あの空に届くまで

ねこ

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戒正者リラ

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風が吹き荒れ、雷が鳴る。
「逃げられないよ?快晴。『雷爪(ラウズ)』」
雷の爪が向こうから飛んでくる。
バリバリッ
後ろの石垣を容易く焼き焦がして壊した。
かわした快晴が身をかがめて逃げる。
「『風来砲(エアーバレット)』」
大きめの風球が放たれた。周囲の木々は揺れて向かってきた。が雷でかろうじて防ぐ。
「さすがに手強い」
大智も快晴も楽しそうだ。

 
「『飛翔剣』!」
カキン!
勝治朗の柄とぶつかり、あたりに風が起こった。
「俺もそろそろやるか」
そういうと水に刀身を浸した。すると水が巻き上げられ刀身が浮かび上がる。
「『追憶の霊水(シュバルツ)』」
「なんだ、あれ」
勝治朗は石垣を軽やかに走って向かってくる。
勝治朗は水を槍のように飛ばしてくる
それを大地が跳ね返し勝治朗の足元を崩し勝治朗が落ちる。
「本気で行く」
「負けるかよ!」
「俺の剣は防げない!」
大地の剣は当たったはずだが手応えがない。一刹那の間に勝治朗が後ろに立っていた。
「なにをした?」
「何かだ」
大地が勝治朗のほうへ足を進めるが足が震えて動かない。
「なんだ、これは」
「俺の剣は相手の精神を切る。お前は恐怖で動けない。」
「くっそ」
パン!風船を割られた。
「やられたよ」
立てない大地の腕を勝治朗が伸ばしてつかむ。2人は笑いながら剣を収めた。
 
「あはははは」
太陽が火だるまになり、亜瑠香を探している。近くの木々は燃えている。
それでも尚笑いを絶やさず歩いてくる。
「厄介なやつにあたったわね」
亜瑠香は民家の壁の裏に隠れて凌ぐ。ハイビスカスの花が無残に燃えゆく。
「さすがに、でてこないかー」
ヒュン!
顔を矢がかすめた。
「いって!ん?あそこかな?」
満面の笑みからは狂気すら感じる。
「『前向き炎(ポジティブポルド)』」
ニコちゃんマークの火炎が上から降ってくる。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
間一髪で逃げだした。
「逃がしたっぽいな」
「全く、人騒がせね!」
太陽の頭にトンボが止まり水をまき散らした。
あたりは水蒸気に包まれた。その中から出て来たのは全ての幸せが出て行ったような太陽。
「はぁ、もういいわ降参降参。ほんとにさやってらんねぇよなまじ。なんなのレクリエーションとか」
ブツブツが止まらない。
亜瑠香はなんとなく申し訳なく思い、海星をそっと頭の上においた。
 
「『紫電砲(ブリガロン)』」
「『風球乱舞(エアリアルワルツ)』」
2つの力がぶつかり、気流が起き辺り一面を破壊し尽くした。
「やるね、はぁはぁ」
「ほんと、はぁはぁ」
2人はその場に倒れてしまった。高らかに笑いながら。
「そこまで」
凪の号令でレクリエーションは幕を閉じた。結果は引き分けであった。
 
その夜
テーブルの上には豪勢に盛られた海鮮や果物がずらりと並ぶ。所狭しと並ぶ料理に食べ盛りの子供達が待てるはずもなく海辺の家で宴が始まった。大智が快晴に耳打ちをする。
「普段はこんなに豪勢じゃないんだが君らが来たから少し背伸びしたんだ」
何やかんやでもてなされてるんだと快晴は思いながらローストビーフを食べる。
「なぁ、大智君。君達ってその....」
「革命団?」
「そう、ほんとなのか?」
「事実さ。丁度1年前くらいに当時の政府相手に戦争をふっかけて成功させた。」
「す、すごい」
1年前と言ったら自分は何をしていただろう。少なからず大冒険をした覚えはない。
「そんで、今に至るよ。仮にも3月の雨はお尋ね者だから身を隠せる場所がいいと思って」
「そんなことが。メンバーは今いるのが全員?」
「もう少しいたかな。」
「そっか」
その夜は華やかに彩られ
フューガレアとレイブルー双方のエクソシスト達はよりいっそう仲を深めたのであった。
 
