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第二章 キリン探し
うわばみ乱舞 ①
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地球B 15日目
PM 18時00分
話がまとまるとオレ達は、ガドルさんに事情を説明して、夜盗がたむろする場所へと案内してもらうことになった。
「それじゃあ、オレ達はもう行くから。ミーシャさん、いざっていう時の為に、集落の人達といつでも避難できるようにしておいてね。」
「は、はい!……すみません、私のわがままの為に動いてもらうのに、なんのお役にも立てなくて……」
「気にするな、役に立たんのはモドキも一緒だ。」
「フォローになってねぇよ! オレが傷つくだけだ!」
「だらしない、この程度で傷つくな。」
「こんのぉ……」
「うふふふふ……お二人とも、絶対無事に帰って来てくださいね。」
「おぉい! オレは無事じゃなくてもいいってぇのかよぉ?」
野太いしゃがれ声で、ガドルさんがミーシャさんに詰め寄る。
「はわわわわわっ、ごめんなさいっ! そんなつもりじゃないんですぅ……」
「ぷぅっ、ぐぁはははははははぁ! 冗談だよぉ! 第一オレのこのツラじゃあ、無事なのか傷を負ってんのかわかりゃしねぇってもんよぉ! だはははははははは!」
凶悪なルックスしてるけど、ガドルさんって気さくなイイ人っぽいんだよなぁ……
こういう性格だから住民たちにも頼りにされてるんだろうな。
「おいモドキ、そろそろ行かんと、私達が攻め込むどころか逆に集落が襲われてしまうぞ。」
「おぉ、それは困る、ここから離れた場所で決着をつけんとな。……ショルダー!」
ーー パチィン ーー
「さぁ、二人とも乗って。」
「おぉう、これが噂の神の箱ってぇヤツかぁ……本当に走んのかい?」
ガドルさん、歴戦の強者っぽいのに後ずさりしちゃってぇ……
あのミーシャでもすんなり乗ったんだぞ。
「おいガドル、とっとと乗れ。馬のついてない馬車だと思えば恐ろしくもないだろう。」
「けどよぉ……こいつを操るのはおバカのにいちゃんなんだろぉ?」
「そのバカが唯一まともに出来るのがショルダーとダービーを走らせる事なんだ。早く乗れ。」
「……超不愉快だけどな、運転の腕を褒められてるってことにしておくよ。」
「わかったよぉ、……ったく、戦よりもよっぽど気味が悪いぜぇ……」
ガドルさんは観念したように、スゴスゴとショルダーの後部座席に乗り込んだ。
「よし、そんじゃあオレらも乗り込んで出発だ!」
集落を後にしたオレ達は、夜盗を奇襲するべく集落の西側を目指した。
「おい! ちっと速すぎやしないかぁ、にいちゃんよぉ!」
運転席と助手席の間からガドルさんがニョキっと顔を出してきた。
「いやいや全然。なんなら普段の七割ぐらいの速度しか出してないから。」
「せっかくの戦なんだ、景気づけにもっと飛ばしてくれ、モドキ。」
「かかかか、勘弁してくれぇっ! こんなモン何で動いてるのか訳がわからねぇんだぞ? ぶっ壊れでもしたらどうすんだぁ!」
そう言って屈強な体を縮こまらせ、顔面は徐々に血の気が引いていってるようだ。
「訳がわからんとは心外ですなぁ……そんでガドルさん、夜盗ってのはどれぐらいの人数がいるんですか?」
「集落を追われた連中だからよぉ、すげえ人数だってぇ話なんだがなぁ、その内どれぐらいのヤツが戦えんのかまではわからんぜぇ。」
「集落の中の戦える男手全員が相手かぁ、うへぇ……なんか、当たり前みたいについて来てもらっちゃいましたけど、こんな危険な事に巻き込んじゃって……」
