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めんどくさそうなの拾って来ました
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殺し屋常のレシピ帳
「何をしている!?相手はたった一人だぞ!?」
男達は慌てふためく。
漆黒のマント、タキシード、シルクハット。
まるでマジシャンの様な出で立ちだが、残念ながら違う。
殺し屋。
自画自賛かもしれないが一流と自負している。
持つ鈍色のベレッタから発射された弾は確実に急所を穿ち、絶命させる。
さて、後、三人か。
マガジンを抜いて弾数を数える。
五発。
予備も無いので如何したものかとフム、と考えるが、こちらに向かって走ってくる足音が一つ。
俺はマガジンを突っ込み
パス!
サイレンサー付きの銃で男の死角から頭を撃ち抜く。
恐らく何が起こったか分からず葬られただろう。
まあ、一々殺った奴の顔など覚えてなどはいられない。
葬る度に十字を切る偽善心剥き出しのイカれた同業者は聞いた事もなく。
上か・・・。
場所が場所だけによく靴音が響く。
タンカー内部。
何を運んで来たのかは依頼主が頑なに口を閉ざす。
鼻の良い犬は容赦無く消される。
それがこの業界の鉄則、掟。
タンカーの最下層。
何じゃこりゃ?
青い液体に満たされたカプセルに一人の女性。
俺がまじまじと見ていると、女性が目を開けた。
そして
あら、珍しいわね?白衣の人達ばかりが集まるのに、今日はマジシャンさん?
脳に直接話し掛けてくるが、別段驚く事も無く
「残念ながら、違うんだなぁ、是が」
俺は徐に殺した奴から奪ったリボルバー拳銃で女性の入っているカプセルを撃つ。
ガオォォン!
凄まじい轟音が響き渡る。
だが。
「傷一つついてないか・・・こりゃあ参った」
マグナム弾である。
是で傷一つ付いて無い。
しょうがないと俺は腰から白い、ブニブニした塊を出し一〇センチ位に千切ってカプセルに貼り信管を突き刺しタイマーをセットして猛ダッシュで部屋から退避。
3・2・1、ドカン。
ボ!
青い閃光が走る。
船全体が大きく揺れ爆音が後から響く。
俺はもう一度部屋に入る。
すると女性が入っていたカプセルが割れて中から出ている途中であった。
「コンポジション4・・・軍用爆薬、何処で手に入れたかは聞かないわ」
そうして
「是から如何しましょうかね・・・」
「俺の依頼主はアンタを保護しろって言ってたが・・・白梅エリカさん?」
エリカは驚かない、其れ処か
「きな臭いわね、その依頼主って人・・・。ね?五代黒野常さん」
まあ、一見すれば只の女性であるが・・・何やら厄介事に巻き込まれた様だ。
俺は確かに黒一色のモノトーンの世界に生きる人間で、厄介事は幾度と無く押し付けられてきた。
だが其れも俺の意思は問われなかった。
寧ろ御免被る。
だが俺等は依頼主と言う独裁者と請負人と言う奴隷に分かれている。
独裁者が無理難題を押し付けてくれば其れに反する事は出来ない。
まあ、結果として何を論じてもこの得体の知れない女性を保護しなければならない訳で。
「へぇ・・・結構良い部屋に住んでるのね」
「良いから風呂入ってこい」
俺は冷蔵庫に入れてあったシュークリームをパクりと食べようと口を大きく開け、後2,3センチの所でフっと消える、否、空中に浮いている。
それがそのまま風呂場の方へ向かって行く。
俺は無言で、今度は冷蔵庫からティラミスを取ってフォークを立てようとした所、其れもふわりと重力度外視で浮いて風呂場に。
・・・。
何か、悟りの極致に達した。
俺は本当は大吟醸酒の当てに買ってあった辛子蓮根を冷蔵庫から出す。
其れも案の定空中を飛んで風呂場へ。
1分後程であろうか?
風呂場から悲鳴にならない悲鳴が上がったのは。
そしてエリカは一糸纏わぬ姿でバタバタバタと走ってきて・・・
「よひゅもりゃったわにぇ!」
「人様の物を勝手に食べるからだろ、自業自得だ」
俺はドカっとソファーに座り、腰からベレッタを抜くと分解し始める。
まあ、早い話、手入れである。
分解し終わって、俺はスレッドの入ったタイトスカートを脱ぎガーターストッキングも脱ぎ始める。
黒のタキシードも乱雑に脱ぐ。
ブラウス一枚になった所で立ち上がり、カウンターキッチンに立てていたグラスとバーボンを手に取り戻る。
一休憩だ。
ソファーの肘掛に背を預け、バーボンをグラスに注ぎ一口。
「げ・・・ストレートで飲むのね」
「まあな」
「それより折角美人なのに男言葉止めたら?」
一杯目のバーボンを飲み干すと、分解したベレッタを丁寧に拭う。
ほぼ毎日の日課になっている。
一番最初に握った愛銃であり、この世界に入るきっかけになった片道切符。
引き金を引いた時、もう二度と表舞台に立てない、そう覚悟し弾いた一発。
一度、人を撃ったら後は何の抵抗も無い。
常識になる。
刷り込まれる。
そして何時からか言葉遣いも荒くなる。
まあ、昔話を語る程、吟遊詩人でもない。
俺は
「余計なお世話だ」
粗方、煤を拭うと、非粘性オイルを塗る。
エリカはしばらく其れを見ていたが、暇になったのか俺の後ろに立ち
「綺麗な黒くて長い髪・・・黙ってれば大和撫子よ」
髪の毛をいじり始めた。
「何やってるんだよ?人の髪で」
「ん?三つ編みだけど?」
おいおい・・・。
まあ、たまに腰ぐらいまで伸びた髪の毛が邪魔で結ぶ事はあるが・・・三つ編みは流石に無い。
其れより
「いい加減、バスローブ位着たら如何だ?後、服は俺の使って良いから」
「・・・」
エリカはムスくれていた。
ブラウスのサイズで、だ。
「・・・常、胸のサイズは?」
と聞かれたので
「Gだけど?」
けろりと答えると
「この巨乳お化け―!」
そう言って人の胸を乱暴に揉みしだいてくる。
「痛たた!?止めろって!」
「この胸が言うか!?この・・・む・・・ね・・・ヒック」
泣くか?普通?
慰め様にも何とやら。
是は如何にもならない。
傷口に塩を塗り込む様な事だ。
そうして、泣く事5分。
何とか立ち直り掛けていたエリカは
「ウエストは?」
「58」
「・・・ヒップ」
「81」
ゴゴゴと言う昔ながらの擬音が聞こえて
「・・・この・・・!何処のモデルだぁぁ!」
と逆上プッツン。
いや、そうは言われても・・・。
俺は返答に困る。
「そうなんだよなぁ、容姿端麗、才色兼備、女の私でも惚れそうになるもんな」
「お、今日は普通通り玄関から入って来たんだな、小鈴」
小鈴。
同業者である。
まあ、古い付き合いで良く飲み歩く仲だ。
と、小鈴はエリカを見て
「・・・本当だったのか・・・」
思わずぽつりと口から漏れたのを俺は聞き逃さなかった。
「何やら何か知ってるな?」
俺は依頼主から、只保護しろと言う事と依頼金、日本円5000万が振り込まれていただけなのでエリカの素性は全く分からない。
なので少しでも、まあこの際なので少々パチっぽい情報でも良いので欲しい。
「・・・眉唾物だぞ?」
話はこうである。
莫大な財力と凶悪なまでの権力を欲しいがままにしている白梅家の次期当主にエリカは確実にその椅子に腰を掛けるだろうと。
だが、白梅エリカは体が弱く、後2,3年生きられれば奇跡と宣告されていたらしい。
ならばと白梅の財力でクローンを作ろうとプロジェクトが立ち上げられ、急ピッチで研究が続いた。
そして、何体ものクローンを作っては廃棄し、作っては廃棄しを繰り返し・・・成功した。
神をも恐れぬ所業の完成品ができた。
それが正に俺の目の前にいるのがエリカのクローンだと言うのだ。
そして・・・副産物、と言うのだろうか?
このエリカ、悟りと念動力が使えるらしい。
他にも色々使えるけど秘密、と言うのがエリカ。
まあ、あえて追及する気も無いのでスルー。
しかし、保護したけど依頼主から一向に連絡がこない。
如何したものか・・・?
