好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った

しがついつか

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選んだ道(最終話)

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ジョージが二十歳となった年に、グレイキャット伯爵家当主の代替わりが行われた。

またそれに伴い、前当主が持つもう一つの爵位――グリーズ男爵をことも発表された。


間もなく貴族名鑑が更新され、そこには次の名が記載されている。

カレン・グレイキャット伯爵。
ジョージ・グリーズ男爵。








グリーズ男爵となったジョージは本日、親族と親しい友人のみを招待した平民街の式場で、愛しい人との結婚式を挙げた。

ジョージが男爵となったことにより、平民の妻を迎えることへの障害を取り払うことができたのだ。

男爵となったジョージの周囲からは多くの人が去り僅かな友人だけが残ったが、彼はそれを嘆くことなく変わらずに付き合える友人の存在を喜んだ。
マリとの結婚を選んだことで多くのものを失いはしたが、伯爵家の次期当主であった頃よりも彼の生活は充実している。


「マリ…」
「なぁに?」
「結婚してくれてありがとう――愛してるよ」
「ふふ。私もよ!」


(姉さんには一生頭が上がらないままだろうな…)


だが嫌な気持ちにならない。


あの日アドバイスをくれた姉のおかげで、ジョージは一番大切なものを諦めずに済んだ。
マリもまた、ジョージを愛する気持ちは確かだが伯爵夫人としての生活は受け入れ難いため、生活環境の変化が少ないことに安堵していた。


「姉さん、本当にありがとう」
「ありがとうございます」



新郎新婦は揃ってカレンに感謝の言葉を告げ、その顔はどちらも幸せそうであった。

自然とカレンも微笑む。


傍で見守るジョージの両親と、マリの母も笑顔だった。
来場した皆が、彼らの結婚を心から祝福していた。











「よかったね、カレン」
「――ええ」


カレンの肩を抱くのは、2年前に結婚した彼女の夫であるロックだ。
彼もまた、優しい眼差しで義弟夫婦を見つめている。


ホワイトフォックス子爵家の三男であったロックは、カレンより6歳年上である。

ジョージがマリと結婚するため男爵になるにあたって、カレンがグレイキャット伯爵を継ぐことは必須条件であった。
親戚から後継者を選ぶには、教育する時間が足りないので却下だ。

そのためカレン――もちろん両親もだが急いで彼女の伴侶を探した。

あくまでも伯爵を継ぐのはカレンだ。
彼女に変わって伯爵家を乗っ取るような野心のある男は避けなければならない。

伯爵となっても研究する時間をとるつもりのカレンは、欲を言えば領地経営や書類仕事が滞りなく出来る相手を求めていた。

やがて母の社交の成果により、長兄が治める領地で雑務をこなしていたロック・ホワイトフォックスと縁を結ぶことが出来た。


今まで縁が無く結婚を諦めていたロックは突然の婚約話に驚いたが、すぐさま了承した。
密かに憧れていた才女との婚約話なのだ。断る理由など無い。
ロックは己の幸運を神に感謝した。

カレンが爵位を継ぐ経緯を聞くと、より一層好きになった。
ロックはカレンに誠実であることを常に心がけている。


ゆっくりと信頼関係を築き上げた2人は良き夫婦となり、現在は協力し合って領地経営を行っている。

当主としての仕事のため、カレンは独身時代と比べると研究する時間がまったく取れなくなっているが、後悔はしていない。




弟にアドバイスをするというだから。




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