「気ぃにすんなよぉ! オレだってあの集落は気に入ってんだぁ。なんたって口うるせぇ統領もいねぇし、オレみたいなもんが頼りにされて、ジャンジャカ酒を飲ませてもらえるんだからよぉ!」
……だからって、気軽に命はかけれんだろう……
やっぱ相当イイ人なんだろうな、ガドルさんって……
「ふん、別に全員と闘わなくとも、何人か殴り殺してやれば勝手に向こうも退散するだろう。」
「は? いやいやいや、殺しはよしてくれよ! 戦闘不能までで止めてあげてよ。」
ここが修羅の跋扈する異星とは言え、殺しの片棒を担ぐなんてのは絶対にお断りだ。
「お前、殺さんように手心を加えながら戦うのがどれ程面倒かわかって言ってるのか?」
「そうだぜにいちゃん、向こうはこっちの手加減なんかお構いなしに、殺す気で得物振り回してくるんだぜぇ。」
「そうなんだろうけどさ……誰かに逆らえなくて無理やり夜盗やってるような人も中にはいるかもしれないだろ? そんな人まで一緒くたに殺しちゃってもいいのかよ。」
「はっ、戦場でそんなことまで気にしてられるか。」
「そんな事言わずに頼むよテッサ! お前ぐらい強かったらなんとか出来るだろう?」
「ちぃっ! これだからバカは…………」
「お願いお願いお願いお願~い。」
「はぁぁあああぁ…………」
なんだよ、ため息なんかついて。
ま~たアイアンクローか? 悪いが今回は絶対に折れてやらんぞ。
「……漫画3時間を20日間だ。」
「へ? あ、いいの!?」
「私の言った条件は飲めるのか?」
「もちろん、全然OKだよ!」
「いいだろう、だが万が一の場合には相手を殺すぞ。」
「うん……そりゃあ、テッサの命が危険な時には仕方ないさ。」
「そうじゃない、二つ名で呼んでくるヤツが何人か混じってるハズだろうからな。」
「いや、それは我慢してやってくれませんかね?」
「断る……おい、ちょうど連中が見えてきたぞ。」
「オレにゃあ全然わからんぞ……夜目も効くんだなぁ。」
「このまままっすぐだ、飛ばせ。」
「あいよぉ。」
「おぉい! 速度を上げるのはやめっ……」
ーー ブゥゥウウウウウンッ ーー
テッサに言われるがままに直進すると、大きな火を囲んだ人だかりが見えてきた。
ざっくりだが、少なくとも数百人がいるのは遠くからでも見てとれる。
「ひぇ~、すげぇ人数だ。……こっからどうすりゃいい。」
「この速度のまま進め。」
「……お~い……二人ともぉ……オレぁもうすぐ限界だぜぇ……」
「ガドルさん頑張って、もうすぐ止まれるから!」
「お……おぉよぉ…………」
「よし、私は先に行く。お前たちは好きにしろ、私の邪魔はするなよ。」
「先にって言ったって、まだ数百メートルはあんぞ。」
オレの言葉を無視して、テッサはショルダーのシートの上に立ち上がり、幌をオープンした天井から頭をせり出している。
「あ! てめぇ、この野郎! 土足でショルダーの体を踏みつけてんじゃあねぇぞぉ! とっとと降りろぉ!」
「言われんでも今出る。」
「訳わかんねぇこと言ってねぇで……」
ーー バッ! ーー
「ちょっ、テッ……はあぁあああ!?」
焚火を囲む集団まであと50メートルのところで、テッサは突如ショルダーから飛び出して行った。
ありきたりな比喩表現ではなく、本当に飛び出した。
シートの上で一度しゃがんだかと思うと、前方斜め45度に向かって大ジャンプをかましたのだ。
ご自慢のバカげた脚力と、ショルダーの加速で勢いに乗ったテッサは天高く舞い上がり、ショルダーの姿に身構えていた集団たちを飛び越えて、その背後でごうごうと燃えていた焚火を蹴散らし着地した。
「はらー……やっぱあいつアホなんだわ……」
……てか、50メートルも大ジャンプして着地したんだからヒザ終わったんじゃないのか?