苦慮中に
ピンポーン。
インターフォンのカメラを見る。
リリー。
爆薬のスペシャリストで、元は高層ビルの発破解体等をやっていたが、コースト世界中央銀行を発破し貯蔵されていた金塊をごっそり根こそぎ盗んだ。
そしてついた名前がボマーリリー。
この業界ではそれなりに有名である。
所で今日はパーティーをやる予定ではなかったが小鈴にしろ、リリーにしろ同業者、しかも殺し屋、壊し屋女子会何て滅多に無い。
だが、偶に暇が重なると何かしら遊びに出たり俺の家に集まったりする。
現に小鈴の手には芋饅頭、そしてリリー(カメラ越し)は手に四越屋名物クリームチーズケーキがあるのが分かる。
是が俗に、世間一般で言う女子会、と言うものなのだろう、多分・・・。
「不思議なんだけどよぉ、芋焼酎に饅頭が合うのは分かるんだがなぁ、チーズケーキも合うとは思わなんだ」
「おいおい、常、飲み過ぎだぞ?」
既にリリーはソファーで一升瓶を抱えて
「森羅のお兄様ぁ、リリーはリリーは・・・ぐえふぇふぇふぇ・・・」
恐らくピンクな夢を見ているのだろう。
其れとソファーによだれ垂らすの止めてくれと言いたいが
「こらぁ、リリーぃ、人んちのソファーに何してくれてまんねん・・・」
俺もグダグダ。
だが、小鈴はケロりとしている。
コイツ、強いもんな。
何分、ショットウォッカを一気で飲んでその上でリキュールソーダをがぶ飲み。
それでも倒れる事なく、そのバーのマスターが意地を張って強いカクテルを次々に突っ込んで来たのだが酔い潰れる事も無く。
エリカはと言うと、ㇷヨフヨと空中に浮きながら、饅頭を美味しそうに頬張っている。
まるで我関せず、と言った所か。
ふと、目が覚める。
日付変わって夜中の1時を指す時計の無機質な針。
哲学的に言うと、この人類が発明した指標は時に一喜一憂を運び、そして時代を運ぶ。
俺はバーボンをコップに一杯注ぎ、窓枠に座って一口。
外は雨。
俺が住んでいるマンションは丁度歓楽街の入り口辺り。
電光掲示板、ネオンの光が雨粒によって滲む。
この時間の所為も有るかも知れないがサラリーマン達がホテルに入って行くのが見える。
この限界がある無限の希望と欲望の街を見渡せるからこそ此処が気に入った。
雨と言う濁流に呑まれるが如く、歓楽街に老若男女が入って行く。
雨は嫌いでは無い。
寧ろ好きである。
まるで手に着いた血、罪悪を流してくれそうな、まあ、そんな都合の良い話は無いだろうが、心の中で、そう願っているのかもしれない。
俺はバーボンをもう一つ口にする。
そう言えば昔、天気予報であめが降るでしょうと聞き空に向かって大きく口を開けていたら
「何やってるの?」
と母親から聞かれ
「飴が降るって言ってたから」
それを聞いたお姉ちゃんがクスッと笑って
「飴は降らないわよ、代わりに草木さん達のお菓子が降るの」
それだけ言うと、サクマドロップのイチゴ飴をくれた記憶がある。
今考えると、自分でも失笑してしまう。
幼少期から今迄自分は何を成しえただろう?
深く考えれば考えるほど落胆する。
朝、大体9時位であろうか?
トースト、卵焼き、ウィンナー。
良い匂いがして目が覚める。
如何やらエリカが用意してくれたようだ。
・・・まあ、俺も年頃の女性だし、食事はちゃんと作っている。
一応、花嫁修業として・・・。
なので冷凍、冷蔵庫の中は食料品が整然と並んでいるし、食パンやお米、調味料等々全て粗方揃っている。
別に勝手に食べる分には構わない。
夏の暑さも遠のき、秋一番が響いて来る。
昨日の夜はドンパチでその後飲むだけ飲んでへべれけ。
女四人で何やってるんだろうと少々空しくなってきた今日この頃。
まぁ何時までも引きずっていても仕方ない。
朝ご飯を食べ終わると小鈴が
「エリカ、服買いに行くか!」
ある衣料品販売店。
質素な目立たない服が良いと言われたので、俺チョイス。
「地味過ぎないか?」
小鈴眉を顰め一言。
うーん・・・秋物チックで良い様な・・・。
リリーは
「ザ・ゴールド!」
・・・。
「「却下」」
俺と小鈴で猛烈否決。
大阪のおばちゃんでも着ないと思う。
あーじゃらこーじゃら言ってエリカの衣料品を買い込む。
そして車で待っていたエリカに手渡す。
帰り道。
首都高速中央環状自動車道を一路新宿ジャンクション迄。
普段なら滅茶苦茶混むのだが今日は普通通り車は流れ、カーラジオからはジャズが小気味よく聞こえて来る。
その途中で
「この辺に美味しいフレンチレストランあるよー」
リリーがそう切り出す。
まあ、リリーは舌が肥えてるのでハズレは無い。
「ほう・・・この子が・・・」
フレンチの食後のデザートにスプーンを入れている時にふむ、と言う顔でマジマジ見る。
ここのオーナシェフの賢首院さん。
かつて、フランス外人部隊に居たそうでガタイのいいおっさん、が第一印象である。
まさかこんな人がフレンチを作ろうとは思うまいが、本当に美味しい。
「白梅家は余りお関わり合いになりたくない一家だな、良い噂が無い。やっている事業がきな臭い、噂ではあるが、年2.3件、官製談合に関わっているらしい」
「まあ、俺はもう肥溜めに片足突っ込んで臭くなってるけどな」
ちょっとした皮肉。
其れより此処のババロア美味しいな、作り方教えて貰おう。
「で、リリー、何時もので良いんだな?」
「うん、五〇〇グラムで、後はニトログリセリンを一瓶」
「後、面白い物が手に入ったぞ」
「何?」
「水素弾薬式銃」
ほー、確かに珍しい、と言うか初耳である。
等のリリーは目を輝かせて
「いくら!?」
「おいおい、物見てから言った方がいいぞ」
このおっさんも頷き
「2割の確率で暴発するから、まだ研究段階の試作品ってところだ」
「あーあ、見てみたかったなぁ・・・」
「まぁ、暴発して腕ぶっ飛んで良いってんなら買えばいいしな」
と小鈴。
確かに。
余りにリスキーな物は戦闘中、肝が据わってなければ使えない。
命をかけ金代わりにベットするのは馬鹿である。
弱腰、と言われればそれまでだが、その弱腰と言った奴がもし同じ立場になったら命をベット出来るか?
まあ、人間なんてそんなもんだ。
例外もあるが。
命を懸けて守ろうとする時、または何もかも奪われた時。
俺はどっちであろう?
そんな道徳的な事を考えてハンドルを握っていると、雨が降って来た。
ワイパーが雨粒を浚う。
そう言えば、今朝のニュースで秋雨が降ると言っていたような気がする。
カローラが街灯の灯る道を走る。
俺を残し女三人眠りこける。
静かな道路だったが、突如前を走っていた車がスピードを緩めて来た。
俺はアクセルを踏み、追い越そうとすると急発進、進路を塞ぎ運転席から一人の男が出て来る。
「オイ!コラァ、ぶっ殺されてぇのか、クソアマァ!」
俺は窓を少し開けて
パス。
ベレッタで男の股間を撃ち抜く。
其れと同時に邪魔な車を、いつの間にか起きていたリリーがTNT爆薬で空中に、打上花火とまではいかないが、見事に空中に飛ばす。
男は股間の激痛と目の前で自分の車が無残にも一瞬で廃車になった事に一旦口を開けて呆けていたが、我に返り
「俺を誰だと思ってやがる!?敬興会の若頭だぞ!?」
ああ・・・あの会ね。
「連絡とってみ?五代黒野常と、斬鬼小鈴、ボマーリリーに喧嘩売りたいって」
男は携帯を取り出し、俺等の名前を言うと、この若頭の顔が見る見る青褪める。
そして先程迄とは一変、低姿勢で
「すすす、すみません、まさか名の通った方々とも知らずに・・・どどどうぞお通り下さい」
「あれ、少し脇に寄せとこう」
エリカは廃車になった車を見て、空中で手を動かす。すると車は脇の電柱にぶつかって止まる」
「これなら大丈夫でしょ」
いや、電柱アート・・・にしてもな。
そう、電柱に衝突しました、と言う、あるある芸術みたいな。
この若頭、硬直してる。
ま、ほっとくか。
サツマイモ。
毎年この時期が来ると町内会で焼き芋会があり、無類の甘い物好きの俺は近所の公民館に行く。
俺はジャージに着替えていると
「焼き芋かぁ・・・ホカホカ、ホクホクねぇ」
エリカが半分寝惚けているのか分からないが起きて来た。
食べ物の気配には敏感なのかもしれない。
「あ、常姉ちゃんだ!」
そう言うと少年少女が俺の周りに集まって来る。
俺は磁石か!と言うほどに。
丁度、町内会長さんが
「常さん、丁度いい所に来ましたねぇ、焼き立てですよー」
とアルミホイルを燃える枯れ葉の中から取り出す。
俺は軍手をはめ、アルミホイルに包まれたサツマイモをほこほこ言いながらかぶりつく。
美味しい。
この言葉に尽きる。
質素な調理法だが、その分、むやみに味をつけていないのでサツマイモの素の味がする。
暫し、サツマイモを堪能していたのだがそこに邪魔が入る。
「これはこれは、愛しのマイレディー、今日も光り輝いてるよ!」
近所の大金持ちの息子、まあ、言わば御曹司である赤鷲浩二が俺の手を取ろうとしたので、軽く払って
「そんなぽんぽんと人様の手を握りに来るんじゃない」
不快感満点の表情で注意する。
浩二は髪を掻き分け
「恥ずかしいのかい?愛しのマイフィアンセ」
「誰がフィアンセか。頭を北極の氷の中に突っ込むぞ」
サツマイモが冷える前にコイツを如何にかしなければ、と言うサツマイモ愛の俺はコイツを速攻で気絶させるが為、手刀を右片腹に入れる。
まあ、気絶はしないが悶絶はする、どちらも動けなくなる事に変わりはないので良しである。
復活する前に焼き芋二本確保。
俺は踵を返すと
「会長さん、ありがとうございました!」
それを聞いた近所の少年少女は
「常お姉ちゃん帰っちゃうの?」
「遊ぼうよー」
口々に不平を発する。
「これやるから今日は勘弁な」
チョコレートをバックから出し、渡す。
それを悶絶していた見ていた浩二は
「う・・・うわぁん!爺や、常がいじめるううう!」
と思いっ切り泣く。
そして何処からともなく現れる、一人の執事服の眼光鋭い爺さん。
げ・・・。
白鷺洋介、元暗殺屋。
相当強いので相手にしたくない人ナンバーワン。
俺は逃げ道を塞がれ如何したものかと思っていると
「今迄8回戦って私目が1勝ですな・・・」
其れだけ言うと白鷺は懐から煙管を取り出し襲って来る。
俺はギリギリで避ける。
余り離れ過ぎると僅かだが慢心が生まれ、隙を作ってしまう。
適度な緊張感があれば、実力以上の能力が出る。
相手は後少しで敵に攻撃が当たると錯覚しているので、何時しか攻撃が大振りになって来る。
そして・・・
ボ!
