やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

文字の大きさ
86 / 110
第六章 解呪編

58、決意

しおりを挟む

竜人となった俺を見た二人は、唖然としていた。
だから俺は言ってやった。

「ど、どうだ俺だってやればできるんだぞ!」
「……イルレイン様、おめでとうございます!!これであなたの呪いは解けたのですよ!」

そう言われて、そういえばそうだったことを思い出し、とても体が軽いことに俺はついにやり遂げたのだと実感していた。

「ツノ……」
「ひゃぁっ!!」

なんだなんだ!角を触られただけなのに変な声がでたぞ……。
俺は恥ずかしさのあまり、顔を伏せる。

「このツノ、性感帯なのか……!?」
「なんてものを触るのです!イルレイン様、落ち着いてください。上位種であれば普通に人間の姿にもなれますので、角と尻尾は隠せるはずです。さあ、この変態に触られる前に早く!!」
「わ、わかった!」

俺は顔を伏せたまま、角と尻尾は消えてくれ!っと念じた。するとなんだか、頭とお尻が軽くなった気がした。

「イルレイン様、消えましたよ。これでとりあえず安心です」
「ちぇ、もう少し触りたかったんだけどなぁ……」
「ダン!!これ以上やったら怒るからな!」

あれ?もう普通に俺はダランティリアのことを、ダンと認識できてる?
そう呼んだからなのか、ダンは少し嬉しそうに笑った。

「イル、さっきはああ言ってくれてありがとな。でもな、俺は自分で決めていた事があるんだ。イルが進化できなかったら何が何でも一緒にいること。それか、イルが進化できたら俺は一人で封印されること。この二つのどちらかを選ぶつもりだったんだ。でもまさか知らない自分のアシストで、イルが進化しちまうなんてな……」

どうやらあのダンは、記憶をダランティリアにバレないよう、俺のピアスに隠していたようだ。
そして目の前にいるダンは、悲しそうな目をすると俺を見た。

「イルが進化したから俺の負けだな。それにもう悔いもねぇし、大人しく封印されてやるぜ……」
「馬鹿野郎!!俺が何のために進化したとおもってんだ!」

ダンの話に納得できるわけがない俺は叫んでいた。
それなのに、ダンは首を傾げてふざけた事を言ったのだ。

「呪いを解くためだろ?」
「そのためだけなわけないだろう!」
「え、そうなのですか?」

そんな俺の答えに、ライムまで首を傾げたのを見て、俺は頭にきてしまい叫んだ。

「二人ともいいか?俺が進化したのは、俺が封印されてやるためだ!!」
「「!?」」

驚き固まった二人はほっといて、俺は外の様子を確認するため、空中を見上げた。
いまだ外の様子は、そこに映し出されたままなのだ。

そして外では竜がかなり倒されてはいたが、それでも冒険者は人間だ。いつか疲れるときがきてしまう。
このいつ止むかわからない竜の攻勢に、すでに冒険者達の顔は疲れ切っていた。
もう、余り持たないだろう。

これを止めるためには、新しく守護者を立てるしかないのだ。
ならば進化した俺なら、今の俺ならできるばすである。

「お待ち下さい!何故イルレイン様がそれをする必要があるのですか??」
「そうだぜ、それは俺に任せておけ」

確かにそうなのかもしれない。
でも俺には、今まで千年も耐え抜いてきたブルーパールドラゴンや、解呪の方法を限界まで探したダランティリアを犠牲にすることなんてできなかった。
だから俺は首を振る。

「ダメだ。お前は充分に頑張ったんだ。だから今度は俺がそれを引き継ぐ番なんだ」
「イル……」
「お前はダンなんだから、そんな顔するなよ。いつも俺の前では嫌になる程ニヤってしてただろ?」

そう言っても、ダンの表情は変わることはなかった。
何とか阻止する方法でも考えているのだろう。
でもあれほど調べたのだ。きっとこれよりも最適な答えなんて無かったはずである。

だから、ダンには諦めてもらうしかない。

「さあ、二人とも俺を封印……」
「させません」
「え?」

封印してくれと頼もうとした瞬間、それをライムに遮られてしまう。

「イルレイン様がそれを選ぶのなら、私はそれを阻止するために私なりの最適解を選びます!!」

そう叫んだライムは、何故か突然光出したのだ。
それを見たダンは顔色を変えて叫んだ。

「ライム、お前やめろ!!」
「ダン?どうしてライムは光って……」
「ライムはこの国の守護神になるつもりだ!!スライム神になったライムならそれができちまう!」
「なんだって!!?」
「それに守護神は封印や契約なんてなくても、本人の意思だけで確かにすぐになれる。でも守護神は一生この地に縛り付けられて、体を持たない精神体になっちまう……だから二度と元には戻れない!」
「そんな!ライム、やめろやめてくれ!!俺はそんなこと望んでない!!!」

俺の叫びなんか全く聞こえないのか、ライムは光ながらゆっくりと話始めた。

「イルレイン様、私はあなたに会えて初めて生きる希望を持てました。それから毎日が幸せだったのです。だから私の事は気になさらず幸せに暮らしてください。でも私はここに居るので、いつでも会いに来てくださいね……」
「ら、ライム!!ライム!!!まってくれ!ライムが俺の代わりなんかにならないでくれ!それに、まだ俺は何も言えてないのに!!!」

俺はライムに手を伸ばしたのに、その姿はもう透けていて掴む事はできなかった。

『イルレイン様。私はあなたの事を愛しております。これからもずっと……』

その言葉と同時にライムの姿はかき消えてしまう。
そしてこの白い空間も縦にヒビが割れ始めた。

世界が、色のついた世界へと戻っていく。



俺は気がつくと魔方陣があるホールへと戻ってきていた。そして周りを見渡すと、そこには唖然と外を見つめるシル兄上の姿があった。
そんな兄上は俺が戻ってきたのに全く気がついていないようだった。
だから俺は、その姿につられるように外を見た。

「なんだよ、これ……」

そこにはゆっくりと空に舞い上がって行く、カラフルなスライム達の姿があった。
俺は思わず外に飛び出した。

王都の至るところから、スライムがふわふわと空に昇っていく。
あれはまさか、ライムのスライム達なのか……?
そしてスライム達はある一定の高さにたどり着くと、皆平たく薄い膜になっていった。

それは王都を守るための守護結界に見えた。
その光景に、俺は本当にライムがこの国の守護神になってしまったという事実を、認めざるを得なかった。
そして気がつくと目から涙があふれていた。

「そんな、そんなことって……ライム…………」

そんな俺に寄り添うように、ダンが俺を抱きしめる。
だけど俺達は一言も話す事はなく、スライム達が途切れるまでずっと、その光景をただ見つめ続けていたのだった。




こうして、俺は呪いから解放された。

ただ一人、ライムの犠牲を伴って……。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...