朝。ものすごい衝撃音で目が覚めた。寝ぼけ眼の快晴もパジャマ姿で飛び起きた。他の皆も起こされたようで続々と海をモチーフにしたリビングに降りてくる。
「何事!?」
梅雨葉が半ばキレた状態で降りてくる。カエルの模様が入ったパジャマを着て。
「外に何か降ったみたいです」 
「とりあえず様子を見ましょ」
「なんだろー?ははは」
太陽が外へ出て行ってしまった。
「ちょっと太陽」
後を梅雨葉達が追いかける。
「僕たちも行きましょう。あれ?亜瑠香は?」
「上でいびきかいて寝てる」
呆れながら快晴率いるフューガレアチームは外へ飛び出した。
外にあった。いやいたものは.......少女であった。
しかし普通の少女ではない。少女を中心にクレーターができていた。
「嘘だろ」
大地が声をあげた。
少女は無傷で立ち上がったのだ。そしてこちらへと歩みを進めてくる。後ずさりする彼らの前で止まった。
「あなたは誰なの?」
「......戒正者」
「戒正者?」
「世界を正す者」
どこか神秘的な雰囲気を匂わせるその少女は無機質に応えた。まるでアンドロイドのように。
「私は人を抹殺しにきた。」
周囲に緊迫感が張りつめる。さっと身構えた。
「この世界の破滅招く」
「なんなんだ。こいつ」
「知るか敵に変わりないサクルーカス!」
「ラギア!」
少女は瞬きもせず表情一つ変えずに立っている。
ほんとに同じ人間なのだろうか。
「敵意認識。戦闘開始。殲滅する」
来る!少女の髪が風で上にあがり白く淡く光り出した。
「『紫電砲(ブリガロン』」
紫色の閃光が大智の指先から放たれる。その風圧で大智の服が揺れる。
それは少女に真っ直ぐ飛んでいった。
「100万ボルトの高圧電流。」
紫電砲は少女の前で止まりそのまま消滅した。
「くっ、なんなんだ。こいつ」
「私は戒正者リラ。異世界から出でし者。」
「いせ.......かい」
「殲滅する」
巨大な刺々しいハンマーを取り出す。禍禍しい模様が刻まれ毒々しい紫色だ。リラは思い切り地面に叩き落とした。
「うわっ!なんだこれ」
大智の体が浮き始めた。
あちらこちらを浮遊しながらリラのハンマーで地面に叩き落とされた。
「ぐはっ!」
「お兄ちゃん!!」
梨花が駆け寄り抱き起こす。そこに詩音が駆け寄り手当てをし始め、心配そうに見ている梨花の手を握って笑いかけた。
「とんでもないな」
「あなた方の敗北確率は99パーセントです。」
尚も表情を変えずに迫ってくる。
「そういうの好きじゃない!」
快晴が接近戦を仕掛ける。右フック、左カット
ジャブ。古斗に教え込まれたボクシングで応戦する。リラはそれらをいなし続ける。
「全然隙がない。」
息が上がってきた。
「そろそろ試してみるか」
「無駄な抵抗はよしなさい」
快晴は周囲の風を剣状に収束し始めた。
「『風天剣(ストームセイバー)』」
「大気で形成された刃物確認」
そう言い終わる前にリラの体が吹っ飛ぶ。ヤシの木も物凄い勢いで揺れだす。
「はぁぁぁぁぁ!」
吹っ飛ぶリラを叩き落とす。
「想定外の事故が発生。分析の後修正」
「これで、終わりだ『迸る嵐(サイフーン)』」
その時海が荒れ、嵐が起きた、そして海へ投げ出されるリラ。
「やったのか?」
「快晴!まだだ!」
抱きかかえられている大智が叫ぶ。 
ざぁぱぁーーーん!!!
水飛沫と共に巨大な白鯨が姿を現す。
「な、なんだ。」
「恐らくそいつがリラの本体」
全回復ではないが大智が横に並ぶ。
『荒神とは久しいの』
少女の声ではなく老婆の声になっていた。
島一つあると思われる白鯨が語りかける。
「まだ、くたばらないか
『陰陽反転(ジキルチェンジ)』」
大智の体から黒い羽が飛び回り体のあちこちについた。快晴が目を開けると黒い羽毛を纏った大智がいた。
「快晴。ここは任せてくれ」
黒い羽毛を纏い空へ飛び上がった。
「喰らえ化け物『黒雷爪(ティロラウズ)』」
どす黒い雷が巨大な鉤爪状に変化し白鯨に叩きつけられる。
ドォゴォン!!
白鯨に直撃する。
「まだだ。『黒電砲(ティロブリガロン)』」
ぶっとい黒い閃光が白鯨を貫いた。
『ぬぅ  なかなかやるではないか。だが』
リラには傷一つない。確かに貫き風穴を開けたはずだ。
『我の力は事象を操る。
其方の技の“貫通する性質”を“反射”に置き換えた。』
「何!馬鹿な」
『わかったか?少年よ』
大智は膝をつく。
『しかし、この次元に来たのはある男を消し去るためだ。』
「ある男?」
快晴が前に出る。
『そうだ。その男が近い未来、大きな災いをもたらす』
「もし....かして」
『心当たりがあるのか』
「死神大王」
『左様。その男こそ元凶となり得る」

 
その後リラは帰って行った。快晴に死神大王を討伐するように伝えて。
討伐さえすればさっきの一件はなかったことにすると言って。

 
「なんだったんだ」
3月の雨も快晴達も立ち尽くしていた。
「なにかとんでもないことを知ってしまったのかな」
港から吹く風だけがその場の全員を慰めるのだった。
 
 
「あ!おかえりなの~」
ラビが空気を読まず駆け寄ってくるが構うわけもなく見事に無視された。
「皆さん。どうかなさいましたか?」
見かねた凪が尋ねてきた。快晴と大智は一連のことを凪に話した。さすがに驚いていたがすぐに笑った。その笑いに何の意味があったかは分からない。
 
 
「もう、行くのか?」
「あぁ」
大智と快晴は向かい合う。
「たっくさん遊べたなの-!」
少し日に焼けたラビと凪が話している。
「じゃあね詩音ちゃん」
「またね梨花ちゃん」
梨花は目尻を濡らしているが梅雨葉が拭き取る
「あなたたちはいい人ね。また来てね。あと.....
今度は私たちがいってもいい?」
目を合わせずうつむく梅雨葉に手を差し伸べ
「うん!」
詩音は頷き笑う。それにつられて梅雨葉と梨花も笑う。
「また、来いよ大地」
「お前に勝つまで来るわ」
「亜瑠香もいつでも来いよ~」
「あ~、うん。はは」
太陽とは色々あったようだ。
「快晴。」
「ん?」
「革命以来だよ。こんな大勢で笑ったり食べたりしたのは。」
「僕も楽しかった。君達と出会えてよかったよ」
「僕もだ。君らが危機に陥れば僕らが助けに行く」
その言葉に不思議と元気づけられた。頼りになる仲間がまた一人できた。そのことは心の大きな支えとなった。
「ありがとう。大智」
「ありがとう。快晴」
2人は固く握手を交わし別れた。
2羽の鴎が仲良く波打ち際を飛んでいる


 



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