、イアがミルディアに伝えた。
「そう、イアちゃんがそう言うなら...」
疑いの心を残しつつも、ミルディアはイアの言葉を信じて納得した。
止めていた手をもう一度動かし、イアが海斗の腕に包帯を巻いた。
「どうですか?」
「うーん...うん。大丈夫」
包帯の具合をイアが海斗に確かめた。腕を何度か曲げたり伸ばしたりし、違和感がないことを確認すると、海斗は親指を立てた。
「うん。じゃあ私はもう行っちゃうけど、好き嫌いしないでちゃんとご飯食べるんだよ」
ミルディアがそう海斗に釘を刺すと、足早に部屋を後にした。
「そんな子供じゃねーよ!お前は俺の保護者か!?」
姿が見えなくなったミルディアに向かって海斗が吠えた。二人のやりとりを見ていたイアが、クスッと笑った。
「じゃあ、料理をいただこうかな。すっげぇ美味そう...この料理もイアが?」
目の間の料理を指差しながら、海斗がめを輝かせながらイアに尋ねた。
「はい、今日の食事も私が用意させていただきました。海斗さんは病み上がりですので、すっと飲めるスープとお野菜に、付け合わせを少々」
「気遣ってくれてありがとうな。じゃあ、いただきます!」
海斗が手を合わせ、大きな声でいただきますをした。

「おや?ふふっ、海斗くんは元気そうだね」

「まったく...。海斗は静かにできないの?でも、よかった」

「ん?今の声が、海斗さんかな?」

屋敷中に海斗の声が響いた。屋敷の色んなところで、海斗の声を聞いて独り言を零す。
イヴァン、ミルディア、そして、もう一人。
こうして、一難が去った。



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