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セイシュウ

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第四章 三種の神器争奪編

第67話 決意×代償×願い②

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 佐伯さんが鋭く叫ぶと同時に影が飛び出す――咲耶だ。

「咲耶!咲耶!戻って!戻りなさい!!」
 佐伯さんの声を気に留めず進む。

「間に合います!天よ……」
 スキルを放つ直前もう一匹が茂みから飛び出し目から光を放つ。

「咲耶!」
 俺は無意識のうちに咲耶の元に駆け出していた。

 走りながら榊原さんの言葉を思い出していた。
 大事な子……俺達の自慢の娘だと……止まるわけにはいかなかった。

 コカトリス――必ずツガイで行動し、その最大の特徴は、眼から放たれる光を浴びると石になる。
 シールドもすり抜け、抵抗する間もなく石化してしまう。

 隼人も遅れて飛び出すのが見える。

 コカトリスの光が咲耶に届く直前、咲耶を押し出し俺の身体をなんとかねじ込ませた。
 右ひじに光が浴びせられると、もう一体からも左足に光が浴びせられる。
 光に触れた部分が石像のような色に変わっていく

「英斗おぉぉぉぉぉ……ヘビー・リベリオン!」
 隼人が絶叫とともにコカトリスへと距離を詰める。

「Shine Dart(シャインダート)」
 佐伯さんが、かざした手の先から光の針が出現し
 コカトリス目掛けて発射される。

 2体のコカトリスは瞬時に倒される、だが隼人の倒した一体が倒れる直前
 光が移動し俺の左腕をかすめた。

 光が触れたところからじわじわと石化が進んでいく。

 駆け寄りながら佐伯さんが叫んでいる。
「咲耶!石化が身体に回る前に切断して!」

 身体から力が抜けていく、俺はたまらず膝をついた。

 咲耶が小刻みに震えている。

 隼人が先に到着すると俺の刀を握りしめる。

「堪忍やで……」
 そう呟くと刀を振り降ろす。
 俺の右腕がどさりと落ちた。

「があぁぁぁぁぁ」
 血液が腕から噴き出し激痛が脳を焼く。

「すまん……すまん」
 隼人の声が震え涙が見える。

 ストンという音と共に俺の左足膝から下が転がる。

「おぐぅぅぁぁああ」

 さらに隼人が刀を上段に構える……だが刀は振り下ろされなかった
 俺のあまりの姿に、隼人も怖くなったんだろう。

「貸して!」
 佐伯さんが隼人から刀を奪い取るように手に取ると、迷いなく俺の左腕を切り落とす。

 肘から下が消失し、俺はただ、のたうつことしかできない。

「私がスキルで足の出血を抑えてる間に、隼人は腕をとにかく止血していって、
 少しでも血の流出を止めるの、咲耶は伊庭さんに伝えなさい!」

 佐伯さんは俺の左足の傷口近くに手の平を向ける。
「ヒール!」

「ヒールではこれほどの傷は塞げない!出血を抑えるだけ」

 咲耶はまだ震えていた。
 俺は咲耶に声を掛けようとした。落ち着かせてやりたかった。大丈夫だ、気にするなと。
 だが喉から発せられるのはうめき声だけだ。

「咲耶!咲耶!しっかりしなさい!往復で2時間はかかる咲耶!
 一刻を争う、立ち止まっている暇はないのよ!本当に死んでしまう!咲耶!」

 佐伯さんの声に我に帰ると咲耶は駆け出そうとする。

「まて!俺が行く!俺の身体強化で走った方が早い!」

「佐伯さん……俺行ったらもう帰ってこれんと思う……一時間で誰かよこしますから……」

「隼人?何するつもり?」「葛西……さん」
 狼狽する二人の声。

「Groove Breaker: Sonic Drive(ソニック・ドライブ)!英斗を死なせんといてください!」
 声だけを残し隼人の姿が消えた。

 佐伯は隼人の残した言葉に、一瞬だけその場に沈黙を落としたが、すぐに顔を上げる。

「咲耶! 英斗の右腕、すぐに止血するの!私は足から手を動かせない!」

「……は、はいっ!」

 咲耶は気を張り詰めたまま、駆け寄る。
 震える指先が止血帯を掴む――何度もすべりそうになりながらも、必死に取り出した。

「上腕部をしっかり締めて。血管を潰すくらいでいい。そう――強く!」

 咲耶の手が、力を込めて止血帯を巻きつける。
 ギリギリと締まる布に呻きが漏れる。

「……英斗、大丈夫、もうすぐ止まる……!」

 佐伯さんの声はかすれていたが、必死さが伝わってきた。

 ヒールで左足の出血を最小限に抑えながら、咲耶の手元を一瞥する。

「よくやってる、咲耶。あとは圧迫して固定――!」

 咲耶は手にしたガーゼを、傷口に押し当てた。血がじわりと染み出しても、手を離さず、押し当て続ける。

 俺の顔は血の気が引き、汗が滲んでいる。
 咲耶の目が揺れる。だがその手は、決して離れなかった。

「……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 涙の混じる声が、静かな風にかき消されていった。

 佐伯は横目でそれを見ながら、僅かに目を細める。

「……咲耶、次は右腕!最後に左足!」

「はい……っ」

 咲耶は涙も拭わず、顔をぐしゃぐしゃにしながら、手には俺の血がべっとりとついていた。

 彼女はそれを見つめながら、唇を噛み締め左腕の止血をはじめた。

 甲高い風が森を揺らす。
 その音の中、彼女の祈りは確かに響いていた――。

 どれくらいたった?一分のようにも一時間のようにも感じられる。
 意識が薄れると佐伯さんの声が飛ぶ。

 俺は叫び声をあげる力もなくなり、喉からは空気が漏れる音が鳴るだけだった。

「英斗!しっかりなさい!寝ては駄目よ」

 死神の鎌が、冷たい刃先を俺の喉元に押し当てている――そんな感覚だった。
 朦朧とする意識の中、思い出していた。

 俺は生きることに興味がなかった……でも死が迫ると怖くなった。
 いつのまにか、生きていたいって心から思えるようになった。
 そして今は……自分よりも誰かに生きていて欲しいと……

 俺は強くなれたのかな?

 足音が聞こえる、複数人いるようだ。

「吉野!」

「伊庭さん!早い一時間も経ってない!」
 佐伯さんの声に安堵が混じるのを感じる。

「神谷は輸血を急げ!他の者は俺とヒールをかけ続けろ、ヘリが到着するまでなんとしてでも命を繋げろ!」

「ヒール!」、「ヒール!」、「ヒール!」

 何人いるんだろう?視界がかすんで良く見えない。

「伊庭さん、隼人は!」

「支部では治療が出来ん、榊原が病院へ、今頃到着しているだろう」

「スキルのバランスを強引に崩しスピードに特化させたようだ、
 肉体が耐えきれず、全身の筋肉、神経がやられ、呼吸も……かなり危険な状態だ」

 誰かの嗚咽が聞こえる。咲耶が堪えれなくなったんだろう。

 皆のスキルが効いてきたみたいだ、痛みが消えていた。

 伊庭さんは咲耶を見つめてるようだ。
「神楽!しっかりしろ!目を背けるな!見るんだ!」

 瞼が重い。

「吉野!目を閉じるな、生きろ……生きろ!俺の前で死ぬのは、絶対に許さんぞ……吉野!!」

 伊庭さんの叫びが、助けに来てくれた皆の声が静かな山にこだました。

 そして――俺の心臓は鼓動を止めた……
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