白鷺が渾身のストレートを入れて来たのを見計らい俺の掌底がまともに白鷺の鳩尾にめり込む。
「是で俺の8勝目だ。じゃあな」
家に帰るとエリカがソファーに寝そべり、煎餅を軽快音と共にほうじ茶をすすって昼ドラを見ていた。
何処の主婦の昼間再現してるんだよ、とツッコんでやりたかったが
「あ、焼き芋の匂い」
犬か!嗅覚、犬か!?
内心でツッコミまくり
「・・・ホレ、熱いから気をつけろよ」
アルミホイルに包まれた芋を投げる。
エリカは投げられた焼き芋を能力で浮かせ、アルミホイルを器用にむき、口に入れる。
「あ、美味しい、安納芋かしら?」
俺は首を傾げ
「さあ?」
専門家でもないし、貰う時に一々、是、安納芋ですか?何て聞かない。
美味しければ全て良し。
町内会費ひと月千円なので一応良いお芋かもしれない。
まあ、結論は先に述べた通り、美味しければ全て良し、である。
そこに
「常・・・」
玄関からか細い弱々しい声。
聞き違えなければ
「小鈴か?」
只事でない小鈴の声に急いで玄関に向かう、と左肩を吹っ飛ばされ、息絶え絶えの小鈴が倒れていた。
普通の人間なら慌てふためくだろうが、俺等の住んでいる世界では腕やら足やら吹き飛ばされても動揺しない。
俺は腕をタオルで縛り
「取り合えず止血剤、と・・・モルヒネとタバコどっちがいい?」
「両方」
俺はにっと笑い
「それだけ言えりゃあ問題ないな、モルヒネ持って来てやるから取り合えず上がれ」
それだけ言って俺はリビングに戻り、冷蔵庫から一つ、大きな酸化したふりかけの様な色をした物が詰まっている瓶を引っ張り出す。
エリカはまださつまいもの余韻に浸っている様だったが、その瓶を見て首を傾げつつ
「何の瓶?」
「ん?モルヒネ」
あっけらかんと、普通に返答した。
間。
何の間なのか理解出来ないので、瓶から少量、一撮みのモルヒネとパイプを持って小鈴の待つ玄関に向かう。
「ホレ、モルヒネ」
小鈴はパイプをくわえ、スーッと吸ってポプっと口から煙一つ。
「んで、誰にやられた?」
「元CIA工作員、コール・レイヤー。最近また有名になった古参者だ。名前位知ってるだろ?」
ああ・・・と言うか
「正直なところ、全く知らん」
小鈴はパイプの煙を豪快に噴き出す。
折角止まりかけていた傷口からの出血が若干又酷くなった様な?
でも、知らんもんは知らんし。
携帯を取り出す。
「三船か?急患だ、早く来てくれ」
「あらまぁ、また酷くやられたものねぇ」
5分。
目にも止まらぬ神業で見事に傷口を縫い合わせる。
「相変わらず早ぇえな三船のばっちゃん」
三船。
とある有名な大学病院の執刀医だったが、同僚の医療ミスを押し付けられ辞職、医師免許も剥奪され、流れ流れでこうして闇医者になったと言う訳である。
「あいよ、何時もの」
俺は封筒を懐から出した。
三船のばっちゃんは中身を確認して
「医者なのに殺し屋を助ける何て何時もながら業が深い事やってるって思う時があるのよね。まあ区切りを付ければいいんだし・・・」
何時もの独り言だ。
中身を確認する。
そして
「確かに500万受け取った。毎度ありがと、抗生物質は1日2回、ちゃんと飲むのよ」
「へぇい」
小鈴は気の抜けた返事を返す。
コール・レイヤー。
元CIA工作員。
2年前、CIAサーバーから構成員の情報を抜き取り、失踪。
だがここ数カ月、日本で目撃される事が多くなり、CIAは血眼で探し周っているらしい。
その内、闇稼業の人間迄駆り出す始末。
小鈴も高額な仕事と、喜んで探し・・・た結果が今の状態。
小鈴は決して弱くない。
二本のダガーで殺るのが主だった戦闘スタイル。
接近されたらまず100%は死を覚悟した方がいいとすら囁かれている。
俺は銃器専門だし、リリーは爆薬のスペシャリストだ。
それぞれ足りない所を補って仕事をする事もある。
そして何時の間にかついた名称がヘル・ガールズ。
「と、言う訳だ」
女4人、居酒屋で日本酒をクーっと飲む。
「オヤジ、皮7本追加!」
俺のおごりでバクバク淡々食べまくり飲みまくり。
飲みまくるのはいいのだが、結果、俺のマンションで追加で飲むので、とんだうわばみだ。
つくねを口に入れながら思う。
居酒屋は鬱憤を晴らしにサラリーマンが屯し、明日の潤滑油を入れる場所。
それを酔っ払い製造工場何て言ったのはどこかの誰かの言葉。
酔っ払って何が悪い?忘れたい事だってあるんだ、とは会社員時代の俺の声。
そして、社畜のサラリーマンは家路に着く。
でも、しかしながら屯するのはサラリーマンだけではなく、色んな事情を抱えた人達も気軽に飲みに来れる。
ちょっと違うかもしれないが、人生小道の屋台みたいな役割もあるのかもしれない。
論外もあるが。
俺等みたいな常識から逸脱した人達も来る。
俺がつくね串を食べ終わると、今度はハツを食べながら
「でも小鈴が競り負けるなんてな・・・そんなに強かったのか?」
どぶろくを平然とオヤジに注文しながら小鈴は淡々と
「ああ、流石CIAだと思った。本当にアレは人を殺すだけのナイフ捌きだったよ」
話によると袋小路にコール・レイヤーを追い詰めた、はずだったのだが逆に餌を食わされた格好となった。
ダガーを一本取り出し、容赦なく急所を突いてくる。
勿論小鈴も黙っていない。
だがCIAのバウンティー規約にはアライブ、要は生きたまま捕まえろと言う文言がついていた。
殺すのは赤子の手をひねるより簡単だが、捕まえるとなるとその難易度は跳ね上がる。
結果が左肩を見事に持っていかれたと。
ダマスカス鋼のダガーも持っていかれ、左肩よりそっちを返して欲しいらしい。
まあ、刃物マニアの小鈴らしいと言えばらしい。
あーしかしこの寒い中、居酒屋で焼き鳥と熱燗を嗜めるって最高だなぁ。
「悪いな、此処の支払いアンタに任せていいか?」
突然背後の衝立の方から会計伝票が差し出される。
「フム、こっち来て話せれば良かったんだが。コール・レイヤー」
「白梅から口止めされてる事が多くてな。酒が入ってぽろりは流石にまずい。だが是だけは言える、お前達は国を敵に回しつつある。望んでいようがいまいが」
この距離はまずい、銃を抜く前に串刺しされるだろう。
「・・・コール、お前さんも巨大な敵を作ってるだろ?」
「白梅の依頼でな」
白梅の影響力が世界中に広がってるってこったか。
確かに白梅家は次々に名のある企業を吸収し、肥大化の一途を辿っている。
かと言って・・・否、あり得る。
現にアメリカ大統領の補佐官はグレゴリ・レッティングバーグと言う元FRBの総裁と言う白梅家の息がかかった奴とか、日本では日本銀行元総裁、竹本静代と言う現財務大臣。
兎も角、世界各国の主要な政治家に息を吹き掛けている。
それに気が付いたとしても、俺等みたいな奴等に闇に葬られる。
こりゃあ・・・予想以上にめんどくさい事に足突っ込んでるなぁ。
「コール、300やるからツナギを付けてくれん?」
「600」
「400」
「550」
妥協点だな。
「そんじゃあ、ほれ、小切手」
懐にしまってある小切手に金額とサインを書きコールに寄こす。
それを何事も無かったかのようにバックに入れ
「美人な死神さん、またね」
あれから3日。
コールからは未だ連絡が無い。
急がば回れ。
急いでもしょうがないので今日の夕飯を考える。
秋の味覚、秋刀魚、松茸、マイナーかも知れないが秋茄子も美味しい。
良し、麻婆茄子にするか。
銀杏の茶碗蒸しも添えてと。
ジージジ・・・。
小鈴の左肩を人工義手にしている。
三船の知り合いの義手義足職人らしい。
「どーだー?」
色んな意味で、ただ大雑把に。
普通の人なら主語述語何とやらと逆に問うだろう。
だが、付き合いが長い所為か、この「どーだー?」でありとあらゆる質問が詰め込まれている。
「聞いてくれよ、この義手3000万するんだってよ。破産しちまうよ」
笑いながら冗談を吐く。
この業界なら3000万位、一仕事で稼げてしまう。
ショボい仕事はしません、と言う事だ。
「それより、今日の夕飯、麻婆茄子と銀杏の茶碗蒸しでいいかー?」
「私、辛いの駄目―」
食べる事しか脳に入っていないのかどうか、エリカである。
「あんまり辛くしないぞ?」
「・・・杏仁豆腐付けて」
妥協点で出してきた申し出だろうが、ちょっと欲の皮が張っている。
まあ、ここで断って駄々こねられても困るちゃあ、困るが。
義手の調整をしていた小鈴もスイーツ押しに乗り
「わたしゃあスイートポテト食べたいなあ」
これまた手間がかかる物を所望し腐れやがって。
あの状態にするのに芋を何回も裏ごししなければいけない。
それ以前に近所のスーパーでサツマイモと・・・砂糖、上白糖の方、何故三温糖にしないのかと言うと、熱を加えると物によるが、くどくなる。
後は・・・あー、バターも、か。
さて、どうしたものか?
