やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第一章 冒険者編

8、アイスドラゴン討伐

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俺はダンに抱えられて、小屋の外に出ていた。
そこにはアイスドラゴンが、凍えるような青い瞳でこちらを見下ろしていた。

「ライム、マニを使うから後でまた連絡する!!」
『主、お気をつけて』

その声と同時に通信が切れる。
アイスドラゴンを見ると結界を破ろうとしているのか、何度もアイスブレスを打ち込んでいた。

「まずいな、結界がひび割れてきてやがる」

そう呟くダンの声を聞いた俺は急いでマニに触れ、ステータスを表示させる。
目の前にある画面の中から、相手のステータスについて詳細を見る事ができる虫眼鏡のマークをタッチした。

アイスドラゴンはドラゴン種だけあってステータスが高い。
でもそんな事よりも、どんな生物にも弱点となる核が存在しているため、俺はそれを探す。

普段であれば、ステータスを見ただけで敵の核が表示されている事が多い。しかし強い敵であれば詳細をみても表示されない事がある。
このアイスドラゴンは偽装が得意なだけではなく、核を隠すのも得意ということだろう。
しかしステータスに表示されなくても焦る必要はない。

俺はアイスドラゴンの更なる詳細を確認するため、目前にアイスドラゴンを立体視させる。そしてそれを空中でクルクル回し始めた。
まず核がある場所は、どんなモンスターでも一番硬い場所である事が多く、攻撃し辛い場所にある事がポピュラーだ。

そしてこのアイスドラゴンを確認すると、両翼の付け根付近に氷の刺が多数生えて居ることがわかった。そこは間違いなく攻撃し辛くて、防御力が高いところだと言えるだろう。

そのため核は背面にある可能性が高い。
俺は画面に映るアイスドラゴンの背面をなるべく拡大し、細かく調べていく。


その間にも、アイスドラゴンの攻撃によって次から次へと結界に亀裂が入り、それがドンドン大きく広がっていくのが俺の視界からでもわかった。

「こりゃ、結界はもう駄目だな。仕方がねぇから、結界が割れたら総攻撃を仕掛けるぞ」
「わかった。だけど限界まで粘らせてくれ」

俺のその言葉にこちらをじっと見つめてきたダンは、突然フッと笑うと空いてる手で俺の頭を撫でた。

「……そうか、了解したぜ。まあ何かあったら俺に任せとけ!」

ダンの頼もしい言葉に俺は頷く。
そんなダンは俺をしっかり左手で抱えなおし、右手に大剣を構えていた。
因みにその剣はダンが作ったお手製の愛剣であり、その剣で切れなかった物はいままで見た事がない。

それよりもダンは俺を抱えたまま戦うつもりなのだろうか?まあ、いざとなったら転移で逃げればいいか、と俺はステータス画面を改めて睨み付ける。


そしてついに俺はアイスドラゴンの核を見つけた。
それは背面にある右翼の付け根である。しかしそこに魔術を当てるにはある問題があった。

俺が一番得意とするグラビティアローは、質量が重ければ重たいほど引き寄せられる力も強くなる魔術だ。
そのため質量が軽いアイスドラゴンとは相性が悪く殺傷能力が下がってしまう。

でも俺は弱点となる炎の攻撃魔術は大規模魔術しか使えない。そのため使うと自分ごと巻き込んで爆発する可能性があり、俺はそれを上手く操る自信も無かった。
だからこそ威力は下がってでも、グラビティアローを打ち込みたかったのである。

しかし前面から直接打つには分厚い体と氷の層に邪魔されてしまうし、背中から打つには羽と氷の刺が邪魔になる。
───それならばやる事は一つしかない。

羽は邪魔だから切り落として貰うことにしよう!
そう思い立ち、俺はすぐにも割れそうな結界を睨みながら、ダンに声をかけた。


「ダン!頼みがある。あの両翼を一刀両断できるか?」
「何言ってやがる、俺に今まで切れなかったものはあったか?」
「ない!!」

叫んだ俺の声と同時に結界が割れた音が響き渡る。
破られた結界の中、俺はダンを連れて転移した。
飛んだ先は、勿論アイスドラゴンの真後ろだ。

そのドラゴンは俺たちに気付く事なく、壊れた聖域にアイスブレスを撃ち込もうとしていた。
そんなチャンスを逃すはずはなく、ダンは大剣をアイスドラゴンの両翼に向けて振りかぶった。
その動きは俺を抱えているはずなのに、普段と全く変わらない。

剣が銀色の線を描いたことだけが俺の目に映る。
落下速度を落としながら、俺はその経過をただ見つめ続けていた。
ここでタイミングをミスるわけにはいかないからだ。

そしてキンっと音がしたと思ったときには、アイスドラゴンの両翼は綺麗に削ぎ落とされていた。
翼を落とされたことにより、アイスドラゴンは壮絶な叫び声を上げながら地面に落ちていく。

俺はその瞬間を逃さなかった。
しっかりアイスドラゴンの核を捉え、その背中へと魔術を放つ。

「グラビティアローーーー!!」

その黒い線は一瞬アイスドラゴンに吸い込まれるように消えた。
そして次の瞬間、黒い塊が円形に広がり光を飲み込む。それはアイスドラゴンに綺麗な穴を開けたのだった。


落ちていくアイスドラゴンを見届けた俺達は、落ちた地点へと転移していた。
両翼をもがれたアイスドラゴンが完全に息絶えた事を確認し、亜空間ボックスへと移す。

「よし、討伐完了!」
「結界は壊れてるが一度小屋に戻るか?」

そう聞かれたから俺は頷こうとしたのに、突然体におきた異変に俺は声にならない声を上げていた。

「……ッ!!?!!」
「セイ、どうした??」

その様子に驚いたダンが俺を抱えながら、俺の名前を呼んでいるのがわかる。
そしてなにが起きたのか瞬時に理解した俺は、なにか言わなくてはと口を開こうとした。

「あ、う……ぐぅ、ぁ……」

しかし言葉が上手く出てくれることはなかった。
そして徐々に体が蝕まれる感覚に恐怖した俺は、咄嗟にダンの服を掴もうとして、それさえも失敗する。
すでに俺は、手にも力が入らなくなっていた。

「セイ!!?セイ!セイ!!!」

驚くダンの声を聞きながら俺は焦っていた。
まだ時間には程遠い筈なのに何でだ?
しかしそう思うのが精一杯で、動かない体はさらに蝕まれていくのがわかってしまう。

そして俺はその恐怖に飲まれるように、とうとう意識まで手放したのだった。
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