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第二章 錬金術師編
15、貴方を手伝いたい(前編)
しおりを挟む本当に近くにあったルーディアのアトリエは、紙が散乱している事以外はそんなに汚く無かった。
でも錬金術師と言うだけあって、理科の実験道具のような物や、大きな釜があって少し感動したのだった。
ようやく椅子に下ろされた俺は、向かいに座るルーディアが口を開くのをただ待っていた。
そんなルーディアはようやく考えがまとまったのか、真面目な顔で俺を見つめてきた。
「何となくですが余り踏み込まない程度に想像して、セイが僕に何をお願いしに来たのかわかった気がします」
「……聞いてもいいか?」
説明しなくても勝手に汲み取ってくれたのならそれでいい。これ以上口を開くとボロがでるのはわかりきっているからだ。
「僕に貴方の病気を治してほしい。もしくは手伝って欲しい……と言ったところでしょうか?」
その答えに俺は拍手をしてしまった。
「ルーディア、君の言う通りだ。やはり噂の錬金術師は頭もとても良いのだな。ならば改めてお願いさせてもらおう。俺が今日ここにきたのは、この病気を治すためにどうしても錬金術師に調合して欲しい物があったからだ」
本当は呪いのだけど、それは今どちらでも良いだろう。
「調合素材も何もわからなくてな……ただ素材集めは幾らでもできるから是非教えて欲しい」
「わかりました。調合しなくてはいけない物の名前はなんでしょう?」
「『祝福の鈴』と『刻の調律』という物なんだが……聞いた事はあるだろうか?」
恐る恐るルーディアを見ると、眉を寄せて少し困った顔をしていた。
これは……余り期待しない方が良いかもしれない。
「その二つはSランクの錬金術師が作れる魔術アイテムですね。因みに僕はAランクです。ですから力不足かもしれません」
「いや、いいんだ。無理だったらまた他の錬金術師を探してみる」
「それは無理でしょうね」
ピシャリと言い切ったルーディアを見ると、その顔は憎悪のためか先程よりさらに歪んでいた。
「僕は錬金術師ですが、この国の錬金術師は完全に腐り切っています。口を開けば名誉だ、お金だと自分の事しか考えていない。そしてそれはランクが高くなれば成る程そんな人ばかりになります。そんな奴等が冒険者なんかの依頼を受けるわけがありません……」
どうやらルーディアはこの国の錬金術師に不満があるようだ。もしかするとその反発として民間の依頼ばかりを受けているのかもしれない。
でもそれでルーディアは将来大丈夫なのか少し心配になってしまう。
そんなルーディアを見ると、何かを閃いたのかごそごそと準備を始めていた。
その様子を見ながら俺も少し考えてみる。
正直ルーディアには悪いけど、俺の頼んだ素材はランクAでは作れない可能性が高いのだと思う。
だけどその能力がある錬金術師は、民間の依頼を受けてはくれないようだし……。
ならば奥の手を使うしかない。
それは国家権力である兄上達の力だ。
協力を仰がないと決めた以上、直接錬金術師を雇う事はできない。
しかし錬金術師について良くない話を持ちかければ、もしかしたら兄上は錬金術師に民間の依頼を受けるよう、圧力をかけてくれるかもしれない。
そうすれば今よりはだいぶマシになるはずなのだ。
まあそれでも他の錬金術師と知り合うのは大変だろうけど……。
だから俺はルーディアに、とりあえず素材だけを教えて貰えるよう口を開こうとしたが、それはできなかった。
先程まで何かの準備をしていたルーディアが俺の左手を取り、手の甲に何かを描き始めたからだ。
「え、ルーディア?何を書いて……ってか、少しくすぐったいんだが……」
「すみません。少し我慢してください」
真面目に何をしているのか分からず、俺は少しくすぐったいのを我慢して、じっとルーディアを見続けた。
「よし、魔法陣完成!」
「魔法陣?何故俺の手に……」
「この魔法陣は体に刻むタイプなんです。あっ!説明してませんでしたね。これは僕とセイを繋ぐ物なんです」
ん?突然繋ぐとか言われてもハテナが一杯浮かび上がってしまう。
そんな俺をおいて、ルーディアは真っ直ぐ俺を見つめ片膝をつくと魔法陣が描かれた手をとった。
「セイ、どうか僕に貴方のお手伝いをさせて下さい」
俺は暫くルーディアの姿に固まってしまった。
何故なら、窓から降り注ぐ日の光りがルーディアを照らしだし、跪くその姿はとても絵になっていたからだ。
ルーディアは間違いなく美青年だった。
そう気がついてしまったからなのか、跪かれたからなのかはわからないが、俺は申し訳ない気持ちになっていた。
だから俺はなるべくルーディアを見ないように、断るために口をひらいた。
「先程、ルーディアでは調合できないと言ってなかっただろうか?」
「ランク的に試した事がないだけで、やってみる価値はあると思っています。ただ失敗する可能性もあるので、断ると仰るのでしたら僕には止める権利はありませんけど……」
あからさまにションボリしてしまったルーディアに、先程まで思っていたことが全て吹き飛んだ。
確かに最初から諦めるのはよくないし、ルーディアに一度ぐらい試してもらうのも悪くない。
そう思い直した俺は、ルーディアを頼ってみることに決めた。
「わかった。ルーディア、是非手伝ってくれ」
「……本当ですか!?僕で宜しければ喜んで!!では、最後にこの魔法陣に僕の残滓を残すため魔力を流しますね」
魔力が上手く流れないこの体に魔力を流したりしたら!!
「ま、魔力!待ってくれ!!」
「え?」
俺の静止よりも先に、魔力が体に入り込んだのがわかる。
そして手の甲が光るのを確認したのと同時に、俺は身体を支える事が出来なくなり椅子から落ちてしまった。
「セイ!!だ、大丈夫ですか??まさか、魔力が……」
その声に、もう俺は言葉を返す事ができなくなっていた。
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