両方作るのは面倒。
ならば・・・
「エリカと小鈴でじゃんけん」
「そりゃない、サトリの能力を持ってる奴相手に勝てる訳ないだろ」
それもそうか。
こう言う場合によくやる物。
昔からあって、殺し合い等で決めない綺麗な方法。
そして何より運の元平等。
つらつら語ってしまったが、早く言ってしまえば何の変哲もないコイントスの事である
エリカがプルプル震える杏仁豆腐に蓮華を入れる。
まあ、結局コイントス負けた小鈴も満更でも無いのか口に運ぶ。
「しっかしまあ、ホント、家事全般得意だよなあ・・・この杏仁豆腐もめっちゃ美味いし」
小鈴が率直で飾り気のない、感想を述べる。
まあ、そう言ってもらえると作り手側の俺も嬉しくなる。
暇な時、銃を手入れしながら料理雑誌を見たりして・・・いつまにか付けられていた別名が女子力がやたら高い殺し屋。
実力も持ってるし、引退してどこぞの大富豪の御曹司とゴール・インしたら如何か?と良く言われる。
だがそう言う、世間知らずのボンボンは大っ嫌いで、寄ってきても三枚目に扱き下ろす。
金をちらつかせ女を釣る。
だが俺には効かない。
殺し屋の屋号“五代黒野常”を継ぎ、仕事して莫大な報酬を受け取っているので、金には困っていないし、恋愛って言うのは金だけじゃないと。
とまあ是が俺の哲。
「さて、俺を呼び出したのはお前だな?白梅吉八」
川の向こうは大都会の象徴であるか゚の様な、眩いばかりの宝石を散りばめた街並み。
人の営みが無ければただのガラスになる儚い物だ。
人が生まれあの宝石達の中で生き、そして死んで残したものが光り輝く。
死は無駄では無い、表の世界では。
俺はまたあの宝石の中で輝ける日が来るのか、などと言う淡い夢を持ってしまう。
「さて、そろそろあんたに預けとるエリカを返してもらおうかのう」
「今迄預かってやったんだ、もう五本寄こせ。白梅にしたら安い金額だろう?」
「そう言うと思ったよ、しかし欲の皮引っ張たらどうなるか死んで理解しろ」
吉八は腰から日本刀を抜いた。
早業。
場数を相当踏んでいるのが一太刀目で分かる。
ベレッタを抜く、そして・・・
タン。
吉八の額を撃ち抜く、そして倒れる吉八を横目に
「寒いな、カニ鍋でも作るか」
「おっと、何処に行く?ワシはまだ沢山いるぞ」
近くに止めてあったトラックの荷台が開き、吉八が、否、達がと付け加えた方がいいだろうか?現れる。
「ち、クローンか」
こいつら全員相手にしたら弾がいくらあっても足りない。
アサルトライフルでも持ってくればよかっただろうか?
何より、是だけクローンがいると戦慄と言うより本音は気持ち悪い。
でも、敵とは言え、ドヤ顔並べてるのに気持ち悪いと言うのは若干哀れ、そこで、力いっぱいの生暖かい視線を送る。
しかし、ピンチなのは変わらないので如何したものか?
それも、数十秒で解決した。
「常、ピンチそうだね!」
リリーである。
颯爽とプリウスで現れ、吉八達を跳ねる。
そしてボマーリリー由縁の爆薬投下。
空から見たら地上で花火が咲いていると勘違いされそうな程C4をばら撒き爆殺していく。
俺も確実に急所を射貫くが、何分頭数が多い。
「ここはあたしに任せて、エリカの所に!」
頼りになる友とはこう言う人物。
感謝してもしきれない。
俺のマンションの部屋。
鍵は壊され、何やら血が滴っている。
完全に乾燥していない所を見ると、20分以内の事だろう。
部屋に入ると、首を狙う虎の様な殺気に当たる。
だがその殺気の元の人物は・・・
「小鈴!エリカは!?」
「白梅の連中に連れていかれた、だけど大体の場所は分かった。港区港湾に停泊してる高級クルーズ船海鷹だ、私はもう少しここで遊ぶからお前はエリカの元に行け」
タン、タン。
パラパラパラ・・・!
壮絶な撃ち合い。
撃っても撃っても出て来る敵に若干うんざりしながら船を探る。
とある部屋を開けると
「・・・!?」
そこには白鷺とコールが茶を交わしていた。
二人はこちらを向くと
「お、奇遇だな?」
パタン。
俺は何も見てない、幻覚だ。
もう一度部屋に入る。
やっぱり白鷺とコールがいる。
「・・・何でいる?」
白鷺は現当主、赤鷲凛子の命を受け、小竹島の白梅が勝手に造った化学工場を破壊して来いとの事。
コールの方は、雇い主こそ言わなかったが、白鷺と利害関係が一致したので組む事になったそうである。
俺も経緯を説明すると
「白梅にエリカ、何て人物はいないぞ?」
如何やら一杯食わされた様だ。
では、あのエリカの真の正体は・・・?
謎である。
小竹島。
東京都から南に10キロ程行った所にある無人島である。
余り大きな島とはお世辞にも言えないが、昔は漁業でそれなりに栄えていた島だそうだ。
そんな島も過疎化が進み、灯台守が二人常任されるだけとなった。
そんな何もないこの小竹島を所有権を持つ赤鷲家の許可無く建機を持って勝手に研究施設を造ったのが白梅だそうだ。
かと言って強制撤去は莫大な費用がかかり、別に問題も起こしていない為、目を瞑っていた。
しかし、研究所が本格始動し始めると、胡散臭い噂が常に付きまとい、現にこの島に遊びに来ていた男女4人が神隠しにあったかの様に姿をくらました。
研究所内部に入るのは実に楽。
コールがCIAにいた頃に支給されたコンソールを繋げばあら不思議、と言う奴である。
俺は派手に爆薬で吹っ飛ばすつもりだったが効率悪そうなのでコールに任せた。
「たすけ・・・て」
無数のカプセルに入っている老若男女。
頭に一気に助けを懇願する声で埋め尽くされる。
それは人の形を成していなかった。
何を目的に人ならざる「物」を作らねばならなかったのか?
コールと白鷺は爆薬を次々仕掛け
「この者らは情けをかけず、一緒に吹っ飛ばす」
俺も同意見だ。
治療方法等ない、被験者になったのだろう。
廊下をひたすら走る。
爆薬をこれでもかとしかけながら。
と、大広間に出る。
そこにいたのは・・・。
「吉八、今度こそ終わ・・・!?」
吉八はどってぱらに大穴を開けられ絶命していた。
「常。それとそちらが・・・」
まるで何も無かったかのように俺の名前を呼ぶ。
本当に、否、エリカ事態が謎なのだ。
エリカはクスッと笑い、壁に付いていたボタンを一つ押す。
するとこの大広間の中央部の床が大きく開き、地球儀が現れる。
「フフ・・・この地球に私と同じクローンが放たれるわ・・・人類の粛清の為にね」
「要は、エリカ、お前だけの世界になるのか?」
俺はタバコに火を点け一つ吸う。
冷え切っているこの部屋に煙が漂う。
「何人か優秀人種は残してあげようかしら」
虫唾が走り、それどころか反吐すら出そうになる。
人の価値観だ。
其れをポット出の他人が評価する。
正に無粋。
それが美しかろうが不細工だろうが、美味かろうが、不味かろうが、それが個性となって世界を構成する。
肯定否定するなとは言わない。
その個人的な物を崩さない程度、客観的になるべき、と俺は考える。
さて、そんな事は置いとくとして
「神にでもなった気分か?」
「神?そんな偶像になったつもりは無いわね」
と、白鷺がメリケンサックをつけた拳をエリカの鳩尾に叩き込む。
だが・・・。
「血の気が多いわね、でも嫌いじゃないわ」
その瞬間、エリカが片手で白鷺の頭を掴むと、勢いよく空中に投げられる。
そのモーションで隙ありとばかりにコールが切り込みに突っ込む。
俺はベレッタを抜き2発、コールの後方支援とばかりに撃つ。
エリカはバックステップを踏み、コールの斬撃を避け、俺の放った銃弾をも避けて、反撃に出る、と思われたのだが
「止めなさい」
もう一人のエリカ。
あんだけ強いエリカがもう一人。
こりゃ積んだ、と思ったが、なにやらだが漠然とだが、放っている雰囲気が違う。
「元首様!?」
驚いて飛び退くエリカ。
俺等は既にどっちがどっちか見分けがつかない。
「貴方達もこの戦いの決着くらい想像できるでしょう?」
コールは懐から何やら不気味なスイッチを取り出す。
まさか?
否、コイツならやるかも。
不吉な考えがほんの数十秒ではあったが一時間位考えたかの如くありとあらゆる可能性を導き出す。
導き出すとは聞こえは良いが、結局の所、勘である。
だがその勘が当たった。
カチッ・・・。
乾いた音が鳴り響くと共に爆発が始まる。
「く、爆薬!?けど貴方達も道連れに・・・」
と急に二人のエリカが吐血する。
自分に何が起こったか理解出来ない様だった。
白いブラウスが赤く染まっていく。
「そ・・・ん・・・な!わ、た・・・しが・・・おり、じなる・・・!」
警報が鳴り響き砂煙が視界を遮る。
「お前もか」
命からがらで脱出する事に成功し、とある人物に電話をかける。
「あ、森羅か?何とかなった。流石に今回は死ぬかと思ったがな。報酬はずめよ?」
コールも電話を始める。
「加理恵お嬢様、片付けました」
「ほーん、結局エリカは十年前に死んでいた訳だ。それをクローニングして人形遊びか・・・あんまりいい趣味とは言えねえな」
小鈴はマロンケーキをモグっと口に入れる。
すると小鈴は美味いとばかりにニヤっとする。
余りに美味しそうに食べるのでちょっとだけ照れる。
「もう白梅とは関わりたくないな」
「あら、酷い言われようね」
エリカに瓜二つの人物がカフェテラスに現れる。
「・・・白梅加理恵さん、で良かったかな?」
終
「何をしている!?相手はたった一人だぞ!?」
男達は慌てふためく。
漆黒のマント、タキシード、シルクハット。
まるでマジシャンの様な出で立ちだが、残念ながら違う。
殺し屋。
自画自賛かもしれないが一流と自負している。
持つ鈍色のベレッタから発射された弾は確実に急所を穿ち、絶命させる。
さて、後、三人か。
マガジンを抜いて弾数を数える。
五発。
予備も無いので如何したものかとフム、と考えるが、こちらに向かって走ってくる足音が一つ。
俺はマガジンを突っ込み
パス!
