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セイシュウ

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第三章 旅

第52話 レガシーフィード

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 霧がすっかり晴れた甲板に静寂が訪れた。

 波の音が戻り、濡れた床に靴の音がかすかに響く。

「吉野君のスキルの使い方にヒントを貰ってね」

 雨宮はライブラをそっと閉じながら、俺に微笑んだ。

「僕のサークルレイの大きさなら、分割してぶつけたらどうなるのかなって?」

「思っても出来へんで……普通」

「訓練したら2〰3個くらい分割できるかもしれんけど、それを敵にぶつける?
 しかも、あの鋼のような鱗を貫くほどの勢いで飛ばすのは不可能や、それもあの数やで」

 隼人が肩をすくめながら、なおも鼻血の残る雨宮を見て苦笑した。

「想像を形にしてきた雨宮先生だからなのでしょうか?」

 顎に手をやり小首を傾げながら咲耶が言った。

「せやな、雨宮にしかできん、マジの必殺技やな」

「ヴェルコールでは皆が絵を書くのを優先させてくれるから、
 シールドスキルだけが育っちゃってね……役に立ててよかったよ」

 そういうとティッシュを鼻に詰める。

「いざってときしか使わない方がいいな……一度だけの使用で、脳に負担がかかってるみたいだ」
 雨宮の鼻血が止まらない様子に心配になった。

「うん、気を付けるよ」
 雨宮は額の汗を拭いながら、静かに息を吐いた。

「今回の航海で、二度ミッションが発生。このまま船で本州へ向かうのは……危険じゃやないか?」

 みんなの顔を見ながら聞いてみた。

「なら、陸路やな。九州に渡って電車でも車でも行けるやろ。生きて東京に着かな意味ないしな」

「那覇から鹿児島へ定期フェリーを使い、そこから陸路で東京を目指す」

 ♦

 船室へ戻ると俺はライブラを確認した。

 これまでの3連戦でレベルが上がっていた。

 レベル:10→12
 名前:吉野英斗

 攻撃力:70→75
 守備力:47→54

 年齢:29
 体力:43 / 43
 ちから:40→45
 まもり:30→37
 すばやさ:13→16

「おっ……新しいスキル?」

 ライブラの表示が変わり“レガシーフィード”という名が浮かんでいる。

 内容を確認しようとした矢先――

「那覇でどこ行く? 国際通り?」
 隼人が横から話しかけてくるので、画面を閉じてしまった。

 隼人はすでに観光モードだ。

「僕は福州園がみたいな」

 遅くまで何処に行くのかを話し合い、スキルの確認はまた今度することにした。

 ♦

 朝日が水平線を赤く染める頃、船は那覇港へとゆっくり接岸していた。

 空にはまだ薄く雲が残っていたが、太陽の光は確実に一日の始まりを告げていた。

「……着いたな」
 俺は手すりに手を置き、港に近づいていく岸壁と建物を見つめながら呟いた。

 港のクレーンが静かに動き、大型トラックが出入りする様子が遠くに見える。
 工業と観光の混ざり合った港の風景は、どこか現実に戻ってきた感覚を与えてくれた。

「ようやく日本か……」
 隼人が伸びをしながら船内から出てきた。

「……やっと……ですね」
 咲耶はまだやや青ざめた顔をしていた。酔い止めの薬も2日は持たなかったようだ。

「那覇の空気は湿ってるけど……どこか懐かしい」
 雨宮は荷物の端を整えつつ、小さく呟く。彼の目はどこか安心していた。

 数時間後、俺たちは下船し、ノウシスの手配した車に乗り込む。
 那覇の街は、港の騒がしさとは裏腹に、どこか穏やかでのんびりとした空気が流れていた。

「ホテルで一泊して、明日には鹿児島行きのフェリーに乗れるよう調整してあるそうです」
 咲耶が端末を確認しながら言った。

「陸に足ついたん久しぶりすぎて、感動やな……」