あんなでっけぇ火に突っ込んで無事な訳ねぇし……
流石に心配になったので、集団の手前でショルダーから降り、テッサに向かって声をかける。
「おーーーーーい! 大丈夫かぁぁあああ!?」
「大丈夫かだとぉっ!? 熱いに決まってるだろうがぁああぁあぁ!」
「おぉ……これは大丈夫なパターンですな。」
PM 18時00分
話がまとまるとオレ達は、ガドルさんに事情を説明して、夜盗がたむろする場所へと案内してもらうことになった。
「それじゃあ、オレ達はもう行くから。ミーシャさん、いざっていう時の為に、集落の人達といつでも避難できるようにしておいてね。」
「は、はい!……すみません、私のわがままの為に動いてもらうのに、なんのお役にも立てなくて……」
「気にするな、役に立たんのはモドキも一緒だ。」
「フォローになってねぇよ! オレが傷つくだけだ!」
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「こんのぉ……」
「うふふふふ……お二人とも、絶対無事に帰って来てくださいね。」
「おぉい! オレは無事じゃなくてもいいってぇのかよぉ?」
野太いしゃがれ声で、ガドルさんがミーシャさんに詰め寄る。
「はわわわわわっ、ごめんなさいっ! そんなつもりじゃないんですぅ……」
「ぷぅっ、ぐぁはははははははぁ! 冗談だよぉ! 第一オレのこのツラじゃあ、無事なのか傷を負ってんのかわかりゃしねぇってもんよぉ! だはははははははは!」
凶悪なルックスしてるけど、ガドルさんって気さくなイイ人っぽいんだよなぁ……
こういう性格だから住民たちにも頼りにされてるんだろうな。
「おいモドキ、そろそろ行かんと、私達が攻め込むどころか逆に集落が襲われてしまうぞ。」
「おぉ、それは困る、ここから離れた場所で決着をつけんとな。……ショルダー!」
ーー パチィン ーー
「さぁ、二人とも乗って。」
「おぉう、これが噂の神の箱ってぇヤツかぁ……本当に走んのかい?」
ガドルさん、歴戦の強者っぽいのに後ずさりしちゃってぇ……
あのミーシャでもすんなり乗ったんだぞ。
「おいガドル、とっとと乗れ。馬のついてない馬車だと思えば恐ろしくもないだろう。」
「けどよぉ……こいつを操るのはおバカのにいちゃんなんだろぉ?」
「そのバカが唯一まともに出来るのがショルダーとダービーを走らせる事なんだ。早く乗れ。」
「……超不愉快だけどな、運転の腕を褒められてるってことにしておくよ。」
「わかったよぉ、……ったく、戦よりもよっぽど気味が悪いぜぇ……」
ガドルさんは観念したように、スゴスゴとショルダーの後部座席に乗り込んだ。
「よし、そんじゃあオレらも乗り込んで出発だ!」
集落を後にしたオレ達は、夜盗を奇襲するべく集落の西側を目指した。
「おい! ちっと速すぎやしないかぁ、にいちゃんよぉ!」
運転席と助手席の間からガドルさんがニョキっと顔を出してきた。
「いやいや全然。なんなら普段の七割ぐらいの速度しか出してないから。」
「せっかくの戦なんだ、景気づけにもっと飛ばしてくれ、モドキ。」
「かかかか、勘弁してくれぇっ! こんなモン何で動いてるのか訳がわからねぇんだぞ? ぶっ壊れでもしたらどうすんだぁ!」
そう言って屈強な体を縮こまらせ、顔面は徐々に血の気が引いていってるようだ。
「訳がわからんとは心外ですなぁ……そんでガドルさん、夜盗ってのはどれぐらいの人数がいるんですか?」
「集落を追われた連中だからよぉ、すげえ人数だってぇ話なんだがなぁ、その内どれぐらいのヤツが戦えんのかまではわからんぜぇ。」