サイレンサー付きの銃で男の死角から頭を撃ち抜く。
恐らく何が起こったか分からず葬られただろう。
まあ、一々殺った奴の顔など覚えてなどはいられない。
葬る度に十字を切る偽善心剥き出しのイカれた同業者は聞いた事もなく。
上か・・・。
場所が場所だけによく靴音が響く。
タンカー内部。
何を運んで来たのかは依頼主が頑なに口を閉ざす。
鼻の良い犬は容赦無く消される。
それがこの業界の鉄則、掟。
タンカーの最下層。
何じゃこりゃ?
青い液体に満たされたカプセルに一人の女性。
俺がまじまじと見ていると、女性が目を開けた。
そして
あら、珍しいわね?白衣の人達ばかりが集まるのに、今日はマジシャンさん?
脳に直接話し掛けてくるが、別段驚く事も無く
「残念ながら、違うんだなぁ、是が」
俺は徐に殺した奴から奪ったリボルバー拳銃で女性の入っているカプセルを撃つ。
ガオォォン!
凄まじい轟音が響き渡る。
だが。
「傷一つついてないか・・・こりゃあ参った」
マグナム弾である。
是で傷一つ付いて無い。
しょうがないと俺は腰から白い、ブニブニした塊を出し一〇センチ位に千切ってカプセルに貼り信管を突き刺しタイマーをセットして猛ダッシュで部屋から退避。
3・2・1、ドカン。
ボ!
青い閃光が走る。
船全体が大きく揺れ爆音が後から響く。
俺はもう一度部屋に入る。
すると女性が入っていたカプセルが割れて中から出ている途中であった。
「コンポジション4・・・軍用爆薬、何処で手に入れたかは聞かないわ」
そうして
「是から如何しましょうかね・・・」
「俺の依頼主はアンタを保護しろって言ってたが・・・白梅エリカさん?」
エリカは驚かない、其れ処か
「きな臭いわね、その依頼主って人・・・。ね?五代黒野常さん」
まあ、一見すれば只の女性であるが・・・何やら厄介事に巻き込まれた様だ。
俺は確かに黒一色のモノトーンの世界に生きる人間で、厄介事は幾度と無く押し付けられてきた。
だが其れも俺の意思は問われなかった。
寧ろ御免被る。
だが俺等は依頼主と言う独裁者と請負人と言う奴隷に分かれている。
独裁者が無理難題を押し付けてくれば其れに反する事は出来ない。
まあ、結果として何を論じてもこの得体の知れない女性を保護しなければならない訳で。
「へぇ・・・結構良い部屋に住んでるのね」
「良いから風呂入ってこい」
俺は冷蔵庫に入れてあったシュークリームをパクりと食べようと口を大きく開け、後2,3センチの所でフっと消える、否、空中に浮いている。
それがそのまま風呂場の方へ向かって行く。
俺は無言で、今度は冷蔵庫からティラミスを取ってフォークを立てようとした所、其れもふわりと重力度外視で浮いて風呂場に。
・・・。
何か、悟りの極致に達した。
俺は本当は大吟醸酒の当てに買ってあった辛子蓮根を冷蔵庫から出す。
其れも案の定空中を飛んで風呂場へ。
1分後程であろうか?
風呂場から悲鳴にならない悲鳴が上がったのは。
そしてエリカは一糸纏わぬ姿でバタバタバタと走ってきて・・・
「よひゅもりゃったわにぇ!」
「人様の物を勝手に食べるからだろ、自業自得だ」
俺はドカっとソファーに座り、腰からベレッタを抜くと分解し始める。
まあ、早い話、手入れである。
分解し終わって、俺はスレッドの入ったタイトスカートを脱ぎガーターストッキングも脱ぎ始める。
黒のタキシードも乱雑に脱ぐ。
ブラウス一枚になった所で立ち上がり、カウンターキッチンに立てていたグラスとバーボンを手に取り戻る。
一休憩だ。
ソファーの肘掛に背を預け、バーボンをグラスに注ぎ一口。
「げ・・・ストレートで飲むのね」
「まあな」
「それより折角美人なのに男言葉止めたら?」
一杯目のバーボンを飲み干すと、分解したベレッタを丁寧に拭う。
ほぼ毎日の日課になっている。
一番最初に握った愛銃であり、この世界に入るきっかけになった片道切符。
引き金を引いた時、もう二度と表舞台に立てない、そう覚悟し弾いた一発。
一度、人を撃ったら後は何の抵抗も無い。
常識になる。
刷り込まれる。
そして何時からか言葉遣いも荒くなる。
まあ、昔話を語る程、吟遊詩人でもない。
俺は
「余計なお世話だ」
粗方、煤を拭うと、非粘性オイルを塗る。
エリカはしばらく其れを見ていたが、暇になったのか俺の後ろに立ち
「綺麗な黒くて長い髪・・・黙ってれば大和撫子よ」
髪の毛をいじり始めた。
「何やってるんだよ?人の髪で」
「ん?三つ編みだけど?」
おいおい・・・。
まあ、たまに腰ぐらいまで伸びた髪の毛が邪魔で結ぶ事はあるが・・・三つ編みは流石に無い。
其れより
「いい加減、バスローブ位着たら如何だ?後、服は俺の使って良いから」
「・・・」
エリカはムスくれていた。
ブラウスのサイズで、だ。
「・・・常、胸のサイズは?」
と聞かれたので
「Gだけど?」
けろりと答えると
「この巨乳お化け―!」
そう言って人の胸を乱暴に揉みしだいてくる。
「痛たた!?止めろって!」
「この胸が言うか!?この・・・む・・・ね・・・ヒック」
泣くか?普通?
慰め様にも何とやら。
是は如何にもならない。
傷口に塩を塗り込む様な事だ。
そうして、泣く事5分。
何とか立ち直り掛けていたエリカは
「ウエストは?」
「58」
「・・・ヒップ」
「81」
ゴゴゴと言う昔ながらの擬音が聞こえて
「・・・この・・・!何処のモデルだぁぁ!」
と逆上プッツン。
いや、そうは言われても・・・。
俺は返答に困る。
「そうなんだよなぁ、容姿端麗、才色兼備、女の私でも惚れそうになるもんな」
「お、今日は普通通り玄関から入って来たんだな、小鈴」
小鈴。
同業者である。
まあ、古い付き合いで良く飲み歩く仲だ。
と、小鈴はエリカを見て
「・・・本当だったのか・・・」
思わずぽつりと口から漏れたのを俺は聞き逃さなかった。
「何やら何か知ってるな?」
俺は依頼主から、只保護しろと言う事と依頼金、日本円5000万が振り込まれていただけなのでエリカの素性は全く分からない。
なので少しでも、まあこの際なので少々パチっぽい情報でも良いので欲しい。
「・・・眉唾物だぞ?」
話はこうである。
莫大な財力と凶悪なまでの権力を欲しいがままにしている白梅家の次期当主にエリカは確実にその椅子に腰を掛けるだろうと。
だが、白梅エリカは体が弱く、後2,3年生きられれば奇跡と宣告されていたらしい。
ならばと白梅の財力でクローンを作ろうとプロジェクトが立ち上げられ、急ピッチで研究が続いた。
そして、何体ものクローンを作っては廃棄し、作っては廃棄しを繰り返し・・・成功した。
神をも恐れぬ所業の完成品ができた。
それが正に俺の目の前にいるのがエリカのクローンだと言うのだ。
そして・・・副産物、と言うのだろうか?
このエリカ、悟りと念動力が使えるらしい。
他にも色々使えるけど秘密、と言うのがエリカ。
まあ、あえて追及する気も無いのでスルー。
しかし、保護したけど依頼主から一向に連絡がこない。
如何したものか・・・?