 隼人が思わず地面に手をつけそうになって、咲耶にたしなめられていた。

 ♦

 ホテルに荷物を預けると、俺たちは身軽な格好に着替え、那覇の街へと繰り出した。

「まずは……やっぱり国際通りやな!」
 隼人が目を輝かせる。

 国際通りは、朝だというのにすでに多くの観光客で賑わっていた。
 土産物屋やカフェ、飲食店が立ち並び、カラフルな看板が視界に飛び込んでくる。

「ここのサーターアンダギー、めっちゃ有名らしいで!」
 隼人はさっそく屋台に突撃し、揚げたての丸いドーナツを手にしていた。

「……あ、でも熱っ……!うまっ!」
 頬を膨らませながら食べる姿に、思わず笑ってしまう。

「いいなぁ。僕も何か甘いの食べたい」
 雨宮も屋台を覗き込み、パイナップルジュースを手にしていた。

「咲耶は……大丈夫か?」
 まだ顔色が優れない彼女を気にかけると、咲耶は小さく首を振った。

「……歩くだけなら、問題ないです」
 そう言いながらも、時折立ち止まっては深呼吸をしている。

「私も観光したいので……」
 咲耶の言葉に思わず笑みがこぼれる

 その後、少し離れた「福州園」にも立ち寄った。

「すごい……」
 園内に入った瞬間、咲耶が小さく感嘆の声を漏らす。

 赤い橋、龍の飾り、静かな池――
 中国福建省の伝統建築を再現したというこの庭園は、異国情緒にあふれ、まるで別世界だった。

「俺写真撮る!」
 隼人はスマホを取り出し、池のほとりでポーズを決めていた。

 咲耶はというと、池に架かる小さな橋の上に立ち、ぼんやりと水面を眺めている。
 淡い陽光を浴びた彼女の姿は、どこか幻想的に見えた。

「絵になるな……」
 雨宮がスケッチブックを取り出し、さっそく鉛筆を走らせ始める。

 雨宮の目にも幻想的に映ったようだ。

「さて、次はどこ行く?」
 国際通りに戻ると、隼人が地図アプリを片手に言った。

「軽く昼飯食べる?」
「賛成です」
「沖縄そば……ですかね」

 咲耶の控えめな提案に、全員が即座に頷いた。
 空腹と期待に背中を押されながら、俺たちは地元の人気食堂を目指して歩き出していた。

 昼食を終え、ゆっくりと街を散策した俺たちは、ホテルへと戻った。
 明日はいよいよ、鹿児島への出発だ。

 ♦

「フェリーターミナル……あれかな」
 隼人が窓の外を指差す。
 那覇新港フェリーターミナル。そこに、鹿児島行きの船が停泊していた。

 でかい……!

「おおっ、ちょっとした豪華客船みたいやな」
 隼人も思わず声を漏らす。

「船酔いしないといいけど……」
 咲耶がそっと自分の荷物を抱き締めた。

 俺たちはチケットを受け取り、ターミナル内へと進んだ。

「じゃ、行こうか」
 ゲートを抜け、フェリーへ乗り込む。

 船内は想像以上に広かった。
 客室エリア、展望デッキ、食堂や売店までそろっていて、ちょっとしたホテルのような雰囲気だ。

「おおっ、売店で沖縄限定のお菓子売ってるで!」
 隼人はさっそく駆け出していく。

「……はしゃぎすぎです」
 咲耶が苦笑いを浮かべながら後を追う。

「少し見て回ろうか」
 雨宮の提案で、俺たちも軽く船内を探索した。

 吹き抜けの広いホールから、窓の向こうには、すでに遠ざかる那覇の街が小さく見えた。
 徐々に広がっていく海原に、少しだけ胸が高鳴る。

「また、しばらく海の上だな……」
 俺は小さく呟いた。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 怪物達との戦いを経て、仲間たちはそれぞれに“変化”と“成長”の兆しを見せ始めていた。
 雨宮の放った光の一撃《スターダスト》は、その象徴のように甲板を照らし、
 英斗もまた新たなスキル《レガシーフィード》を獲得する。

 鹿児島を目指す中、危険はまだ終わらない。
“海”で待ち受けるものとは。そして“レガシーフィード”の正体とは――。

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