「集落の中の戦える男手全員が相手かぁ、うへぇ……なんか、当たり前みたいについて来てもらっちゃいましたけど、こんな危険な事に巻き込んじゃって……」
「気ぃにすんなよぉ! オレだってあの集落は気に入ってんだぁ。なんたって口うるせぇ統領もいねぇし、オレみたいなもんが頼りにされて、ジャンジャカ酒を飲ませてもらえるんだからよぉ!」
……だからって、気軽に命はかけれんだろう……
やっぱ相当イイ人なんだろうな、ガドルさんって……
「ふん、別に全員と闘わなくとも、何人か殴り殺してやれば勝手に向こうも退散するだろう。」
「は? いやいやいや、殺しはよしてくれよ! 戦闘不能までで止めてあげてよ。」
ここが修羅の跋扈する異星とは言え、殺しの片棒を担ぐなんてのは絶対にお断りだ。
「お前、殺さんように手心を加えながら戦うのがどれ程面倒かわかって言ってるのか?」
「そうだぜにいちゃん、向こうはこっちの手加減なんかお構いなしに、殺す気で得物振り回してくるんだぜぇ。」
「そうなんだろうけどさ……誰かに逆らえなくて無理やり夜盗やってるような人も中にはいるかもしれないだろ? そんな人まで一緒くたに殺しちゃってもいいのかよ。」
「はっ、戦場でそんなことまで気にしてられるか。」
「そんな事言わずに頼むよテッサ! お前ぐらい強かったらなんとか出来るだろう?」
「ちぃっ! これだからバカは…………」
「お願いお願いお願いお願~い。」
「はぁぁあああぁ…………」
なんだよ、ため息なんかついて。
ま~たアイアンクローか? 悪いが今回は絶対に折れてやらんぞ。
「……漫画3時間を20日間だ。」
「へ? あ、いいの!?」
「私の言った条件は飲めるのか?」
「もちろん、全然OKだよ!」
「いいだろう、だが万が一の場合には相手を殺すぞ。」
「うん……そりゃあ、テッサの命が危険な時には仕方ないさ。」
「そうじゃない、二つ名で呼んでくるヤツが何人か混じってるハズだろうからな。」
「いや、それは我慢してやってくれませんかね?」
「断る……おい、ちょうど連中が見えてきたぞ。」
「オレにゃあ全然わからんぞ……夜目も効くんだなぁ。」
「このまままっすぐだ、飛ばせ。」
「あいよぉ。」
「おぉい! 速度を上げるのはやめっ……」
ーー ブゥゥウウウウウンッ ーー
テッサに言われるがままに直進すると、大きな火を囲んだ人だかりが見えてきた。
ざっくりだが、少なくとも数百人がいるのは遠くからでも見てとれる。
「ひぇ~、すげぇ人数だ。……こっからどうすりゃいい。」
「この速度のまま進め。」
「……お~い……二人ともぉ……オレぁもうすぐ限界だぜぇ……」
「ガドルさん頑張って、もうすぐ止まれるから!」
「お……おぉよぉ…………」
「よし、私は先に行く。お前たちは好きにしろ、私の邪魔はするなよ。」
「先にって言ったって、まだ数百メートルはあんぞ。」
オレの言葉を無視して、テッサはショルダーのシートの上に立ち上がり、幌をオープンした天井から頭をせり出している。
「あ! てめぇ、この野郎! 土足でショルダーの体を踏みつけてんじゃあねぇぞぉ! とっとと降りろぉ!」
「言われんでも今出る。」
「訳わかんねぇこと言ってねぇで……」
ーー バッ! ーー
「ちょっ、テッ……はあぁあああ!?」
焚火を囲む集団まであと50メートルのところで、テッサは突如ショルダーから飛び出して行った。
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あんなでっけぇ火に突っ込んで無事な訳ねぇし……
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