苦慮中に
ピンポーン。
インターフォンのカメラを見る。
リリー。
爆薬のスペシャリストで、元は高層ビルの発破解体等をやっていたが、コースト世界中央銀行を発破し貯蔵されていた金塊をごっそり根こそぎ盗んだ。
そしてついた名前がボマーリリー。
この業界ではそれなりに有名である。
所で今日はパーティーをやる予定ではなかったが小鈴にしろ、リリーにしろ同業者、しかも殺し屋、壊し屋女子会何て滅多に無い。
だが、偶に暇が重なると何かしら遊びに出たり俺の家に集まったりする。
現に小鈴の手には芋饅頭、そしてリリー(カメラ越し)は手に四越屋名物クリームチーズケーキがあるのが分かる。
是が俗に、世間一般で言う女子会、と言うものなのだろう、多分・・・。
「不思議なんだけどよぉ、芋焼酎に饅頭が合うのは分かるんだがなぁ、チーズケーキも合うとは思わなんだ」
「おいおい、常、飲み過ぎだぞ?」
既にリリーはソファーで一升瓶を抱えて
「森羅のお兄様ぁ、リリーはリリーは・・・ぐえふぇふぇふぇ・・・」
恐らくピンクな夢を見ているのだろう。
其れとソファーによだれ垂らすの止めてくれと言いたいが
「こらぁ、リリーぃ、人んちのソファーに何してくれてまんねん・・・」
俺もグダグダ。
だが、小鈴はケロりとしている。
コイツ、強いもんな。
何分、ショットウォッカを一気で飲んでその上でリキュールソーダをがぶ飲み。
それでも倒れる事なく、そのバーのマスターが意地を張って強いカクテルを次々に突っ込んで来たのだが酔い潰れる事も無く。
エリカはと言うと、ㇷヨフヨと空中に浮きながら、饅頭を美味しそうに頬張っている。
まるで我関せず、と言った所か。
ふと、目が覚める。
日付変わって夜中の1時を指す時計の無機質な針。
哲学的に言うと、この人類が発明した指標は時に一喜一憂を運び、そして時代を運ぶ。
俺はバーボンをコップに一杯注ぎ、窓枠に座って一口。
外は雨。
俺が住んでいるマンションは丁度歓楽街の入り口辺り。
電光掲示板、ネオンの光が雨粒によって滲む。
この時間の所為も有るかも知れないがサラリーマン達がホテルに入って行くのが見える。
この限界がある無限の希望と欲望の街を見渡せるからこそ此処が気に入った。
雨と言う濁流に呑まれるが如く、歓楽街に老若男女が入って行く。
雨は嫌いでは無い。
寧ろ好きである。
まるで手に着いた血、罪悪を流してくれそうな、まあ、そんな都合の良い話は無いだろうが、心の中で、そう願っているのかもしれない。
俺はバーボンをもう一つ口にする。
そう言えば昔、天気予報であめが降るでしょうと聞き空に向かって大きく口を開けていたら
「何やってるの?」
と母親から聞かれ
「飴が降るって言ってたから」
それを聞いたお姉ちゃんがクスッと笑って
「飴は降らないわよ、代わりに草木さん達のお菓子が降るの」
それだけ言うと、サクマドロップのイチゴ飴をくれた記憶がある。
今考えると、自分でも失笑してしまう。
幼少期から今迄自分は何を成しえただろう?
深く考えれば考えるほど落胆する。
朝、大体9時位であろうか?
トースト、卵焼き、ウィンナー。
良い匂いがして目が覚める。
如何やらエリカが用意してくれたようだ。
・・・まあ、俺も年頃の女性だし、食事はちゃんと作っている。
一応、花嫁修業として・・・。
なので冷凍、冷蔵庫の中は食料品が整然と並んでいるし、食パンやお米、調味料等々全て粗方揃っている。
別に勝手に食べる分には構わない。
夏の暑さも遠のき、秋一番が響いて来る。
昨日の夜はドンパチでその後飲むだけ飲んでへべれけ。
女四人で何やってるんだろうと少々空しくなってきた今日この頃。
まぁ何時までも引きずっていても仕方ない。
朝ご飯を食べ終わると小鈴が
「エリカ、服買いに行くか!」
ある衣料品販売店。
質素な目立たない服が良いと言われたので、俺チョイス。
「地味過ぎないか?」
小鈴眉を顰め一言。
うーん・・・秋物チックで良い様な・・・。
リリーは
「ザ・ゴールド!」
・・・。
「「却下」」
俺と小鈴で猛烈否決。
大阪のおばちゃんでも着ないと思う。
あーじゃらこーじゃら言ってエリカの衣料品を買い込む。
そして車で待っていたエリカに手渡す。
帰り道。
首都高速中央環状自動車道を一路新宿ジャンクション迄。
普段なら滅茶苦茶混むのだが今日は普通通り車は流れ、カーラジオからはジャズが小気味よく聞こえて来る。
その途中で
「この辺に美味しいフレンチレストランあるよー」
リリーがそう切り出す。
まあ、リリーは舌が肥えてるのでハズレは無い。
「ほう・・・この子が・・・」
フレンチの食後のデザートにスプーンを入れている時にふむ、と言う顔でマジマジ見る。
ここのオーナシェフの賢首院さん。
かつて、フランス外人部隊に居たそうでガタイのいいおっさん、が第一印象である。
まさかこんな人がフレンチを作ろうとは思うまいが、本当に美味しい。
「白梅家は余りお関わり合いになりたくない一家だな、良い噂が無い。やっている事業がきな臭い、噂ではあるが、年2.3件、官製談合に関わっているらしい」
「まあ、俺はもう肥溜めに片足突っ込んで臭くなってるけどな」
ちょっとした皮肉。
其れより此処のババロア美味しいな、作り方教えて貰おう。
「で、リリー、何時もので良いんだな?」
「うん、五〇〇グラムで、後はニトログリセリンを一瓶」
「後、面白い物が手に入ったぞ」
「何?」
「水素弾薬式銃」
ほー、確かに珍しい、と言うか初耳である。
等のリリーは目を輝かせて
「いくら!?」
「おいおい、物見てから言った方がいいぞ」
このおっさんも頷き
「2割の確率で暴発するから、まだ研究段階の試作品ってところだ」
「あーあ、見てみたかったなぁ・・・」
「まぁ、暴発して腕ぶっ飛んで良いってんなら買えばいいしな」
と小鈴。
確かに。
余りにリスキーな物は戦闘中、肝が据わってなければ使えない。
命をかけ金代わりにベットするのは馬鹿である。
弱腰、と言われればそれまでだが、その弱腰と言った奴がもし同じ立場になったら命をベット出来るか?
まあ、人間なんてそんなもんだ。
例外もあるが。
命を懸けて守ろうとする時、または何もかも奪われた時。
俺はどっちであろう?
そんな道徳的な事を考えてハンドルを握っていると、雨が降って来た。
ワイパーが雨粒を浚う。
そう言えば、今朝のニュースで秋雨が降ると言っていたような気がする。
カローラが街灯の灯る道を走る。
俺を残し女三人眠りこける。
静かな道路だったが、突如前を走っていた車がスピードを緩めて来た。
俺はアクセルを踏み、追い越そうとすると急発進、進路を塞ぎ運転席から一人の男が出て来る。
「オイ!コラァ、ぶっ殺されてぇのか、クソアマァ!」
俺は窓を少し開けて
パス。
ベレッタで男の股間を撃ち抜く。
其れと同時に邪魔な車を、いつの間にか起きていたリリーがTNT爆薬で空中に、打上花火とまではいかないが、見事に空中に飛ばす。
男は股間の激痛と目の前で自分の車が無残にも一瞬で廃車になった事に一旦口を開けて呆けていたが、我に返り
「俺を誰だと思ってやがる!?敬興会の若頭だぞ!?」
ああ・・・あの会ね。
「連絡とってみ?五代黒野常と、斬鬼小鈴、ボマーリリーに喧嘩売りたいって」
男は携帯を取り出し、俺等の名前を言うと、この若頭の顔が見る見る青褪める。
そして先程迄とは一変、低姿勢で
「すすす、すみません、まさか名の通った方々とも知らずに・・・どどどうぞお通り下さい」
「あれ、少し脇に寄せとこう」
エリカは廃車になった車を見て、空中で手を動かす。すると車は脇の電柱にぶつかって止まる」
「これなら大丈夫でしょ」
いや、電柱アート・・・にしてもな。
そう、電柱に衝突しました、と言う、あるある芸術みたいな。
この若頭、硬直してる。
ま、ほっとくか。
サツマイモ。
毎年この時期が来ると町内会で焼き芋会があり、無類の甘い物好きの俺は近所の公民館に行く。
俺はジャージに着替えていると
「焼き芋かぁ・・・ホカホカ、ホクホクねぇ」
エリカが半分寝惚けているのか分からないが起きて来た。
食べ物の気配には敏感なのかもしれない。
「あ、常姉ちゃんだ!」
そう言うと少年少女が俺の周りに集まって来る。
俺は磁石か!と言うほどに。
丁度、町内会長さんが
「常さん、丁度いい所に来ましたねぇ、焼き立てですよー」
とアルミホイルを燃える枯れ葉の中から取り出す。
俺は軍手をはめ、アルミホイルに包まれたサツマイモをほこほこ言いながらかぶりつく。
美味しい。
この言葉に尽きる。
質素な調理法だが、その分、むやみに味をつけていないのでサツマイモの素の味がする。
暫し、サツマイモを堪能していたのだがそこに邪魔が入る。
「これはこれは、愛しのマイレディー、今日も光り輝いてるよ!」
近所の大金持ちの息子、まあ、言わば御曹司である赤鷲浩二が俺の手を取ろうとしたので、軽く払って
「そんなぽんぽんと人様の手を握りに来るんじゃない」
不快感満点の表情で注意する。
浩二は髪を掻き分け
「恥ずかしいのかい?愛しのマイフィアンセ」
「誰がフィアンセか。頭を北極の氷の中に突っ込むぞ」
サツマイモが冷える前にコイツを如何にかしなければ、と言うサツマイモ愛の俺はコイツを速攻で気絶させるが為、手刀を右片腹に入れる。
まあ、気絶はしないが悶絶はする、どちらも動けなくなる事に変わりはないので良しである。
復活する前に焼き芋二本確保。
俺は踵を返すと
「会長さん、ありがとうございました!」
それを聞いた近所の少年少女は
「常お姉ちゃん帰っちゃうの?」
「遊ぼうよー」
口々に不平を発する。
「これやるから今日は勘弁な」
チョコレートをバックから出し、渡す。
それを悶絶していた見ていた浩二は
「う・・・うわぁん!爺や、常がいじめるううう!」
と思いっ切り泣く。
そして何処からともなく現れる、一人の執事服の眼光鋭い爺さん。
げ・・・。
白鷺洋介、元暗殺屋。
相当強いので相手にしたくない人ナンバーワン。
俺は逃げ道を塞がれ如何したものかと思っていると
「今迄8回戦って私目が1勝ですな・・・」
其れだけ言うと白鷺は懐から煙管を取り出し襲って来る。
俺はギリギリで避ける。
余り離れ過ぎると僅かだが慢心が生まれ、隙を作ってしまう。
適度な緊張感があれば、実力以上の能力が出る。
相手は後少しで敵に攻撃が当たると錯覚しているので、何時しか攻撃が大振りになって来る。
そして・・・
ボ!
