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セイシュウ

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第三章 旅

第58話 引っ越し

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 今日は朝から俺の家に来ていた。

 そんなに物はないつもりだったが、
 片付け始めてみると意外と物が多いことに気づく。
 皆に来てもらって正解だったようだ。

「うわ、中学ん時のやろ?」
 隼人が押し入れから引っ張り出したのは、
 卒業アルバムだった。
 パラパラとめくり始める

「ちょっ!」
 俺はちょっと苦笑いしながら、隼人から奪い取った。

「ここ、手が届かないです。英斗さんお願いできますか?」
 咲耶は椅子に乗って、棚の上の箱を指さしていた。

「OK,危ないから俺が取るよ」
 俺は慎重に箱を棚から降ろし、足元にそっと置いた。

「軽そうに見えて、意外と重かったです」
 箱の中には、大学時代に使っていた教材やノートがぎっしり詰まっていた。

「これ何?」
 雨宮が取り出したのは、一冊の分厚いスケッチブックだった。

「それは……子供の頃、少しだけ描いてたんだ」
 ページには、未熟で頼りないけれど、懸命さだけは伝わる線たちが並んでいた。

「……好きだったんだね、描くの」
 雨宮は優しくページを閉じた。

「部屋って、その人の時間が詰まってるんですね」
 咲耶の言葉に、俺も思わず部屋をぐるりと見渡した。

 確かに、この狭い空間にも、俺が過ごしてきた何年分かの時間が眠っている。
 思い出も、迷いも、後悔も……すべて、この部屋に刻まれていた。

「吉野さん、いるかい?」
 玄関から声がして、振り返ると大屋さんが立っていた。

「しばらく顔見ないと思ったら急に引っ越しちゃうなんて……」
 いつもパワフルな大屋さんだったが、今日は寂しそうに見える。

「就職先が決まって研修に行ってたんです」
 嘘では……ないよな?

「あら?そうだったの?それはおめでとう!
 それにしても吉野さん友達いたんだねぇ……誰かといるの初めて見たよ」
 ぐっ、精神的な攻撃力が高いな大屋さん……

「いつも一人でいるから、あたしゃ安心したよ、皆仲良くしてあげるんだよ」
 母親か!心の中で突っ込みを入れる。なんか凄く恥ずかしい。

 大屋さんは、それだけ言うと帰っていった。

「ええ大屋さんやん、なぁ英斗"君"」
 そういう隼人の顔はニヤニヤしている。
 これは当面いじられそうだ。俺は膝から崩れ落ちる。

「関西君!そういうのよくないですよ!」
 ピシャリと咲耶の声が飛ぶ。

 隼人は背筋が伸びるとテキパキと片付け始める。

 目が合うと俺は口の端を釣り上げて見せた。隼人は悔しそうな表情を浮かべていた。

 荷物は順調にまとめられ、俺の部屋はあっという間に“空き部屋”のような風景になっていた。

 英斗君これは?
 雨宮が指さしたのは机の上に飾っていた缶バッチだった。

「あっそれ大事な奴なんだ」
 そういうと俺はズボンに缶バッチを付けてみた。

 咲耶が缶バッチをまじまじと見る。
「村田探検隊?」

「そのまんまだけど村田さんっていう友達にもらったんだ」
 これをつけて村田さんたちと探検してみたかったな……まだ2カ月くらい前の話なのに
 、遠い昔のように感じた。

「じゃ、これで全部かな……」
 最後に見渡して確認する。

 いざ最後と思うと、少し寂しいけど――
 不思議と、未練はなかった。

「そういえば拠点を迷ってると言ってましたけど日本支部に決めたのですか?」
 咲耶が問いかける。

 俺は窓の外を一瞥してから、少し笑って答えた
「取り合えず荷物だけ日本支部に置かせてもらおうかと思って。部屋も手配してくれてるみたいだし
 、暫くは日本支部に滞在するつもりだけど、世界中の支部も見てみたい気もしてるんだ。」

「なんやねん日本支部でええやろ?ちゃんとお菓子とかだすで?この際、翼もこっちに来たらええねん――なぁ咲耶ちゃん?」

「私も賛成です!日本支部のある湯布院いい所ですよ」

「せやで温泉卵食べ放題やで!」

「そこは……温泉入り放題でいいでしょう?」

 二人のやり取りに、俺と雨宮は顔を見合わせて、それも悪くないとお互い呟いた。

 すると――

 けたたましい警報音が空気を裂いた。


【ミッション】
 討伐依頼
 ランク:C
 人数:3
 期限:1日
 場所:地図を表示する

 街中でなければいいがと思いながら地図を開く。

 ピンが刺さっている場所は……リザードマンが捕獲されたコンビニ裏の山だった。

「参加人数が3人って、あと一人はどうなるんだ?」
 俺の質問に咲耶が答えてくれる。

「戦闘に参加することはできるんです。経験値も戦闘に参加すれば入ります。ただクリア報酬だけが貰えません」

 咲耶の言葉に少しだけ考えると
「なるほど……なら今回は参加しないでおくよ。俺のスキル、寿命を大きく消費するものじゃないし」

「そしたら今回はそうさせてもらおうか?」
 雨宮がそういうと皆は頷いた。

「場所は大体分かるから案内するよ」

 そういうと俺たちは、すぐに山へと移動した。

 ♦

 目的地にたどり着き、ミッションを開始させた俺たちはモンスターを捜索していた。

「前にここに来たときはテミスの連中の後をつけて来たんだ、
 リザードマンみたいな穢れ人が捕獲されてたな」

「穢れ人って探すん結構難しいんやで?テミスの連中よう見つけれたな」

「この山にでっかいトカゲを見たって噂があったから、その情報を入手したんだと思う」

「まぁなんでもええわ、とっとと片付けて帰ろうや」

「反応が近いですよ、もう近くにいるはずです」
 咲耶の言葉に頷くと、五感を研ぎ澄ます。

 するとガザガザと茂みを分けて進んでくる音が聞こえる。

 音が近づいてくる、俺は刀を抜き身構えた。

 ――来る!

 茂みから影が飛び出して来ると同時に俺は刀を振り降ろした。

「待って!」
 雨宮が声を張り上げた。

 俺は慌てて振り降ろそうとした刀をなんとか止めることができた。

「あれ?吉野……さん?」

 声の主に視線を移すと、飛び出してきた影は……村田さんだった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 引っ越しという一つの節目を通して、
 日常の中にも、ちいさな別れと出会いがある
 ――そんな時間を感じていただけていたら嬉しいです。

 ……まさかの再会も含めて、次回もぜひお楽しみに!

 感想・評価・ブックマークなど、励みになります。今後ともよろしくお願いいたします!
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