好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った

しがついつか

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姉とサンドウィッチ

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「――腹が減った…」


昨晩 父と口論して以降、ふてくされてベッドの住人になっていたジョージだったが、さすがに昼過ぎになると腹が減ってきた。
だが食堂に行く途中で父と顔を合わせるようなことがあったら困る。

気まずいのだ。

父は正論を説いただけで、我が儘を言っているのはジョージの方だ。
それを理解しているからこそ、会ったときに何を言えば良いかわからない。
謝ることは、彼女との結婚を諦めて政略結婚を受け入れることになる。
それはしたくなかった。

17歳となったジョージのために良い縁談はないかと社交に精を出す母とも会いたくないので、結果として部屋の外に出られずにいる。
部屋にはバスルームが付いているので、籠もっていて困るのは食事だけだ。


――トン、トン。


使用人が通りかかるのを待って食事を頼むべきかジョージが迷っていると、ドアがノックされた。


「ジョージ、いる? サンドウィッチを持ってきたから、ちょっと開けてちょうだい」
「…姉さん?」



声の主が両親ではなく割と仲の良い姉であることと、何よりもサンドウィッチという単語に惹かれてジョージは部屋の鍵を開けた。
ドアを開くと、廊下には布巾をかけたバスケットを持つ姉の姿があった。


「入るわね」
「あ、うん」


姉のカレンは、さっさと室内に入った。

体調不良の時など、部屋で食事が取れるように小さなテーブルセットがある。
彼女はテーブルにバスケットを置くと、そこから紅茶を淹れたボトルとカップを2つ取り出した。

カップに注がれた紅茶の良い香りが部屋に広がる。

バスケットの片側には、先程姉が言った通りサンドウィッチが詰められていた。


「――まずは食べなさい」


『話はそれからだ』と言外に含ませて姉が促す。

空腹だったジョージは、ありがたくサンドウィッチを頬張ることにした。

ジョージが食事をする間、カレンは彼の向かいに座り静かに紅茶を飲んでいた。






姉のカレンは今年で二十歳になるが、ジョージと同様に婚約者がいない。

嫡男であるジョージとは異なり、彼女は他家に嫁入りする必要があるわけなのだが、今まであった縁談は本人の意思によりすべて断っていた。

カレンは貴族の夫人として社交に精を出すよりも、フィールドワークにより領地の農産物について研究することを望んだのだ。
現在彼女は領地のために、日々冷害に強い麦の研究をしている。
成果は上々。

ジョージが妻を迎え伯爵家を継ぐ頃には家を出て、研究者として弟を支え領地のために働くつもりでいる。

カレンの性格やこれまでの研究の成果を受けて、両親達は彼女が嫁ぐことで生まれる縁よりも、この地に留まる方がグレイキャット領の発展に繋がるとみて許可した。

――もっとも、婚姻するメリットのある良家の嫡男達には既に婚約者がおり、残っているのは嫁いでも嫁がなくても良いような相手ばかりだったというのも大きい。
相手方からしたら研究者として働くカレンとの婚姻には大きなメリットがある。
だが、グレイキャット伯爵家にとってはなんらメリットがない。――まあ、デメリットもないが。


色々な事情が重なって、カレンは研究の道を歩むことを許された。




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