54 / 59
シーズン3
松原8丁目の真実?
しおりを挟む「イヤアアアアアイ!!」
穴だらけになった鈴木家の一階を、猛スピードでサイボーグが修理している。
破損した部分をスキャニングし、自身に内蔵されている3dプリンターで壁の破損部分を印刷したら、器用にパテで埋め込んでいく。
その隣で、チャックパパが筋トレと、回し蹴りの練習をしている。
ペンギンは、ザギンでシースーに行くと言ってどこかに行ってしまい、ザリガニは「修行中の身故、数年は『通い婚』をさせていただきたい」と言い、
意味ありげなイモリの乾物をおいて赤堤に帰って行ってしまった。
麻由は、家にいられなくなり、一人で神社に行った。
すでに、宏明の存在は家ではなかったものにされていた。それが耐えられないほど悲しかった。
神社にも誰もいない。カエルのマユちゃんが来てくれると思ったが、ここにもいなかった。もしかしたら冬眠してしまったのかもしれない。
松原にいる生物は、人も怪異も麻由に優しかった。けれどもやっぱり何かがおかしい。
神社に生えている銀杏の木のてっぺんで、金目鯛文鳥が「オエオエオアー」と鳴いていた。神社の池には、文鳥金目鯛が「ブンキン! ブンキンキンキン!!」と鳴いていた。
麻由は、神社の境内に腰をかけ、長野に帰る事を考え始めていた。
今度は、筋肉たちが道を塞いでもなんとか抜け出して、とりあえず新宿を目指すのだ。そうすればきっと長野に帰れる。
麻由の頬を、冷たい北風が通り過ぎていく。
……とそこに、
「麻由さん」
突然声をかけられ、麻由は視線を向けた。そこには……
いやに顎のしゃくれた、青いズボンとサスペンダー姿のパンダがいた。
銀杏の木に半分隠れている。
「初めまして。サスペンダー・プリテンダー・シャクレパンダーです」
パンダの方はいたって真面目なのだろうが、如何せん顎がしゃくれすぎているので、ふざけているように見えた。
それがコンプレックスで、隠れているのだろうか。
「……鈴木麻由です」
麻由は丁寧にお辞儀をした。
「麻由さん、あなたにお伝えしないとならないことがあって参りました」
「なあに?」
「この街の正体です」
「……え?」
麻由は立ち上がり、パンダの方に近づいた。すると……
「おいそこの君!!」
確かに数秒前までパンダだったはずのそれは、突如として『お尻』になっていた。
「(プスン!!)……すまん。 そこの君!! 今そこに悪いパンダはいなかったか! (プー)すまん!」
「え……え……」
「(プリプリポー)お嬢ちゃん! ここは危険だ! 悪いパンダが徘徊している! おうちにかえりなさい!(ププ……プップクプップップー!!)すまん!!」
麻由は、意味もわからずとりあえず尻のいう通り、家に帰ろうとした。すると……
「麻由さん」
また『パンダの方の声』が聞こえて、素直に振り向いてしまった。
「大事なお話があるのです! 聞いてください! この世界は現実世界ではないのです!」
「……どういうこと?」
麻由が再びパンダに数歩近づくと……
「君ーーー!!」
また『尻』が飛び出てきた。
「ダメじゃないか!! (プスン!)すまん! ここは危ない! 危険なパンダが徘徊しているんだ!! (ゲリピー) ……すまん。
汚い『おなら』をひっかけられるぞ! 今すぐ逃げるんだ!!(ブブブ)すまん!」
麻由は、すでにこの『尻』のことが嫌になっていた。逃げられるなら素直に逃げたい気持ちでいっぱいだった。しかし、『パンダの方』の言っている言葉がどうにも引っかかってしまう。
麻由は試しに後を向いてみた。ややあって……
「麻由さん」
麻由の想像通り、麻由がパンダの方を見なければ『お尻』の方はやってこないようだ。
「なあに?」
麻由は、背中でパンダのいうことを聞くことにした。
「この世界は、『とある人物がある理由で作った』、現実とは多少異なる場所なのです。麻由さん現実のあなたはここにはいないのです。
お父さんも……そのとある人物の居場所は……最初はこの神社の地下でした」
麻由は、辛抱強く聞いた。おそらく、この直後に麻由の知りたかった事実が告げられる。麻由の本能はそう感じていた。
「そのとある人物の居場所は……」
麻由は唾を飲み込んで辛抱強くきいた。
「………君ーー!! そこで何をしているんだ!!」
麻由の背中に、柔らかい(そして臭い)お尻が密着した感覚がした。
「君! 本当に危険なんだここは!! (ブブブピー!)……すまん!
くっさい目に遭うぞ! 今すぐ帰るんだー!!(ブリピー!)すまん!」
「もうやだ!! 助けてパパ!!」
もうやだ、助けて、パパ。その声は十二月の澄んだ北風に乗り、声を遠くに運んでいった……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる