カエルのマユちゃん。

SB亭孟谷

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シーズン3

黒鉄の目的

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 親父が生きている……?

 足早に自宅の庭に走る宏明と麻由。それから宏明にたかる拳大のバユの群。
 夕方過ぎに二人と数匹が庭で目撃したものは、それこそ異様な景色だった。

 庭の一角にある木の小屋『マユちゃん』の小屋から、15色のランダムな光が室内で発光している。
 小屋の周りには、学校の椅子、宏明の愛読書、麻由のランドセル、宏明の自転車、
そう言った二人の私物が螺旋を描くように宙に舞っていた。

 そして超次元的な力を演出しているのか、うぉんうぉんうぉん、と、なんとも形容し難い聞きなれないハム音? のような音が響き渡っていた。
 空にはは夕方過ぎで、一番星が顔を覗かせていた。

 麻由と宏明が、あんぐりと口を開けてその様を眺めていると、夜空をスクリーンに巨大な顔が映し出された。サングラスをしていて、空から二人を見下ろしている。

「あ! 地下のおじいちゃん!!」

 麻由は指を刺した。
 隣で宏明は震えていた

「……親父……」

 巨大な顔は、サングラスを指でいじりながら、

「やれやれ……」

 と言葉を漏らした。

「あのパンダは誰がプログラミングしたんだ全く。操作しにくいったらありゃしない」

 おそらく独り言のようである。

「親父! これはどういうことだ! 俺はあんたの喪主まで務めたんだぞ!」

「みてたとも。相変わらず段取りが悪いなお前は」

「何を!」

「おじいちゃん! 生きてるの!?」

 麻由が親子の喧嘩に割って入ると、黒鉄は小さくため息を漏らしてゆっくり語った。

「麻由ちゃんのためだったんだ。
 でもちょっと、おじいちゃんは悪ふざけが過ぎちゃったんだな。これも麻由ちゃんのためを思ってだったんだ。許してくれ」

「どういうことなの?」

「麻由ちゃん。そこそろ、こっちに帰っておいで」

「こっち?」

 すると、黒鉄の後ろから騒がしい声が聞こえてきた。うまく聞き取れないが、
『所長!』 『もう限界です』とか、そう聞こえた。

 すると突然、『マユちゃんの小屋』が爆発し、粉砕した。
 宏明と麻由は、15色の光に飲み込まれた。





 ……そこからの光景は、夢を見ているような、あるいは、
夢の中で映像を見せられているような感覚だった。

 黒鉄が、庭に立ちすくみ、空に手を上げて泣き叫んでいた。
 声は聞こえないが、
口で、

「麻由ちゃん!!  麻由ちゃん!!」

 何度も麻由の名前を空に向かって呼んでいるのがわかる。

 そして、眩しい白地に文字が浮かぶ。

 麻由に、会いたい。麻由に、会いたい。マユちゃん……マユちゃん……


 突拍子もなく、画面は変わり、次は現実的な景色が眼前に広まる。
 臨場感が凄まじく、目からの情報だけではなく、例えば雨が降っている冷たさ、草木、土が梅雨に濡れる匂い。
 焦げたエンジンの匂い。
 雨の音。車の音が聞こえてきた。
 そこは、麻由の記憶にもある、長野の山だった。

 再び、白地に文字が浮かぶ。

 長野県、飯田市伊豆木の山道で自動車事故。カーブ曲がりきれず横転。雨による視界不良か。
父、娘意識不明。

 ……冬なのに鈴虫が鳴いている。松原8丁目、鈴木家の庭である。
 目が覚めた二人の前に、あの木の小屋は無くなっており、
代わりに光を放つ扉が立っていた。

 あたりに、黒鉄の声が響く。

「麻由ちゃん。そろそろ帰っておいで。おじいちゃんも、ママも、みんな待ってる」

「え……」

 するとそこに……

「麻由ー? 晩御飯できましたよー!!」

 靖子の声が響いてきた。

「いかん!! あれはママの声ではない! 君をここに押しとどめようとする防衛プログラムだ!!」

「え?」

 すると鈴木家の勝手口が開き、エプロン姿の靖子が現れた。張り付いた笑顔だ。

「早く来い麻由ちゃん! ゲートはそんなに長く開けないのだ!」

「え、え」

「麻由ー? 遠くに行かないでくださいよー?」

 靖子が近づいてくる。
 
「うわーーー!!」

 そこに宏明が靖子に駆け寄り、8本の腕で靖子を抑えた。

「パパ!?」

「行け! 麻由! 行くんだ!!」

「でもパパ!!」

「俺はいい! 一歩踏み出せ!!」

「麻由ちゃん急げ!!」

 靖子は、宏明の腕を一本一本、振り解いていく。凄まじい怪力である。

「いーたい! 痛い! 痛い!」

「邪魔しないでくださいます? 宏明さん」

「ま、ま麻由! 靖子強い! あまり長くもたない!」

「麻由ちゃん! くるんだ!!」

「バユン バユン バユン」

 麻由は、目を閉じて、 光の扉の中に飛び込んだ。
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