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第六章 解呪編
58、決意
しおりを挟む竜人となった俺を見た二人は、唖然としていた。
だから俺は言ってやった。
「ど、どうだ俺だってやればできるんだぞ!」
「……イルレイン様、おめでとうございます!!これであなたの呪いは解けたのですよ!」
そう言われて、そういえばそうだったことを思い出し、とても体が軽いことに俺はついにやり遂げたのだと実感していた。
「ツノ……」
「ひゃぁっ!!」
なんだなんだ!角を触られただけなのに変な声がでたぞ……。
俺は恥ずかしさのあまり、顔を伏せる。
「このツノ、性感帯なのか……!?」
「なんてものを触るのです!イルレイン様、落ち着いてください。上位種であれば普通に人間の姿にもなれますので、角と尻尾は隠せるはずです。さあ、この変態に触られる前に早く!!」
「わ、わかった!」
俺は顔を伏せたまま、角と尻尾は消えてくれ!っと念じた。するとなんだか、頭とお尻が軽くなった気がした。
「イルレイン様、消えましたよ。これでとりあえず安心です」
「ちぇ、もう少し触りたかったんだけどなぁ……」
「ダン!!これ以上やったら怒るからな!」
あれ?もう普通に俺はダランティリアのことを、ダンと認識できてる?
そう呼んだからなのか、ダンは少し嬉しそうに笑った。
「イル、さっきはああ言ってくれてありがとな。でもな、俺は自分で決めていた事があるんだ。イルが進化できなかったら何が何でも一緒にいること。それか、イルが進化できたら俺は一人で封印されること。この二つのどちらかを選ぶつもりだったんだ。でもまさか知らない自分のアシストで、イルが進化しちまうなんてな……」
どうやらあのダンは、記憶をダランティリアにバレないよう、俺のピアスに隠していたようだ。
そして目の前にいるダンは、悲しそうな目をすると俺を見た。
「イルが進化したから俺の負けだな。それにもう悔いもねぇし、大人しく封印されてやるぜ……」
「馬鹿野郎!!俺が何のために進化したとおもってんだ!」
ダンの話に納得できるわけがない俺は叫んでいた。
それなのに、ダンは首を傾げてふざけた事を言ったのだ。
「呪いを解くためだろ?」
「そのためだけなわけないだろう!」
「え、そうなのですか?」
そんな俺の答えに、ライムまで首を傾げたのを見て、俺は頭にきてしまい叫んだ。
「二人ともいいか?俺が進化したのは、俺が封印されてやるためだ!!」
「「!?」」
驚き固まった二人はほっといて、俺は外の様子を確認するため、空中を見上げた。
いまだ外の様子は、そこに映し出されたままなのだ。
そして外では竜がかなり倒されてはいたが、それでも冒険者は人間だ。いつか疲れるときがきてしまう。
このいつ止むかわからない竜の攻勢に、すでに冒険者達の顔は疲れ切っていた。
もう、余り持たないだろう。
これを止めるためには、新しく守護者を立てるしかないのだ。
ならば進化した俺なら、今の俺ならできるばすである。
「お待ち下さい!何故イルレイン様がそれをする必要があるのですか??」
「そうだぜ、それは俺に任せておけ」
確かにそうなのかもしれない。
でも俺には、今まで千年も耐え抜いてきたブルーパールドラゴンや、解呪の方法を限界まで探したダランティリアを犠牲にすることなんてできなかった。
だから俺は首を振る。
「ダメだ。お前は充分に頑張ったんだ。だから今度は俺がそれを引き継ぐ番なんだ」
「イル……」
「お前はダンなんだから、そんな顔するなよ。いつも俺の前では嫌になる程ニヤってしてただろ?」
そう言っても、ダンの表情は変わることはなかった。
何とか阻止する方法でも考えているのだろう。
でもあれほど調べたのだ。きっとこれよりも最適な答えなんて無かったはずである。
だから、ダンには諦めてもらうしかない。
「さあ、二人とも俺を封印……」
「させません」
「え?」
封印してくれと頼もうとした瞬間、それをライムに遮られてしまう。
「イルレイン様がそれを選ぶのなら、私はそれを阻止するために私なりの最適解を選びます!!」
そう叫んだライムは、何故か突然光出したのだ。
それを見たダンは顔色を変えて叫んだ。
「ライム、お前やめろ!!」
「ダン?どうしてライムは光って……」
「ライムはこの国の守護神になるつもりだ!!スライム神になったライムならそれができちまう!」
「なんだって!!?」
「それに守護神は封印や契約なんてなくても、本人の意思だけで確かにすぐになれる。でも守護神は一生この地に縛り付けられて、体を持たない精神体になっちまう……だから二度と元には戻れない!」
「そんな!ライム、やめろやめてくれ!!俺はそんなこと望んでない!!!」
俺の叫びなんか全く聞こえないのか、ライムは光ながらゆっくりと話始めた。
「イルレイン様、私はあなたに会えて初めて生きる希望を持てました。それから毎日が幸せだったのです。だから私の事は気になさらず幸せに暮らしてください。でも私はここに居るので、いつでも会いに来てくださいね……」
「ら、ライム!!ライム!!!まってくれ!ライムが俺の代わりなんかにならないでくれ!それに、まだ俺は何も言えてないのに!!!」
俺はライムに手を伸ばしたのに、その姿はもう透けていて掴む事はできなかった。
『イルレイン様。私はあなたの事を愛しております。これからもずっと……』
その言葉と同時にライムの姿はかき消えてしまう。
そしてこの白い空間も縦にヒビが割れ始めた。
世界が、色のついた世界へと戻っていく。
俺は気がつくと魔方陣があるホールへと戻ってきていた。そして周りを見渡すと、そこには唖然と外を見つめるシル兄上の姿があった。
そんな兄上は俺が戻ってきたのに全く気がついていないようだった。
だから俺は、その姿につられるように外を見た。
「なんだよ、これ……」
そこにはゆっくりと空に舞い上がって行く、カラフルなスライム達の姿があった。
俺は思わず外に飛び出した。
王都の至るところから、スライムがふわふわと空に昇っていく。
あれはまさか、ライムのスライム達なのか……?
そしてスライム達はある一定の高さにたどり着くと、皆平たく薄い膜になっていった。
それは王都を守るための守護結界に見えた。
その光景に、俺は本当にライムがこの国の守護神になってしまったという事実を、認めざるを得なかった。
そして気がつくと目から涙があふれていた。
「そんな、そんなことって……ライム…………」
そんな俺に寄り添うように、ダンが俺を抱きしめる。
だけど俺達は一言も話す事はなく、スライム達が途切れるまでずっと、その光景をただ見つめ続けていたのだった。
こうして、俺は呪いから解放された。
ただ一人、ライムの犠牲を伴って……。
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