やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第五章 兄弟編

47、竜と魔法陣(中編)

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兄上達に何度か急かされ、たどり着いた魔法陣の真ん中では、すでに『悪魔の溜息』が鎮座していた。
そして今はその横に『女神の涙』が入った瓶を持つルーディアが立っていた。

「これから『女神の涙』を『悪魔の溜息』に流しかけます。そして浄化エネルギーが行き渡ると魔法陣は徐々に光り始めるはずです。その光が行き届いたら次はこの『祝福の鈴』を鳴らします。この鈴は鳴らすことで魔力をブーストさせる事ができるそうです。そしてさらに光が増したとき、『刻の調律』を起動せよ。と、文献には書いてありました」
「それだけなのか?『刻の調律』が魔法陣の起動に関わっているのはわかるが、誰かの魔力を流したりはしないのか?」

最後まで聞き終えた俺は、不思議に思ったことをルーディアに確認する。
普通、魔法陣は魔力を流すことで完成するはずなのに、この魔法陣は浄化エネルギーとやらだけで使える、という事なのだろうか?

「ええ、不思議な事にその点について、いっさい記述はありませんでした。なのでとりあえず今回は、何も無い状態で試してみます」
「書いてないのなら仕方がないな。実際にやってみるか……」
「では、私が『女神の涙』をかけます。そして魔法陣全体が光り始めたら、ギルランド殿下とシルリオン殿下は『祝福の鈴』をお二人とも鳴らしてください」

鈴を手に持っている二人の兄上は、ルーディアを見て頷く。

「最後にイルは、鈴の効果で魔法陣がさらに光り輝いた瞬間に『刻の調律』を起動させて下さい。これで何が起こるかわかりませんが、やってみるしかありません」

ルーディアの言葉に俺たちは頷きあう。
そして、ルーディアは『女神の涙』をさっそく『悪魔の溜息』に流しかけたのだった。

「これで石化が解け、浄化エネルギーが生まれるはずです……」

少しずつ、石化が解けていくのがわかる。
そして流れ落ちるそれは、魔法陣の上にこぼれていく。
俺はゴクリと息を飲み、その様子を見守るしかできない。

「本当に光るのか?」
「まだ始まったばかりです、静かに見守りましょう」

ギル兄上の疑問に、シル兄上が答える。
でもそれはここにいる全員が思っている事だろう。
いまだにルーディアはゆっくりと、それをかけている。
その姿を見て、どうか光ってくれと俺は祈った。

「……っ!」

その瞬間、『悪魔の溜息』の真下にある魔法陣が薄ぼんやりと光り始めたのがわかった。
それにルーディアが喜びの声を上げる。

「や、やった!光始めました!でも、こんな弱い光で魔法陣全部に行き届くのでしょうか……?」
「それでも光ったのは事実、最後まで気を抜かずにやり遂げましょう」

シル兄上はルーディアの肩に手を置き、二人は少しずつ光が広がっていくのを見守っていた。
俺もハラハラしてその様子を見ながら、これが成功したら本当に呪いから解放されるのだろうか?なんてぼんやり考えていた。

少しずつ大きくなる光に包まれて、ふわふわして実感がわかない。
だから気がついたときには、魔法陣全体が光り輝いていた。

「端まで光が行き渡りました!お二方は鈴を鳴らして下さい」
「任せろ!」
「わかりました」

頷いた二人は、鈴を掲げて軽く振る。
すると鈴はシャラシャラと優しく音をたて始めたと思ったら、ゆっくりとその手から離れて浮かび上がり、勝手に音を響き始めたのだった。

「魔術アイテムとは不思議なものだな」

ギル兄上は手から離れたそれを、不思議そうに眺める。それを俺たちも一緒に眺めていた。

シャランシャラン───。

音は次第に大きくなり、それに呼応するように魔法陣の光も強く輝き始める。
余りの眩しさに目を閉じそうになったが、ルーディアに腕を取られてハッとする。

「イル、今です!!」

『刻の調律』を起動したのと同時に、ルーディアの声は聞こえなくなる。
そして、先程までの眩しかった景色はなくなり、前と同じ真っ青な世界が俺の前に現れたのだった。


でも、少しおかしい。
本来ならば時が止まるだけなので、ルーディア達がそのままいないといけないはずなのに、今は俺一人が真っ青な謎の空間にいる。
そしてここでは、いつもいるはずのマニの存在も感じる事ができなかった。

「まさか、これが魔法陣の効果?」

そうだというのなら、俺は封印されたブルーパールドラゴンの元にでも来てしまったと言うのだろうか?

『その通りである』

突然現れた気配に俺は後ろを振り向く、しかしその存在はどこにも見当たらない。
それに、その声は俺の心の声に返事をしたようにも思えるのだ。
それは、つまり……。

「お前は、ブルーパールドラゴンなのか?」

しかしその声に答えは返ってこない。
だから俺は違うのかと思い謝ろうとしたが、それもすぐに遮られてしまった。

「違ったのなら……」
『いや、あっているのである。……ああ、なんという事だ。こんなことが、また余に会いに来てくれた人間が現れたなんて信じられない!』

ドラゴンなのに、その声は震えていた。
もしかすると感情が昂って声が出なかったのかもしれない。
そう思っていたら、目の前にブルーパールドラゴンが姿を現した。
その青く光るウロコは、この青い世界でもパールのように艶々と輝いて見える。

「よく来てくれた、儚き人間よ。余は、人よりブルーパールドラゴンと呼ばれてきた竜である」
「えっと、初めまして。俺はこの国の第5王子イルレインだ」
「言わなくとも知っておる。余はお前が産まれたその瞬間から、ずっと見ておったのだから……」

ドラゴンなのに、その瞳はとても優しい。
何故俺をずっと見続けていたのか、それには心当たりがある。

「それはブルーパールドラゴンを、封印から解くことができる存在だからか?」
「その通りである。そして儚き人間よ、何故お前のような存在が作り出されたのか、理解できるか?」
「……いえ、全くわかりません」
「ならば教えてやろう。余と人間達の醜い争いの末路を……」

そう言うと、ブルーパールドラゴンは過去の話をし始めたのだった。
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