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38話 夢。1
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side I
「なぁ、どこが良い?」
おれはどこでも良いよ。好きなところ、決めなよ。
「そう言うなよ。折角なんだから、二人で決めよう。パンフレット沢山持って帰ったんだ」
これ、海外ばっかりじゃないか。
「何だ、国内が良いのか?」
国内で充分だろ、2泊3日なんだから。
「樹はどこに行きたいんだ?」
そうだなあ……近場の温泉、とか?
「疲れたオッサンみたいだな」
そういうヒカルは、どこに行きたいとかあるのか?
「俺は、そうだなぁ、南の島。ヨーロッパでも良いな、俺の買い付け先を案内して回っても良いし」
仕事、余程好きなんだな。
「ああ、悪い。そうだよな、折角仕事じゃなくて旅行なんだから、やっぱり南だな」
結局海外じゃないか。
「何だよ、良いじゃないか。知り合いが誰も居ないようなところを選んでさ、好きな事だけするんだ。ホテルで好きなだけ寝て、海行って、美味しい店で食事をしよう。買い物だって、観光だって、無計画にふらふらするんだ。ホテルに戻ったら夜景を見たりさ、一緒に風呂に入って、食事を済ませたらベッドに戻る」
はは、それ二泊で出来るかなあ。
「何とかなるよ。だから樹、パンフレット全部やるから、次に会う時までにどこが良いか、ちゃんと選んでおけよ。決めたらパスポート取る手続きしよう」
軽く息を吸い込んで、薄く目を開ける。
朝起きたら部屋に一人だった。全身を取りきれない疲労が覆っている。頭がまだぼんやりする。
枕の隣まで落ちてきている時計を拾い上げると、
「九時か……」
豪くんとの約束は昼からだから、まだ寝れる。
まだ起きたくない。さっきまで、とても幸せな夢を見ていた気がする。あまりちゃんと思い出せないけれど、再び目を閉じればまた続きが見られるような気がして、寝返りを打ちながら布団に潜り込んだ。
「うわ……っ」
布団を動かした途端、中に篭っていた生臭い匂いが鼻について、まどろみが一気に消え失せる。気付けば自分は何も着ていない上に、昨夜の跡がそのままこびりついたように残っていて、腹の上と、触れば上下のシーツもガビガビになっていた。全身が渇いた汗に塗れてべたついている。
「洗濯……あ、いや、風呂……」
仕方なしに回らない頭で何とか布団から這い出し、ベッドから降りてへたりこんだ。
「うぅー……だる……」
腰の下の辺りが異様な鈍痛を孕んでいる。全身が鉛のように重かった。
床につけた左手がさわりと何かに当たって、見れば前に一本だけ置いて行かれた煙草だった。もう碌に匂いもしないけれど、何と無く捨てられなくて、ベッドの宮に置いたままにしていた。昨夜の派手な振動で時計と一緒に落ちてきたのだろう。
意味もなく唇に挟んでみて、そのままのそりと立ち上がった。まだ時間があるから、先に風呂だ。シーツを洗うのは、その後からでも良い。
風呂場に向かう途中で目に入った玄関ドアは、鍵が開きっぱなしになっていた。
「なぁ、どこが良い?」
おれはどこでも良いよ。好きなところ、決めなよ。
「そう言うなよ。折角なんだから、二人で決めよう。パンフレット沢山持って帰ったんだ」
これ、海外ばっかりじゃないか。
「何だ、国内が良いのか?」
国内で充分だろ、2泊3日なんだから。
「樹はどこに行きたいんだ?」
そうだなあ……近場の温泉、とか?
「疲れたオッサンみたいだな」
そういうヒカルは、どこに行きたいとかあるのか?
「俺は、そうだなぁ、南の島。ヨーロッパでも良いな、俺の買い付け先を案内して回っても良いし」
仕事、余程好きなんだな。
「ああ、悪い。そうだよな、折角仕事じゃなくて旅行なんだから、やっぱり南だな」
結局海外じゃないか。
「何だよ、良いじゃないか。知り合いが誰も居ないようなところを選んでさ、好きな事だけするんだ。ホテルで好きなだけ寝て、海行って、美味しい店で食事をしよう。買い物だって、観光だって、無計画にふらふらするんだ。ホテルに戻ったら夜景を見たりさ、一緒に風呂に入って、食事を済ませたらベッドに戻る」
はは、それ二泊で出来るかなあ。
「何とかなるよ。だから樹、パンフレット全部やるから、次に会う時までにどこが良いか、ちゃんと選んでおけよ。決めたらパスポート取る手続きしよう」
軽く息を吸い込んで、薄く目を開ける。
朝起きたら部屋に一人だった。全身を取りきれない疲労が覆っている。頭がまだぼんやりする。
枕の隣まで落ちてきている時計を拾い上げると、
「九時か……」
豪くんとの約束は昼からだから、まだ寝れる。
まだ起きたくない。さっきまで、とても幸せな夢を見ていた気がする。あまりちゃんと思い出せないけれど、再び目を閉じればまた続きが見られるような気がして、寝返りを打ちながら布団に潜り込んだ。
「うわ……っ」
布団を動かした途端、中に篭っていた生臭い匂いが鼻について、まどろみが一気に消え失せる。気付けば自分は何も着ていない上に、昨夜の跡がそのままこびりついたように残っていて、腹の上と、触れば上下のシーツもガビガビになっていた。全身が渇いた汗に塗れてべたついている。
「洗濯……あ、いや、風呂……」
仕方なしに回らない頭で何とか布団から這い出し、ベッドから降りてへたりこんだ。
「うぅー……だる……」
腰の下の辺りが異様な鈍痛を孕んでいる。全身が鉛のように重かった。
床につけた左手がさわりと何かに当たって、見れば前に一本だけ置いて行かれた煙草だった。もう碌に匂いもしないけれど、何と無く捨てられなくて、ベッドの宮に置いたままにしていた。昨夜の派手な振動で時計と一緒に落ちてきたのだろう。
意味もなく唇に挟んでみて、そのままのそりと立ち上がった。まだ時間があるから、先に風呂だ。シーツを洗うのは、その後からでも良い。
風呂場に向かう途中で目に入った玄関ドアは、鍵が開きっぱなしになっていた。
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