車輪の神 ジョン・ドゥ 〜愛とロマンは地球Bを救う?〜

Peppe

文字の大きさ
25 / 46
第二章 キリン探し

ミーシャの憂鬱 ②

しおりを挟む
地球B 15日目
PM  0時30分

 テッサが捌いてくれたウサギは、フライパンで両面を焼き、シンプルに塩コショウで味付けしただけで抜群に美味かった。
食べ切るまで何日かかるか不安になる量の肉にも関わらず、一食でペロッと平らげてしまった程だ。
今後は、ウサギを見つけ次第テッサに狩ってもらうことを心に決めた。

 放心状態のミーシャさんには、焼いた餅にお湯で解いたあんこをかけただけの手抜きぜんざいを与えると、虚ろな目をしながらチビチビモチョモチョと口に運んでくれた。
あんこが口に合うか不安だったが、甘党なお口にはピッタリだったようで、ムスッとした顔で二回おかわりをしていた。
これで少しでも機嫌が回復してくれればいいのだが。

 ーー カキンッ シュボ ーー

「……………………くぁーーーーーーー……しかし、美味かったなぁ……」
「ヒドイです……」
「あぁ、ごめんごめん。……でも殺しちゃった以上は食べてあげないと勿体ない……というかほら、なんと言うかぁ、ね!」

 捌かれた肉が美味しそうだったから喜んで食べただけだ、都合の良い言い訳など浮かんでくる訳もない。

「……もういいですよ。23年も生きてますからね、人生には残酷な事が付き物だって事ぐらい知ってます。……はぁあ……」

 思ったより歳いってんな、二十歳かそれよりちょっと若いかぐらいだと思ってたぞ。
……だったらもうちょいしっかりしてないとマズいんではないかい?

「ならミーシャは私より二つ若い訳だな。」
「あ、じゃあテッサは25歳なの? へー、結構一緒にいたけど初めて知ったわ。」

 ここまで美人だと年齢不詳だよなぁ……
めちゃめちゃ大人っぽい十代にも見えるし、魔性の若さの三十代って言われても驚かなかっただろうし。

「そう言うあきらさんはおいくつなんですか?」
「あー、オレ? 花も恥じらうピチピチの33歳ですぜ。」
「えぇー!?」
「そこまで上だったのかお前?」

 あらー? 二人ともやたら驚いてるぞぉ……
そんなにオレが若々しく見えるってか? 嬉しいねぇ、おこづかいでもあげたくなってきちゃうじゃないか。

「まぁ、おじさんっぽくならないように日々努力はしてるからね。」
「……30年以上生きてここまで覇気のない人間も珍しいな。」
「ん?」
「普通はもっとガドルさんみたいに強そうだったり、会長みたいに頼りになりそうだったりしますよね。」
「おいおい……」
「顔の老けた若造だと思っていたぞ。……もっとしっかりしろ、モドキ。」
「頑張ってくださいね!」
「あらまぁ……」

 ぬか喜びさせてくれるじゃないかお嬢さん達ぃ……
……ていうか、結構年上だって判明したんだからさ、態度を改めてくれたっていいんだぜ?

 せっかく絶品ランチを食べたというのに、なんだかやるせない気持ちで午後の探索をはじめる羽目になった。

 見落とすことがないよう三人で三方向に目を凝らし、夕方まで周辺をくまなく探索しても、キリンの姿どころか手がかりになりそうな物も見つからなかった。
こう何日も空振りが続くと、キリンなんて本当は存在しないんじゃないかという気にさえなってくる。
この徒労感を何年も味わい続けても、まだ諦めずに探し続けているのだから、テッサにとってはキリン探しにかける思いは相当なものなのだろう。

「よし、もう暗くなってきたし、集落に戻ろうか。」
「……あぁ。」

 歯痒そうだなぁ、どうにかしてやれないもんかねぇ……

「お二人ともすみません、何のお力にもなれなくて……」
「いやいや、そんな事ないない、普段より全然楽させてもらったよぉ。それよりショルダーは初めて乗ってみてどうだった?」
「思ってた通り、素晴らしい乗り物でした。……それに、今日はお仕事の相談も出来て嬉しかったです。」
「相談なんて、ありきたりな事言っただけだよ。」
「充分ありがたい言葉でしたよ。私みたいな小娘の話を真剣に聞いてくれる年上の男性なんて、今まで会長しかいませんでしたし。」
「そうか、そう言ってもらえるとオレも嬉しいよ。」
「よーーーし! 明日から集落を発展させる為に今よりもっともっと頑張りますよ。犠牲になったウサギさんの為にも!」

 ……別にウサギちゃんの死と集落の発展はまったく関係なくないか?
まぁ、若い子がヤル気出してんだから水を差すのも野暮だわな……

「はははは……まぁ、頑張ってよ。」

 その後もミーシャさんの抱負と展望をピーピーと聞かされながら集落に戻った。
例によって、門の手前でショルダーから降りて三人並んで歩いていると、門の横にガドルさんが立っている。

「あら? テッサ、待ち合わせか何かしてたの?」
「いや、何も約束はしてない。」
「どうしたんですかね? おーい、ガドルさーん!」

 ミーシャさんの声に気付いたガドルさんは、オレ達のもとに駆け寄ってきた。
どうやらオレ達に用事があって帰りを待っていたようだ。

「遅かったじゃねぇかテッサぁ、待ちくたびれちまったぜ。」
「知るか、勝手に待っていたんだろう。一体どうした?」
「あぁ、ちょうどお前とミーシャに急ぎの話があったんだ。」
「え、私もですか?」

 ……ふむ、蚊帳の外おじさんですねぇ。
どうしたんだろ? 昨日会った時よりも顔に迫力があるぞ。

「いいか二人とも、この集落は今日で終わりだ。こないだ話した夜盗の奴らが、すげぇ人数で今晩にも襲ってくるみてぇだぞ。」
「ぴぇええぇぇぇええぇぇえぇええ!!」

 ミーシャさんは防犯ブザーが如き奇声を上げ、ヘナヘナと膝から崩れ落ちた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...