やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第一章 冒険者編

10、噂の錬金術師

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倒れてからようやく一周間がたち、俺はいつものように普通に活動できるようになっていた。

この1週間は本当に大変だった。
氷雪峠の小屋でなんとか過ごした俺は、4日目ぐらいでようやくライムと連絡を取れたものの、もの凄く心配された。
それに心配性なダンとは毎日寒さを凌ぐ為に一緒に寝たりした。

スライムが暖をとってくれるのでもう半裸の必要はないのに、何故か最後まで半裸だったのはよく分からない。
きっと元から寝るときは、半裸で寝ているのでは疑惑が俺の中で生まれてしまった。

そんな感じでようやく氷雪峠から脱した俺たちは、1週間ぶりにギルドへと戻ってきたのだった。


「セイ様、ダン様!ああ、ご無事で……1週間も戻ってこないなんて何かあったのかと、緊急要請を出そうかと会議をしていたところでした」

俺たちを見送ってくれたギルドのお姉さんは、本当に心配していたのだろう。いくつもお守りを体につけており、とても不思議な格好になっていた。
毎日お祈りでもしてくれていたのだろうか……?

「すまない。ちょっとしたアクシデントがあって身動きが出来なかっただけだ。アイスドラゴンは無事に討伐したんだが……」
「アイスドラゴン、討伐できたのですね!!流石セイ様、ダン様です。それに無事で本当によかった……」

少し涙目で感謝をしてくれるギルドのお姉さんには大変申し訳ないが、氷雪峠の聖域についてもちゃんと話さなくてはならないだろう。

「あの、それで言いにくいのだが……」

俺は聖域の結界がアイスドラゴンによって壊されててしまった事を説明した。

1週間の間は、ダンが聖域周りの見回りをしてくれたおかげで小屋の襲撃は防げていた。
でも俺たちが離れた今、あそこはすぐに荒らされてしまうだろう。

そうなると新しく聖域を作るのに日数がかかってしまうため、それまでは氷雪峠でのクエストの許可が下りなくなってしまう。
だから素早く聖域の結界を復旧して貰わないといけないのだ。


「そうでしたか……。アイスドラゴンがそんな場所に存在していたのなら仕方がなかったのでしょう。でもお二人がいてくれたお陰で、復旧はすぐに行えると思います。ありがとうございました」

お姉さんは頭を下げると、すぐさま他の職員に話をつけに行った。
そしてすぐに戻ってきたお姉さんは思い出したかのように口を開いた。

「あ、そうだ!セイ様は錬金術師をお探しでしたよね?」
「あ、ああ。そうだが……」

突然の話題変更に、そういえば後で錬金術アカデミーに、行こうとしていた事を思い出す。

「なんでもそのアカデミーには、少し変わった生徒さんが居るそうなんですけど、それが最近噂になっているんです」
「変わった生徒?」
「なんでも普通の生徒さんは、貴族関係の依頼しか受けない事が多いんですが、その生徒さんは何故か民間向けの依頼、それも誰も受けないような変わった依頼を受け続けているんだそうです」

その話を聞いて俺はピンと来てしまった。
もしかしてその生徒さんなら俺の依頼も受けてくれるかも知れない、そう言う事だろう。

「それは貴重な情報だ。ありがたい」
「私の情報で錬金術アカデミーに行ったのに、依頼を受けてもらえなかったなんて言われたら責任感じちゃいますからね」
「そんなことは思わないが、とても助かる」
「こちらもいつも助けて貰ってますから。……あの、それでアイスドラゴンは納品してもらえるのですか?」

笑顔で言うお姉さんは、本当はそこが一番知りたかった事なんだろう。

「勿論。それからマントだが、とても助かった」
「それならよかったです!ではマントは今受け取っておきますね」

そういえばマントを借りていたことを思い出した俺は、ギルドのお姉さんにマントを渡す。
そして部屋を出てすぐアイスドラゴンを納品し、ギルドを後にしたのだった。


そんな訳で俺は今、馬車に乗っている。
錬金術アカデミーに入る為には、許可証が付いた馬車に乗るのが早いそうで、俺達はギルドが手配してくれた馬車に乗っていた。

「だからといっていつまでこの体勢なんだ?」
「錬金術アカデミーに着くまでだ」

俺は何故かダンの足の間に座らされ、後ろからガッチリホールドされていた。
なんでも馬車が揺れたら俺が飛んでいく可能性があるかららしい。
なんだろう俺は赤ちゃんなのか?そしてダンはチャイルドシートか何かだろうか……。

複雑な気持ちのまま、ガタゴト揺られる事数分。
やっと馬車が止まり、俺はようやくダンの腕から解放されたのだった。

「よし、歩くなら抱えていくぞ」

その一言に、俺はこれ以上恥ずかしい思いはしたくないと、盛大に拒否をしたのだった。


「依頼の申し込みをしたいんだが……」

なんとか受付にたどり着いた俺は、カウンターにいる女性職員さんに話しかける。

「はいご依頼ですね。どんなご用件でしょうか?プラス料を払って頂けるのでしたら、ご指名もできますので仰ってくださいね」

成る程、指名が出来るのか……だったら。

「調合して欲しいものがあるので錬金術師を紹介して欲しい。できれば最近民間の依頼を受けていると言う噂の生徒を紹介して欲しいのだが」
「それならルーディアさんの事ですね。ルーディアさんならどんな依頼でも喜んで受けてくれると思いますよ!ではいつ頃がご希望ですか?」

どうやら、噂の生徒の名前はルーディアと言うようだ。女性か男性なのかわからない名前に俺は少しドキドキしつつ、希望日を伝える。

「できれは1週間後の昼ごろにアカデミー内で話をしたい。問題なければここで待ち合わせをお願いできるだろうか?」
「わかりました。依頼のお申し込みはあなたお一人ですか?」
「ああ、俺一人で会う予定だ」


こうして依頼の認証が下りた後、俺たちはアカデミーを出るため馬車乗り場まで歩いていた。
先程の話が少し気になるのか、ダンがチラチラとこちらを見てくる。
しょうがないのでダンには、来週の予定をきちんと伝える事にした。

「さっき言った通り、来週は俺一人でアカデミーに行ってくる。だから次は再来週になるんだが、付き合って貰って良いか?」
「それは別に問題ねぇけど、来週は一人で大丈夫なのか?」
「全く、ダンは過保護すぎだ。来週は話し合いをするだけだから大丈夫」
「ならいいんだけどよ……いやそれだけを心配してる訳じゃねぇんだけどな」

そうぶつぶつ言うダンの過保護は変わらないのか、馬車に乗り込むとまたもやダンの足の間に座らされ、ガッチリホールド状態の俺はガタゴトとギルド通りまでの道を進む。

でも帰りの俺は、それに対して全く抵抗することはなかった。
それよりもようやく錬金術師に合える事が嬉しくて、ダンにホールドされている事なんか全く気にならなかったのだ。

ルーディアさん、一体どういう人なのか……。
会うのが楽しみだ。
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