やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第一章 冒険者編

5、冒険者としての一日(前編)

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「何故、私は今回も連れて行って貰えないのですか!?」

悲痛な叫びを上げるライムに、俺は何度目かわからないため息をついていた。
今日はギルドに行く日だ。だからこそライムを連れて行く訳にはいかない。

「ダンと一緒に、先週倒したドラゴンの報酬を貰いに行く約束をしているからな。ついでにクエストも行ってくる。なによりライムはギルドに行けないだろ?」

ライムはスライムからスライム族の人型になったスライムだ。
勿論、ヒトとして身分証を得る為にギルドに一度行っている。そのとき周りから受けた視線に対する嫌悪感から、ギルドに行く事を避けているのを俺は知っていた。

「ぐ……」
「だからライムは俺の補佐をしてくれ。マニを通信機代わりにするから、連絡したらすぐに答えてくれよ」
「わかりました。いつでも受け答えできるように常に身構えておきます」
「いや、そんなに身構えなくても……」
「お待ちしておりますので、すぐにでも通信して下さいね」

ライムの圧に押されて俺は、おお。と返事をしながらも、しっかりと息を整える。
なにせ冒険者は舐められたら終わりだと思っているので、少しクールぶったキャラを作っているのだ。
そして俺は冒険者をするときは、正体を隠すために必ずローブを纏い、その上からフードを深く被っている。

正直第5王子なんて誰も知らないからそこまでする必要はないが、俺は他の王子にも似ているので感づかない者がいないとは限らないのだ。
俺は軽く咳払いをしてフードを深めに被り、勢いよく転移した。

向かう場所はギルド近くに住んでいるのダンの家、あいつは鍛冶屋もしているので一軒家である。
今日はそこで待ち合わせて、一緒にギルドに向かう予定だった。


因みにダンはBランク冒険者だ。
実力はあるけど鍛冶屋が本職であり、なにより貴族を嫌っているため昇級を望んでおらず、そのままになっているそうだ。
確かに高ランクになると、貴族の依頼は必須だから仕方がないかもしれない。

そして俺が10歳で冒険者になったばかりの頃、小さかった俺が心配だったのか、何故か一緒についてくるようになったお節介な男でもある。

しかしダンには俺の事情、第5王子である事も呪われている事も何も話していない。
そもそも呪われた第5王子が外にいるなんて、誰にも知られるわけにはいかない。

それでも呪いについては体調に出てしまうため、何かしらダンも気付いているとは思う。
まだ聞かれたことが無いので聞かれたら体質と答える予定だ。


そんな男を思い浮かべつつ転移した俺は、少しボロいけれどお洒落な調度品が並べられた棚の前に立っていた。

ダンってこういうの自分でつくるの得意だよな……と、とりあえずダンの家にあるリビングに出た事を確認し、この家の主を探すため振り返ろうとしたが、それは出来なかった。
突然後ろからガバッと抱きしめられたからだ。

「セイ待ってたぜ」

セイ、それは俺の冒険者としての偽名だ。
本当はセイウという名前で冒険者をやろうとしたのだけど、言い辛いからなのか皆セイと呼んでくる。

「ダン、いきなり抱きついてくるな……なっ!」

そう文句をいいつつ振り返ると、濡れた髪を乾かすためにタオルを頭から被り、何故か上半身裸のダンがそこにはいた。

「なんて格好してんだ!」
「昨日遅くまで依頼をしてたせいで寝坊しちまってな、急いで準備してるところだ」
「そ、そうか……なら仕方ないのか……?」

俺は首を傾げつつ、なんとか納得する。
それなのに抱きつかれたままだった俺の体が、突然浮遊した事にまた驚きの声を上げる。

「ちょっ!持ち上げんな!!」
「体力のないチビなんだから、温存しとかないとな」
「体力はないけどチビじゃない!お前がデカ過ぎるんだ!!」

怒っているところを見て笑うダンに椅子まで持ち運ばれた俺は、準備が終わるまで暫く待つ事にした。


「待たせて悪かったな、ギルドまで抱えてやろうか?」

準備が終わったダンが、また持ち上げようとしてくるのを俺はやんわりと断った。
だって最後にギルドに行ったとき、お姫様抱っこだったのだ。
時間が無かったとは言えあんな注目を浴びた後に、また持ち運びされてた日には変な噂が経つに決まっている。

「今日は街を出るまでは歩いて行く」
「ふーん。途中でへばるなよ」

そう言いつつも俺の頭を撫でるダンは、ちょっと俺に過保護過気味だ。
確かに出会った頃の俺はまだ10歳だったから、ダンからしたら未だに小さな子供に見えているのだろうけど……。

「セイ、置いて行くぞー」

そう呼びかけるダンを追いかけるため、俺は階段をゆっくり降りる。落ちたら大変だからな……。
そしてダンの家を出た俺達はギルドに向かうのだった。
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