白鷺が渾身のストレートを入れて来たのを見計らい俺の掌底がまともに白鷺の鳩尾にめり込む。
「是で俺の8勝目だ。じゃあな」
家に帰るとエリカがソファーに寝そべり、煎餅を軽快音と共にほうじ茶をすすって昼ドラを見ていた。
何処の主婦の昼間再現してるんだよ、とツッコんでやりたかったが
「あ、焼き芋の匂い」
犬か!嗅覚、犬か!?
内心でツッコミまくり
「・・・ホレ、熱いから気をつけろよ」
アルミホイルに包まれた芋を投げる。
エリカは投げられた焼き芋を能力で浮かせ、アルミホイルを器用にむき、口に入れる。
「あ、美味しい、安納芋かしら?」
俺は首を傾げ
「さあ?」
専門家でもないし、貰う時に一々、是、安納芋ですか?何て聞かない。
美味しければ全て良し。
町内会費ひと月千円なので一応良いお芋かもしれない。
まあ、結論は先に述べた通り、美味しければ全て良し、である。
そこに
「常・・・」
玄関からか細い弱々しい声。
聞き違えなければ
「小鈴か?」
只事でない小鈴の声に急いで玄関に向かう、と左肩を吹っ飛ばされ、息絶え絶えの小鈴が倒れていた。
普通の人間なら慌てふためくだろうが、俺等の住んでいる世界では腕やら足やら吹き飛ばされても動揺しない。
俺は腕をタオルで縛り
「取り合えず止血剤、と・・・モルヒネとタバコどっちがいい?」
「両方」
俺はにっと笑い
「それだけ言えりゃあ問題ないな、モルヒネ持って来てやるから取り合えず上がれ」
それだけ言って俺はリビングに戻り、冷蔵庫から一つ、大きな酸化したふりかけの様な色をした物が詰まっている瓶を引っ張り出す。
エリカはまださつまいもの余韻に浸っている様だったが、その瓶を見て首を傾げつつ
「何の瓶?」
「ん?モルヒネ」
あっけらかんと、普通に返答した。
間。
何の間なのか理解出来ないので、瓶から少量、一撮みのモルヒネとパイプを持って小鈴の待つ玄関に向かう。
「ホレ、モルヒネ」
小鈴はパイプをくわえ、スーッと吸ってポプっと口から煙一つ。
「んで、誰にやられた?」
「元CIA工作員、コール・レイヤー。最近また有名になった古参者だ。名前位知ってるだろ?」
ああ・・・と言うか
「正直なところ、全く知らん」
小鈴はパイプの煙を豪快に噴き出す。
折角止まりかけていた傷口からの出血が若干又酷くなった様な?
でも、知らんもんは知らんし。
携帯を取り出す。
「三船か?急患だ、早く来てくれ」
「あらまぁ、また酷くやられたものねぇ」
5分。
目にも止まらぬ神業で見事に傷口を縫い合わせる。
「相変わらず早ぇえな三船のばっちゃん」
三船。
とある有名な大学病院の執刀医だったが、同僚の医療ミスを押し付けられ辞職、医師免許も剥奪され、流れ流れでこうして闇医者になったと言う訳である。
「あいよ、何時もの」
俺は封筒を懐から出した。
三船のばっちゃんは中身を確認して
「医者なのに殺し屋を助ける何て何時もながら業が深い事やってるって思う時があるのよね。まあ区切りを付ければいいんだし・・・」
何時もの独り言だ。
中身を確認する。
そして
「確かに500万受け取った。毎度ありがと、抗生物質は1日2回、ちゃんと飲むのよ」
「へぇい」
小鈴は気の抜けた返事を返す。
コール・レイヤー。
元CIA工作員。
2年前、CIAサーバーから構成員の情報を抜き取り、失踪。
だがここ数カ月、日本で目撃される事が多くなり、CIAは血眼で探し周っているらしい。
その内、闇稼業の人間迄駆り出す始末。
小鈴も高額な仕事と、喜んで探し・・・た結果が今の状態。
小鈴は決して弱くない。
二本のダガーで殺るのが主だった戦闘スタイル。
接近されたらまず100%は死を覚悟した方がいいとすら囁かれている。
俺は銃器専門だし、リリーは爆薬のスペシャリストだ。
それぞれ足りない所を補って仕事をする事もある。
そして何時の間にかついた名称がヘル・ガールズ。
「と、言う訳だ」
女4人、居酒屋で日本酒をクーっと飲む。
「オヤジ、皮7本追加!」
俺のおごりでバクバク淡々食べまくり飲みまくり。
飲みまくるのはいいのだが、結果、俺のマンションで追加で飲むので、とんだうわばみだ。
つくねを口に入れながら思う。
居酒屋は鬱憤を晴らしにサラリーマンが屯し、明日の潤滑油を入れる場所。
それを酔っ払い製造工場何て言ったのはどこかの誰かの言葉。
酔っ払って何が悪い?忘れたい事だってあるんだ、とは会社員時代の俺の声。
そして、社畜のサラリーマンは家路に着く。
でも、しかしながら屯するのはサラリーマンだけではなく、色んな事情を抱えた人達も気軽に飲みに来れる。
ちょっと違うかもしれないが、人生小道の屋台みたいな役割もあるのかもしれない。
論外もあるが。
俺等みたいな常識から逸脱した人達も来る。
俺がつくね串を食べ終わると、今度はハツを食べながら
「でも小鈴が競り負けるなんてな・・・そんなに強かったのか?」
どぶろくを平然とオヤジに注文しながら小鈴は淡々と
「ああ、流石CIAだと思った。本当にアレは人を殺すだけのナイフ捌きだったよ」
話によると袋小路にコール・レイヤーを追い詰めた、はずだったのだが逆に餌を食わされた格好となった。
ダガーを一本取り出し、容赦なく急所を突いてくる。
勿論小鈴も黙っていない。
だがCIAのバウンティー規約にはアライブ、要は生きたまま捕まえろと言う文言がついていた。
殺すのは赤子の手をひねるより簡単だが、捕まえるとなるとその難易度は跳ね上がる。
結果が左肩を見事に持っていかれたと。
ダマスカス鋼のダガーも持っていかれ、左肩よりそっちを返して欲しいらしい。
まあ、刃物マニアの小鈴らしいと言えばらしい。
あーしかしこの寒い中、居酒屋で焼き鳥と熱燗を嗜めるって最高だなぁ。
「悪いな、此処の支払いアンタに任せていいか?」
突然背後の衝立の方から会計伝票が差し出される。
「フム、こっち来て話せれば良かったんだが。コール・レイヤー」
「白梅から口止めされてる事が多くてな。酒が入ってぽろりは流石にまずい。だが是だけは言える、お前達は国を敵に回しつつある。望んでいようがいまいが」
この距離はまずい、銃を抜く前に串刺しされるだろう。
「・・・コール、お前さんも巨大な敵を作ってるだろ?」
「白梅の依頼でな」
白梅の影響力が世界中に広がってるってこったか。
確かに白梅家は次々に名のある企業を吸収し、肥大化の一途を辿っている。
かと言って・・・否、あり得る。
現にアメリカ大統領の補佐官はグレゴリ・レッティングバーグと言う元FRBの総裁と言う白梅家の息がかかった奴とか、日本では日本銀行元総裁、竹本静代と言う現財務大臣。
兎も角、世界各国の主要な政治家に息を吹き掛けている。
それに気が付いたとしても、俺等みたいな奴等に闇に葬られる。
こりゃあ・・・予想以上にめんどくさい事に足突っ込んでるなぁ。
「コール、300やるからツナギを付けてくれん?」
「600」
「400」
「550」
妥協点だな。
「そんじゃあ、ほれ、小切手」
懐にしまってある小切手に金額とサインを書きコールに寄こす。
それを何事も無かったかのようにバックに入れ
「美人な死神さん、またね」
あれから3日。
コールからは未だ連絡が無い。
急がば回れ。
急いでもしょうがないので今日の夕飯を考える。
秋の味覚、秋刀魚、松茸、マイナーかも知れないが秋茄子も美味しい。
良し、麻婆茄子にするか。
銀杏の茶碗蒸しも添えてと。
ジージジ・・・。
小鈴の左肩を人工義手にしている。
三船の知り合いの義手義足職人らしい。
「どーだー?」
色んな意味で、ただ大雑把に。
普通の人なら主語述語何とやらと逆に問うだろう。
だが、付き合いが長い所為か、この「どーだー?」でありとあらゆる質問が詰め込まれている。
「聞いてくれよ、この義手3000万するんだってよ。破産しちまうよ」
笑いながら冗談を吐く。
この業界なら3000万位、一仕事で稼げてしまう。
ショボい仕事はしません、と言う事だ。
「それより、今日の夕飯、麻婆茄子と銀杏の茶碗蒸しでいいかー?」
「私、辛いの駄目―」
食べる事しか脳に入っていないのかどうか、エリカである。
「あんまり辛くしないぞ?」
「・・・杏仁豆腐付けて」
妥協点で出してきた申し出だろうが、ちょっと欲の皮が張っている。
まあ、ここで断って駄々こねられても困るちゃあ、困るが。
義手の調整をしていた小鈴もスイーツ押しに乗り
「わたしゃあスイートポテト食べたいなあ」
これまた手間がかかる物を所望し腐れやがって。
あの状態にするのに芋を何回も裏ごししなければいけない。
それ以前に近所のスーパーでサツマイモと・・・砂糖、上白糖の方、何故三温糖にしないのかと言うと、熱を加えると物によるが、くどくなる。
後は・・・あー、バターも、か。
さて、どうしたものか?
