背中越しの温度、溺愛。

夏緒

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35話 デジャヴュ。3

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 指の感触がふわふわした頭には本当に気持ち良くて、まだ碌に胸しか触られていないのに下半身がどんどん熱を持つ。不思議と羞恥心はなくて、腰が揺れるから自分で手を掛けて擦った。その手を、上から彼の手が覆ってくれる。
 豪くんの事は忘れていた。

 軽く揺さ振られながら奥まで入れられると、何故か満たされたような気分になって、不思議と泣きたい気持ちになった。
 揺すられる度に声が漏れる。気持ちが良い。それしかない。頭の中が真っ白になって、無意識に名前を呼んだ。

「あ、あ……ぅあ、んああ、ヒカル!」

 瞬間、はっとして我に返った。
 今、自分は誰を呼んだ。

「あ、ごめんなさい……」
「別に構わん。好きに呼べ」
 切れ長の目のその人は、特に気にする様子もなく動き続けた。でもこっちは自分の口から出た名前に驚いて、もう集中なんてまったく出来なかった。
 それでもそんな頭とは裏腹に身体は欲望に忠実で、間違いなく限界に近付いていく。ぐちゃぐちゃになってしまった思考のまま、突き上げられて吐き出した。



「この匂い……」
 誰かに似ていると思った。
 見た目じゃない。雰囲気が、似ていた。
 その人はベッドに座ったまま、拾い上げたシャツから煙草の箱を取り出した。一本指に挟んで、横になっているおれの唇にフィルターを近付ける。
「おれ、吸わないです」
「吸わなくて良い。火はつけないから、軽く噛んでみろ」
 言ってから、彼は自分でまず手本のようにフィルターを噛んで見せた。パチ、と音がした。
 もう一度宛がわれたから、見よう見真似でフィルターを噛んでみる。パチパチッとカプセルの弾ける音がして、あのカシスミントの香りが広がった。
「あ、」
「これの匂いだろう」
 その人はその煙草に火をつける事はなく手を離した。唇には、煙草が残った。
 立ち上がって服を着るのを見て、自分でも何故か分からないけど、思わず声を掛けた。
「あの、また会えますか」
「気が向けばな」
「名前、教えてください」
 彼は最後の一枚を羽織って、こちらを向く。

「藤城だ。藤城 光昭」
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