カエルのマユちゃん。

SB亭孟谷

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シーズン3

松原8丁目の真実?

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「イヤアアアアアイ!!」

 穴だらけになった鈴木家の一階を、猛スピードでサイボーグが修理している。
 破損した部分をスキャニングし、自身に内蔵されている3dプリンターで壁の破損部分を印刷したら、器用にパテで埋め込んでいく。

 その隣で、チャックパパが筋トレと、回し蹴りの練習をしている。

 ペンギンは、ザギンでシースーに行くと言ってどこかに行ってしまい、ザリガニは「修行中の身故、数年は『通い婚』をさせていただきたい」と言い、
意味ありげなイモリの乾物をおいて赤堤に帰って行ってしまった。

 麻由は、家にいられなくなり、一人で神社に行った。
 すでに、宏明の存在は家ではなかったものにされていた。それが耐えられないほど悲しかった。
 神社にも誰もいない。カエルのマユちゃんが来てくれると思ったが、ここにもいなかった。もしかしたら冬眠してしまったのかもしれない。

 松原にいる生物は、人も怪異も麻由に優しかった。けれどもやっぱり何かがおかしい。
 神社に生えている銀杏の木のてっぺんで、金目鯛文鳥が「オエオエオアー」と鳴いていた。神社の池には、文鳥金目鯛が「ブンキン! ブンキンキンキン!!」と鳴いていた。

 麻由は、神社の境内に腰をかけ、長野に帰る事を考え始めていた。
 今度は、筋肉たちが道を塞いでもなんとか抜け出して、とりあえず新宿を目指すのだ。そうすればきっと長野に帰れる。
 麻由の頬を、冷たい北風が通り過ぎていく。

 ……とそこに、

「麻由さん」

 突然声をかけられ、麻由は視線を向けた。そこには……
 いやに顎のしゃくれた、青いズボンとサスペンダー姿のパンダがいた。
 銀杏の木に半分隠れている。

「初めまして。サスペンダー・プリテンダー・シャクレパンダーです」

 パンダの方はいたって真面目なのだろうが、如何せん顎がしゃくれすぎているので、ふざけているように見えた。
 それがコンプレックスで、隠れているのだろうか。

「……鈴木麻由です」

 麻由は丁寧にお辞儀をした。

「麻由さん、あなたにお伝えしないとならないことがあって参りました」

「なあに?」

「この街の正体です」

「……え?」

 麻由は立ち上がり、パンダの方に近づいた。すると……

「おいそこの君!!」

 確かに数秒前までパンダだったはずのそれは、突如として『お尻』になっていた。

「(プスン!!)……すまん。 そこの君!! 今そこに悪いパンダはいなかったか! (プー)すまん!」

「え……え……」

「(プリプリポー)お嬢ちゃん! ここは危険だ! 悪いパンダが徘徊している! おうちにかえりなさい!(ププ……プップクプップップー!!)すまん!!」

 麻由は、意味もわからずとりあえず尻のいう通り、家に帰ろうとした。すると……

「麻由さん」

 また『パンダの方の声』が聞こえて、素直に振り向いてしまった。

「大事なお話があるのです! 聞いてください! この世界は現実世界ではないのです!」

「……どういうこと?」

 麻由が再びパンダに数歩近づくと……

「君ーーー!!」

 また『尻』が飛び出てきた。

「ダメじゃないか!! (プスン!)すまん! ここは危ない! 危険なパンダが徘徊しているんだ!! (ゲリピー) ……すまん。
 汚い『おなら』をひっかけられるぞ! 今すぐ逃げるんだ!!(ブブブ)すまん!」

 麻由は、すでにこの『尻』のことが嫌になっていた。逃げられるなら素直に逃げたい気持ちでいっぱいだった。しかし、『パンダの方』の言っている言葉がどうにも引っかかってしまう。
 麻由は試しに後を向いてみた。ややあって……

「麻由さん」

 麻由の想像通り、麻由がパンダの方を見なければ『お尻』の方はやってこないようだ。

「なあに?」

 麻由は、背中でパンダのいうことを聞くことにした。

「この世界は、『とある人物がある理由で作った』、現実とは多少異なる場所なのです。麻由さん現実のあなたはここにはいないのです。
 お父さんも……そのとある人物の居場所は……最初はこの神社の地下でした」

 麻由は、辛抱強く聞いた。おそらく、この直後に麻由の知りたかった事実が告げられる。麻由の本能はそう感じていた。

「そのとある人物の居場所は……」

 麻由は唾を飲み込んで辛抱強くきいた。

「………君ーー!! そこで何をしているんだ!!」

 麻由の背中に、柔らかい(そして臭い)お尻が密着した感覚がした。

「君! 本当に危険なんだここは!! (ブブブピー!)……すまん! 
 くっさい目に遭うぞ! 今すぐ帰るんだー!!(ブリピー!)すまん!」

「もうやだ!! 助けてパパ!!」

 もうやだ、助けて、パパ。その声は十二月の澄んだ北風に乗り、声を遠くに運んでいった……。
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