両方作るのは面倒。
ならば・・・
「エリカと小鈴でじゃんけん」
「そりゃない、サトリの能力を持ってる奴相手に勝てる訳ないだろ」
それもそうか。
こう言う場合によくやる物。
昔からあって、殺し合い等で決めない綺麗な方法。
そして何より運の元平等。
つらつら語ってしまったが、早く言ってしまえば何の変哲もないコイントスの事である
エリカがプルプル震える杏仁豆腐に蓮華を入れる。
まあ、結局コイントス負けた小鈴も満更でも無いのか口に運ぶ。
「しっかしまあ、ホント、家事全般得意だよなあ・・・この杏仁豆腐もめっちゃ美味いし」
小鈴が率直で飾り気のない、感想を述べる。
まあ、そう言ってもらえると作り手側の俺も嬉しくなる。
暇な時、銃を手入れしながら料理雑誌を見たりして・・・いつまにか付けられていた別名が女子力がやたら高い殺し屋。
実力も持ってるし、引退してどこぞの大富豪の御曹司とゴール・インしたら如何か?と良く言われる。
だがそう言う、世間知らずのボンボンは大っ嫌いで、寄ってきても三枚目に扱き下ろす。
金をちらつかせ女を釣る。
だが俺には効かない。
殺し屋の屋号“五代黒野常”を継ぎ、仕事して莫大な報酬を受け取っているので、金には困っていないし、恋愛って言うのは金だけじゃないと。
とまあ是が俺の哲。
「さて、俺を呼び出したのはお前だな?白梅吉八」
川の向こうは大都会の象徴であるか゚の様な、眩いばかりの宝石を散りばめた街並み。
人の営みが無ければただのガラスになる儚い物だ。
人が生まれあの宝石達の中で生き、そして死んで残したものが光り輝く。
死は無駄では無い、表の世界では。
俺はまたあの宝石の中で輝ける日が来るのか、などと言う淡い夢を持ってしまう。
「さて、そろそろあんたに預けとるエリカを返してもらおうかのう」
「今迄預かってやったんだ、もう五本寄こせ。白梅にしたら安い金額だろう?」
「そう言うと思ったよ、しかし欲の皮引っ張たらどうなるか死んで理解しろ」
吉八は腰から日本刀を抜いた。
早業。
場数を相当踏んでいるのが一太刀目で分かる。
ベレッタを抜く、そして・・・
タン。
吉八の額を撃ち抜く、そして倒れる吉八を横目に
「寒いな、カニ鍋でも作るか」
「おっと、何処に行く?ワシはまだ沢山いるぞ」
近くに止めてあったトラックの荷台が開き、吉八が、否、達がと付け加えた方がいいだろうか?現れる。
「ち、クローンか」
こいつら全員相手にしたら弾がいくらあっても足りない。
アサルトライフルでも持ってくればよかっただろうか?
何より、是だけクローンがいると戦慄と言うより本音は気持ち悪い。
でも、敵とは言え、ドヤ顔並べてるのに気持ち悪いと言うのは若干哀れ、そこで、力いっぱいの生暖かい視線を送る。
しかし、ピンチなのは変わらないので如何したものか?
それも、数十秒で解決した。
「常、ピンチそうだね!」
リリーである。
颯爽とプリウスで現れ、吉八達を跳ねる。
そしてボマーリリー由縁の爆薬投下。
空から見たら地上で花火が咲いていると勘違いされそうな程C4をばら撒き爆殺していく。
俺も確実に急所を射貫くが、何分頭数が多い。
「ここはあたしに任せて、エリカの所に!」
頼りになる友とはこう言う人物。
感謝してもしきれない。
俺のマンションの部屋。
鍵は壊され、何やら血が滴っている。
完全に乾燥していない所を見ると、20分以内の事だろう。
部屋に入ると、首を狙う虎の様な殺気に当たる。
だがその殺気の元の人物は・・・
「小鈴!エリカは!?」
「白梅の連中に連れていかれた、だけど大体の場所は分かった。港区港湾に停泊してる高級クルーズ船海鷹だ、私はもう少しここで遊ぶからお前はエリカの元に行け」
タン、タン。
パラパラパラ・・・!
壮絶な撃ち合い。
撃っても撃っても出て来る敵に若干うんざりしながら船を探る。
とある部屋を開けると
「・・・!?」
そこには白鷺とコールが茶を交わしていた。
二人はこちらを向くと
「お、奇遇だな?」
パタン。
俺は何も見てない、幻覚だ。
もう一度部屋に入る。
やっぱり白鷺とコールがいる。
「・・・何でいる?」
白鷺は現当主、赤鷲凛子の命を受け、小竹島の白梅が勝手に造った化学工場を破壊して来いとの事。
コールの方は、雇い主こそ言わなかったが、白鷺と利害関係が一致したので組む事になったそうである。
俺も経緯を説明すると
「白梅にエリカ、何て人物はいないぞ?」
如何やら一杯食わされた様だ。
では、あのエリカの真の正体は・・・?
謎である。
小竹島。
東京都から南に10キロ程行った所にある無人島である。
余り大きな島とはお世辞にも言えないが、昔は漁業でそれなりに栄えていた島だそうだ。
そんな島も過疎化が進み、灯台守が二人常任されるだけとなった。
そんな何もないこの小竹島を所有権を持つ赤鷲家の許可無く建機を持って勝手に研究施設を造ったのが白梅だそうだ。
かと言って強制撤去は莫大な費用がかかり、別に問題も起こしていない為、目を瞑っていた。
しかし、研究所が本格始動し始めると、胡散臭い噂が常に付きまとい、現にこの島に遊びに来ていた男女4人が神隠しにあったかの様に姿をくらました。
研究所内部に入るのは実に楽。
コールがCIAにいた頃に支給されたコンソールを繋げばあら不思議、と言う奴である。
俺は派手に爆薬で吹っ飛ばすつもりだったが効率悪そうなのでコールに任せた。
「たすけ・・・て」
無数のカプセルに入っている老若男女。
頭に一気に助けを懇願する声で埋め尽くされる。
それは人の形を成していなかった。
何を目的に人ならざる「物」を作らねばならなかったのか?
コールと白鷺は爆薬を次々仕掛け
「この者らは情けをかけず、一緒に吹っ飛ばす」
俺も同意見だ。
治療方法等ない、被験者になったのだろう。
廊下をひたすら走る。
爆薬をこれでもかとしかけながら。
と、大広間に出る。
そこにいたのは・・・。
「吉八、今度こそ終わ・・・!?」
吉八はどってぱらに大穴を開けられ絶命していた。
「常。それとそちらが・・・」
まるで何も無かったかのように俺の名前を呼ぶ。
本当に、否、エリカ事態が謎なのだ。
エリカはクスッと笑い、壁に付いていたボタンを一つ押す。
するとこの大広間の中央部の床が大きく開き、地球儀が現れる。
「フフ・・・この地球に私と同じクローンが放たれるわ・・・人類の粛清の為にね」
「要は、エリカ、お前だけの世界になるのか?」
俺はタバコに火を点け一つ吸う。
冷え切っているこの部屋に煙が漂う。
「何人か優秀人種は残してあげようかしら」
虫唾が走り、それどころか反吐すら出そうになる。
人の価値観だ。
其れをポット出の他人が評価する。
正に無粋。
それが美しかろうが不細工だろうが、美味かろうが、不味かろうが、それが個性となって世界を構成する。
肯定否定するなとは言わない。
その個人的な物を崩さない程度、客観的になるべき、と俺は考える。
さて、そんな事は置いとくとして
「神にでもなった気分か?」
「神?そんな偶像になったつもりは無いわね」
と、白鷺がメリケンサックをつけた拳をエリカの鳩尾に叩き込む。
だが・・・。
「血の気が多いわね、でも嫌いじゃないわ」
その瞬間、エリカが片手で白鷺の頭を掴むと、勢いよく空中に投げられる。
そのモーションで隙ありとばかりにコールが切り込みに突っ込む。
俺はベレッタを抜き2発、コールの後方支援とばかりに撃つ。
エリカはバックステップを踏み、コールの斬撃を避け、俺の放った銃弾をも避けて、反撃に出る、と思われたのだが
「止めなさい」
もう一人のエリカ。
あんだけ強いエリカがもう一人。
こりゃ積んだ、と思ったが、なにやらだが漠然とだが、放っている雰囲気が違う。
「元首様!?」
驚いて飛び退くエリカ。
俺等は既にどっちがどっちか見分けがつかない。
「貴方達もこの戦いの決着くらい想像できるでしょう?」
コールは懐から何やら不気味なスイッチを取り出す。
まさか?
否、コイツならやるかも。
不吉な考えがほんの数十秒ではあったが一時間位考えたかの如くありとあらゆる可能性を導き出す。
導き出すとは聞こえは良いが、結局の所、勘である。
だがその勘が当たった。
カチッ・・・。
乾いた音が鳴り響くと共に爆発が始まる。
「く、爆薬!?けど貴方達も道連れに・・・」
と急に二人のエリカが吐血する。
自分に何が起こったか理解出来ない様だった。
白いブラウスが赤く染まっていく。
「そ・・・ん・・・な!わ、た・・・しが・・・おり、じなる・・・!」
警報が鳴り響き砂煙が視界を遮る。
「お前もか」
命からがらで脱出する事に成功し、とある人物に電話をかける。
「あ、森羅か?何とかなった。流石に今回は死ぬかと思ったがな。報酬はずめよ?」
コールも電話を始める。
「加理恵お嬢様、片付けました」
「ほーん、結局エリカは十年前に死んでいた訳だ。それをクローニングして人形遊びか・・・あんまりいい趣味とは言えねえな」
小鈴はマロンケーキをモグっと口に入れる。
すると小鈴は美味いとばかりにニヤっとする。
余りに美味しそうに食べるのでちょっとだけ照れる。
「もう白梅とは関わりたくないな」
「あら、酷い言われようね」
エリカに瓜二つの人物がカフェテラスに現れる。
「・・・白梅加理恵さん、で良かったかな?」
終
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