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第一章 冒険者編
6、ダンとクエスト
しおりを挟む個室窓口を出てから、俺達はすぐにアーマードラゴンを納品所に置きにいった。
そして納品が丁度終わった頃、マントを持ったお姉さんが急いで来てくれたおかげで、俺達はすぐに氷雪峠に出発する事ができた。
「セイ、時間がないだろ。どうやって氷雪峠まで行く?」
「そんなの転移するに決まってる。だからすぐに俺を抱えろ」
「おお、ならありがたく抱えさせて貰おうかな」
ふざけた感じて言うダンは、俺を前抱きするように持ち上げた。その持ち上げ方に少し不満はあるが、密着していた方が俺の負担にならないので仕方がない。
「行くぞ」
掛け声の後、既に目の前は猛吹雪で覆われていた。そんな吹雪の中でも遠くには、とても大きな氷山があるのがわかる。
確かにこんな寒かったら、氷山の一つや二つ簡単にできても仕方がないだろう。
そう思える程、正直ここはいつ来ても寒い。
ギルドのお姉さんが貸してくれた温暖の術式が練られたマントが無かったら、体力の消耗は倍だったかもしれない。
「こんな、視界の中でアイスドラゴンなんて探せんのか?」
猛吹雪の中だと言うのに、ダンの呑気な声が聞こえて来る。ダンは寒く無いのだろうか?
「探す事は可能だ。それよりダンは寒くないのか?」
「俺か?俺はセイを抱えてるからな、小動物は暖かいってな!」
「誰が、小動物だ!!」
キレる俺にお構いなく笑うダンに、聞くんじゃなかったとダンを無視して俺は袖の中にいるスライムを撫でた。
「マニ、お願いできるか?」
マニはいつも袖の中にいて、俺を補助してくれる。
だから今回もマニに手伝ってもらい、目の前に沢山のステータス画面を表示させた。
今出ている画面は情報が多すぎるため必要のない画面を閉じ、右上にあるマップを拡大させる。
その中で魔力が濃い部分を確認すると、その場所は三か所あった。多分この中のどれかがアイスドラゴンだと思う。
「よし、場所は三か所まで絞れた」
「いつも不思議に思っちまうが、凄い能力だよな」
「俺だけの力じゃない。マニのおかげだ」
そういいつつ、俺はマニを撫でてその柔らかい感触に癒される。
「とりあえず、この三か所を急いで回る。転移するから適当にギュッとしろ」
「へいへい、じゃあお言葉通りにギュッとさせて貰うとしようか」
そういいつつ後ろからギュッと抱きしめ持ち上げてくる男に、イラっとしながら釘をさす。
「転移した先はすぐ戦闘だからな、気を引き締めろよ」
「わーってるよ」
そして俺たちは順番に魔力量の多い魔物を倒していった。
しかし、どの場所にもアイスドラゴンの姿はなかった。
「おかしい、なんで何処にもいないんだ!?」
「情報が偽物だったんじゃねぇか?それより疲れただろ、一旦休憩しようぜ。確かこの辺に休憩所があったはずだぜ」
こんな吹雪の中に何故休憩所があるのかという疑問を最初の頃何度思ったことか。
なんでもギルド側でダンジョンと指定された場所を長期調査する際、どうしても拠点が必要になる。そのため敵だらけの中に一ヶ所聖域を作り、モンスターを近づけないように結界を張る事で、安全地帯を確保しておくそうだ。
聖域とはいえ、完全に安全とは言えない。
今回現れたアイスドラゴンのように強い魔物は結界を壊す可能性が高いからだ。だからこそギルドは結界を壊すほどの強い魔物が出た場合、調査団を出さずにすぐ倒せる高ランク冒険者に依頼をすることがあった。
だからもし本当にアイスドラゴンが出たのなら、既に聖域が壊されているかもしれない。
ダンがそこで休憩をと言ったのには、その確認も兼ねているのだろう。
「よーし、とりあえず着いたぜ。ここはまだ無事みたいだな」
その聖域は未だ健在で、壊れていないことに俺は少しホッとする。
そしてダンに運ばれている俺は、その中へと踏み込んだ。その聖域の中はとても暖かく、外が吹雪いているとは思えない程、緑が生い茂っている。
そもそもこの世界で聖域とは、聖職者達が複数人で魔法陣を描き、自然界の聖なる物を引き寄せる為に生まれたとされている。
そのため聖域内で育った物はとても魔素が豊富であったり、美味しかったりするそうだ。
これを最初体感したときはこれこそファンタジー!と、はしゃいでしまった。
しかし最近では聖域に入ると、戦闘後のためなのかホッとするようになっていた。
しかしこんな素晴らしい聖域でも、やはりここはダンジョンの中であり、いつ壊れるかわからない場所なのだ。
だからここに長居する人はそんなにいない。
そんな訳で聖域は常に放置されており、定期的にギルドの職員によってメンテナンスがされているそうだ。
そして氷雪峠の聖域には小さな小屋が2、3棟建っていた。俺たちはその中の一つに入り、休憩を取る事にした。
椅子まで運んでもらった俺は、時間を確認する。今は丁度お昼を回ったばかりのようで、お腹の音がなってしまった。
その音にダンは笑い出し、恥ずかしがる俺の頭を撫でる。
「腹減ったよな?すぐに準備するから待ってろ」
そういうとダンは小屋にある調理場に向かっていった。
その姿を見て、何故ダンは俺なんかと一緒に行動しているのかと疑問に思ってしまう。
もともとダンは俺と一緒に冒険者をするまで、ソロで活動していた。
なによりあえてBランクに留まっている変わり者であり、どう見てもその実力は俺を遥かに超えている気がするのだ。
前に一度聞いたら、ランクが上がると本職である鍛冶屋が回らないし、貴族様の面倒ごとが多くて嫌なんだそうだ。
なら尚更俺と一緒にいる理由が全くわからない。
なによりもダンは、俺以外の冒険者には絶対に話しかけないのだ。
もしかしたらソロ時代に何かあったのかもしれないが、それを聞く訳にもいかないからな……。
そう思い俺は溜息を吐くと、マニを机の上においた。
そういえばライムに連絡すると約束したのに、今まで忘れていた。
その事にマニを見たことで思い出したのだった。
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